第三話 最強の男
街につくと門番がいた。
「身分証を見せてくれ」
マインにもらったカードを渡す。
「ふむ。街に来た目的は?」
「腕に覚えがあってね、モンスターバスターをやりたくてこの街へ来た」
「う~む、強そうには見えないが人は見かけによらないと言うし。いいだろう、通ってよし」
現在は細身の体。そして人間に化けている時はほぼ人と同じ身体能力となる。つまり今の俺は非常に弱い。門番さん、良い眼してるね。
と、普通に受け答えしてたな。ゲームだけど現実世界とほぼ変わらい人間のような存在なのか。
「ついでに場所を教えてもらえないか?」
「いいだろう」
そのへんに落ちていた木の棒で地面に地図を描き、教えてくれた。
街の中に入る。見た目は800年前にヨーロッパ旅行をしたときに見た町並み、つまり中世ヨーロッパ風の町並みに近いかな。
しばらく歩いて門番に教えてもらった場所に着いた。
「モンスターバスターになりたいんですね。では手続きを行いますのでこちらの書類に記入をお願いします」
一通り書いて受付に渡した。
「はい、晴れて我々の仲間入りです。まずは初心者講習からですね。コロネさん、お願いします」
「おう」
「これから俺がお前にみっちりと教えてやるぜ」
「よろしくおねがいします」
「つっても初歩的なことだけ、だけどな」
「んじゃまず魔法から――」
彼の講習で魔法と戦技という攻撃、もしくは防御手段があることがわかる。魔法は魔力、戦技は闘気を使うとのことだが、どうも俺には使えないようだ。多分妖怪だからかな?
「あっれー? まあ稀に魔法も戦技も使えないやつは居るからな。気を落とさなくても良い武具を手に入れればなんとかなるさ。後、色々面倒になるから秘密にしておいたほうが良いぞ。それからっと」
男は壁にかけてあった短剣を手に取り俺に渡してきた。
「武器を持ってなかったな、この短剣を使うと良い」
「さっきも話したとおり弱いモンスターから狩っていくように。いきなり強いやつとやって死んだやつは結構いるんだ。さ、早速試してみると良い。依頼書から弱そうなの探して受付へ持ってってみるか」
言われたとおり弱そう、賞金が一番低いモンスターの依頼書を手に取り受付に通す。
「レッドグラスホッパー10体ですね。よろしくおねがいします」
「コイツラがいる場所はどのへん?」
「えーっとですね――」
受付から場所を教えてもらってここから出ようとした時、一人の大柄な男が俺に近づいてきた。
「受付、彼が例の?」
「はい、そうです」
「あ、拳聖様だ!」
「うお、つよそう!」
周りから拳聖と呼ばれている男が俺に話しかけてきた。
「新人君だね? 俺はバルコ」
「シリメです」
歳は50くらいの男性、よく発達した筋肉を持っている。
後ろにいた受付の人が俺に近づき小声で話す。
(この世界で最強と呼ばれている男、拳聖バルコです)
「初めての戦闘は非常に危険なんだ。良かったら同行するよ」
ん、正直一人で戦いたかったがこの提案を断るのは一般人から考えてありえないよな。よし、面倒だが同行してもらうか。
「いいんですか、是非お願いします」
喜んでるふうを装って彼に答える俺。
ああ、でも面倒ばかりでもないか。世界最強ともなれば色々と物知りだろうし聞けることもあるだろう。
「では行きましょうか」
レッドグラスホッパーが現われる場所へ向かった。
「ああ、レッドグラスホッパーなら受付が話していたところよりいい場所があるよ。そちらに行こうか?
「そうしましょうか」
彼の提案に乗った。
途中バルコに道をたずねながら進む。案外距離があるな。
「ここらでは今まで見ない顔だな」
「ええ、田舎からこっちへ来たんですよ。腕に自身があったんで」
「なるほど」
適当に会話をはさみながら目的地に到着。
周りは木々が生い茂る深い森。人がいる気配がないな、なんとも静かなところだ。
「静かなところですね。人どころかモンスターもいないような気がするほど」
「ここにグラスホッパーはいないよ」
「え?」
「そろそろ正体を現したらどうだ? 人外の者よ」
ゲ! ばれてるじゃないか。いや、ここは人間と言い張ってみるか。ブラフの可能性もあるしな。
「いやいや何を言ってるんですか? 僕は人間ですよ」
「魔法、戦技両方使えない者は極稀にいたが、皆正体は人間に化けたモンスターだった」
これは隠し切るのは無理そうか。
マインもこうなることは予想外だったのだろうか。まあ、こうなっては愚痴を言っても仕方がない。
武器を下に落とし観念したように手を上げる。敵意がないことを行動で彼に示した。
「ふむ、察しの通り人外の者ではあるが敵対するつもりはない」
「モンスター達は皆そう言って油断させ、スキを見せると襲ってきたという」
ああ、モンスター達め! いやいや、これこそ愚痴を言っても仕方ないか。モンスターは敵対勢力なわけだから人間を襲うのは普通のコトだろうしな。
ここはこちらが勝利後に話を聞いてもらうしかなさそうだ。
「いいだろう、やろうか」