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第四話 尻目無双

 変化を解き、本来の姿に戻る。


「やはり化け物だったか」


 それにしてもこのゲームの世界。俺の尻の目に常に電気が補充されていく。俺は妖怪で強い方ではあるんだがいかんせん燃費が悪いからな。俺にとってここは理想的な場所なのかもしれない。


「どうした? かかってこないならこちらからいくぞ」


 高速でこちらに駆け寄るバルコ。はやいな、ここまでくると人間の速さじゃない。

 ああ、でも丁度いい機会かもしれない。この世界で最強と呼ばれる彼の力を見ておきたい。


 拳を振り上げ俺に殴りかかってきた。それをかわすと同時に回し蹴りを放つ。これも難なくかわす。バルコはバックステップをして一旦距離をとった。


 なるほど。世界最強は伊達じゃないな。人間というものさしで測れば間違いなく最強だろう。

 それにしても拳聖というだけあって格闘技主体の戦闘法だな。


(嘘だろ? 殺すつもりで放った拳と蹴りが余裕で避けられた。コイツは一体何者だ)


 電力を補充していると近場の景色が少々不安定になったようで蛍光灯が点滅したような状態になる。ちょっと補充しすぎたかな?


(異様だ。大量の稲妻がヤツの尻に吸い込まれていく)


 だいたい彼の力がわかったし今度はこちらから仕掛けてみよう。

 弱めの電撃を放つ。当たったが彼は全くひるまなかった。


 先ほどと同じようにバルコはこちらへ突進。今度はハイキックの2連発からの左右の拳のコンビネーション。これらも難なく避ける。


 彼には悪いが実はこの戦い、すでに少々ずるいことを仕込んであった。現在、俺と彼は電磁石のようになっていて、拳を突き出すと磁力の力で俺の体が自動的に離れる。そんな現象が起こっている。

 そう、先程放った電撃で彼を磁石化させたのだ。

 それでも攻撃を続けるバルコ。連続突、前蹴り、色々試すが俺はそのすべてをかわし続けた。


(ぐ、全く当たらない)


 連続攻撃は非常に体力を消耗する。さらに全部外しているとなるとその消耗度合いは計り知れない。


(そろそろか)


 動きが鈍くなってきたところを見計らってこちらから攻撃を仕掛ける。


「ぐふっ!」


 腹部にヒット。そのまま森の方へ弾き飛ばす。木をなぎ倒しながら吹っ飛んでいく。

 俺が攻撃する時は俺の電磁波を調整しくっつくようにする。こうすることで適当に拳を突き出すだけでも相手から近寄ってきて当たってくれるわけだ。そしてダメージを与えた瞬間にもとに戻す。


 バルコは息を乱し、ふらつきながらこちらへ歩いてくる。今のは流石に効いたかな。ここらで説得してみよう。


「こちらとしては殺し合いをするつもりはない。ここらでやめにしないか?」


「まだだ!」


 彼の体から光が溢れ出す。あれは闘気というやつかな?

 それにしてもでかい。彼の体の三倍くらいの大きさがあるだろうか。


「うおお!」


 右腕に闘気を集めているようだ。そして少し腕を曲げこちらに突進してきた。ふむ、闘気を叩きつける技かな。今度は受け止めてみるか。戦技の威力を知っておきたい。

 体の周りに電気の膜を貼り腕を胸元でクロスさせ、防御の体制をとった。


「究極戦技ヴィクトリーアックス!」


 防御部へ腕を叩きつけてきた。瞬間、凄まじい勢いで吹き飛ばされる。木を十本以上なぎ倒したところでようやく止まった。


「ほぉ、かなりの威力のようだな」


「……まいった、好きにするが良い」


 白旗を上げてくれたか。


「言っているだろ? こちらは戦う意志はないと」


「そのようだ」


 なんとか普通に会話ができる所まで来たか。まあ、実際俺は人間じゃないから警戒するのは仕方がないが。


「この後は普通にモンスターバスターをしたいんだが可能かな?」


「その前に、アンタの正体を教えてもらえないか」


 女神から止められてないし話をしてしまっても大丈夫だろうか。

 いや、とりあえず他の世界から来たことは伝えないほうが良いか。色々ややこしくなるし。


「アンタたちが言うモンスターとは違う。化け物ではあるがアンタたちの味方だ。ここの女神に魔王を倒してくれと言われてね。それでここへきたのさ」


「女神? 魔王?」


「三ヶ月後、この世界に魔王が復活するって話は知らない?」


「知らないな」


 あれ? もうそこから話が通じてないな。どちらの存在も知らないのか。世界最強と言われる男が。

 これはややこしくなりそうだ。ここは適当に切り上げよう。


「わかった、今の話はなかったことにしてくれ。君等の敵ではないということだけ受け取ってくれ」


「そうしよう。後、俺の方から町の人達に普通の人間だったと伝えておく」


「頼んだ」


 街へ帰ったあと宿屋で部屋を取る。荷物を机の上に置き。体を伸ばして体をほぐして椅子に座った。


「ふぅー。戦って結構汚れてしまったな。この宿屋にはフロはないらしいし。……そうだ」


 俺は電気を操れるわけだからマインと同じことができるんじゃないだろうか?

 つまり元の世界に帰るということ。可能であるのならもしものときの退路を確保できるし一石二鳥だな。試してみよう。

 コッソリと街を抜け出し、人気のない森の中へ入る。


「やってみるか」


 目をつむり精神を集中させて電気を放出。この世界とつながるようイメージする。

 しばらくすると色々見えてきた。意外と簡単だな。インターネットに近い感覚、様々な場所の情報が瞬時に入れ代わり立ち代わり頭の中を駆け巡る。


「む? これかな。出口っぽいし」


 電気の量を増やすと前に扉のが現れた。その扉を開くと俺の部屋につながっていた。


「よし、成功だ。風呂に入ってこよう」


 やっぱり毎日お風呂に入りたいよね。妖怪は汗をかかないから本来は入らなくても良いんだけど。

 お湯を入れ終わり風呂に入る。もちろん先に体を洗ってからだ。


「ふ~、最高。日本の妖怪に生まれてよかったー」

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