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戸惑う青年 ⑥

 クロに心から気を許してもらうことはまだまだ出来ない。

 出会ってすぐの存在と仲良くなれるなんて難しいのだ。私によっぽど特別な何かがあるのならば、すぐに心を許してもらうことが出来たかもしれないが、そういう力は私にはない。

 そう言う力があったら、『救国の乙女』としての特別な力がなかったとしても、そのまま生活が出来たかもしれない。考えても仕方がないことだけどね。




 まぁ、クロから心を許してもらえるかは分からないけど、それはのんびり進めて行こう。

 クロが『魔王』の側近と言われていても、幸いにもこういう生活をしているからこそ此処に人が来ないからこそ時間はあるもの。

 ……でも楽観的な考えばかりでは、何か大変な目にあってしまうこともある。『魔王』の側近をかくまっていたことを知られると、私も処罰される可能性も高い。




 放っておけないと家に置く選択をしたことは後悔はしていない。

 ……そろそろ王都の方に錬金術で作ったポーションなどを卸しに行くつもりだったし、情報収集してこようかな。

 そうと決まれば、ポーションを売るようの容器につめないとね。



 私が『救国の乙女』と呼ばれていた存在だと悟られないように、王都に行く時は色々と細工をするのだ。

 忘れられている『救国の乙女』が下手に行動を起こすと、王国は嫌だろうし。こういうひっそりと一人で過ごして、こそこそと王都にポーションを売りにいく生活がどのくらい続いていくのかと考えるとうーん、という気持ちになることもあるけれど……、それでも暗い気持ちを考え続けるよりも、この生活を楽しんだ方がいいものね。

 なんだかんだ、『救国の乙女』になると預言されたことを隠して王都に行くのはハラハラもあるけど楽しんでもいるし。違った自分になれるって何だか面白いのよね。



「クロ、王都にポーションを売りに行くから、この容器にポーションとかつめるの手伝ってくれない?」

「いいけれど……、この容器って」

「ん? どうかしたの?」

「いや……何でもない」


 何だかクロが王都で売る用の容器や、制作者が分からないように色々と細工をしているのを見て、何か言いたそうにしていた。

 ……もしかしたら、クロは私が作ったポーションを使ったことがあったりするのだろうか? 生活費のためにもそれなりに売ってきたからね。

 


 クロは何か考えたような表情をする。それを見て、もしかしたら王都で私がクロのことを密告するとでも思っているのかもしれないとはっとなった。



「クロ、心配しなくていいからね。私はクロのことは何も言わないわ。心配だというのならば、何か誓約をしてもいいわよ! あ、そうだわ。『約束の腕輪』とか『誓約の首輪』って魔法具とかもあるわ。それ使ってもいいわよ!!」

「……それを持ち出す時点で本気なのはわかるから、それはいらない」

「ならよかったわ!! 私はクロのことを誰にも言わないわ!!」


 『約束の腕輪』と『誓約の首輪』っていうのは、『救国の乙女』として過ごしていた時にもらったものだ。

 私の家って、『救国の乙女』として過ごしていた頃に手に入れたものとかが沢山ある。とても貴重なものとかは、回収されちゃったけどこういうのは残ってるんだよね。

 ちなみに前者の腕輪はまだましだけど、後者の首輪の方は誓約を破ると大変な目に遭うものだ。こういうのを持ち出したからクロは本気だってわかってくれたのだろう。



 それにしてもこういう魔法具も普通の人は持っていないだろうから、クロは私のことを不思議に思っているかもしれないなーと思った。



 クロが私にもっとこういう事からでもいいから興味を持ってくれたらいいのだけど。そしてもっと生きる気力を持ってほしい。








「クロ、王都に行ってすぐ帰ってくるからね。いい子にしていてね」

「……ああ」



 私が王都に行く準備を終えて、クロにそういって笑いかければ、クロは相変わらず戸惑ったままの表情だった。



 ちょっと子供扱いしているみたいな言葉をかけてしまったから、クロが反発したりしないかなと思ったのだけど――、クロは相変わらずただ戸惑ったようにうなずくだけだった。





 さて、王都でクロに関する情報も集められるといいのだけど。




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