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『救国の乙女』になると預言されて、早二十年経ちました。  作者: 池中織奈
クラレンス・ロードが幸せをつかむまで
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 ジャンナの家を後にして、俺は『魔王』を倒した場所をまず訪れた。





 何らかの痕跡などがないかとそう思ったから。

 久しぶりに訪れた『魔王』の居住地。城のような巨大な建物には、生物はほとんどいなかった。




 俺たちが『魔王』を倒しに向かった時には、多くの魔族がいた。それでいて魔物もいた。魔族の中には魔物を手懐ける存在もいたから、それも当然だったのだ。

 その場所に足を踏み入れると、『魔王』を倒したその時のことを思い出した。




 ――このままで終わると思うなよ。



 『魔王』はそう言った。思えば、その時その場にいたのは、最低限の者だけだった。『魔王』は俺たちに倒されることを受け入れた上で準備をしていたのだと思う。






 そう言う可能性に俺が気づかなかったのが、今の現状に俺が陥っている原因であると言える。

 ただもしそういう可能性に気づいていて、もしかしたらこのような状況になるかもしれないと誰かが気づいても――『魔王』の側近だと思い込んでいれば、信じてはくれなかったかもしれない。




 やっぱり俺の女神だから、ジャンナだからこそ俺を受け入れたのだと思えた。

 そう考えるとジャンナへの愛おしさがもっと増した。




 ジャンナの家で呪術の本を読んで、呪術への理解も深まった。『魔王』を倒したその場に微かに呪術の痕跡があったことを俺は見つけた。




 ――ああ、やっぱり呪術と呼ばれるものを俺に彼らはかけたのだ。

 それに呪術の中に、俺の魔力も混じっている。俺にそういう呪術をかけるためにそういう風にしたのだろう。




 俺は『魔王』討伐の時の最大戦力だった。

 そんな俺を絶望させて、国を滅ぼさせたかったのかもしれない。ジャンナがいなければ俺は自棄になってそういうことを行っただろう。




 触媒になるものは、今は此処にはないらしい。

 こんな風に巨大な範囲で俺に対して呪術をかけたのならば、『魔王』のような存在ではないと出来ないだろう。――触媒を持つ魔族がきっとどこかにいるだろう。





 それを探し出す。

 見つけるのは大変かもしれない。

 けれど、ジャンナが「おかえり」と笑ってくれる日を思えば苦労したとしても絶対にジャンナの元へ戻ると俺は決めたから。






 それから俺の呪術の触媒を探す日々が始まった。

 ――人に悟られないように動くことは面倒だった。でもどんな相手でも、俺と初対面でも俺を『魔王』の側近だと思うだろうから。



 人目につかないように、森の中などで休む。そういう時にいつもジャンナのことばかり考えてしまう。





 ジャンナはどうしているだろうか。

 俺がいないことで寂しがってないだろうか。

 はやく帰りたいなとそういうことばかり考える。




 俺にとって帰る場所は、もうすっかり王城ではなく、ジャンナの元になっている。たった数か月でも、俺の心はジャンナで一杯になっているのだ。

 時々人に悟られて、騒がれて、ややこしいことになりそうになった。けれど逃げることが出来た。

 ……今はジャンナに拾われた時と違って、俺は前向きな気持ちでいられている。

 あの時はこれからどうすればいいのだろうか、この状況を打破できないのではないかとそういう絶望ばかりだった。





 でも今は、これから原因を突き止めて解決させて、ジャンナの元に戻るという未来を想像している。

 その呪術の触媒の場所を探すのだけで、二カ月近くかかった。




 なんとか『魔王』を倒した場所に残った魔力を追って、あらゆる場所を探した。俺にかけられているものだからだろうか、俺とそれは繋がっているような感覚があり、だからこそなんとなく感じ取れたのだ。

 ただ空振りになることも少なくはなかった。




 ――というのも、その触媒は国内から出ていないようだが、移動していたのだ。移動させていたのは、魔族の女性だった。




 その魔族の女性がいたのは、辺境にある洞窟の中だった。魔物が蔓延る場所にその女性はいた。巨大な触媒は――俺の身体と同じぐらいの大きさの宝石だった。その中には、『魔王』の一部であったであろう角などが埋め込まれている。



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