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第二話 電脳世界の女神

「う~、イタタ」


「ひっ」


「なにもしないよ。それより君、体は大丈夫?」


「あっあ、はい。平気です……」


 優しく声をかけたことで落ち着いてくれたな?


「あっ、平気じゃない! 早く戻らないと消滅しちゃう!」


「それなら大丈夫。俺がディスプレイから電気を引っ張っているから」


 右手を画面の中に突っ込み、左手は彼女の手を握っている。俺の体を通して彼女に電力を与えているわけだ。


「あ、ありがとうございます」


「ただこのままだと話しづらいから、一旦ディスプレイに戻る?」


「そうします」


 彼女はディスプレイの中へ入りこちらを向く。


「さて、色々と聞きたいことがあるんだけど」


「君は何者なんだい?」


「私はマイン。このゲームの中で女神をしている者です」


 うーん、精霊、幽霊のたぐいかな? とにかく画面の中からこちらと普通に会話ができるゲームの女神なんて聞いたことがないしなぁ。


「えっと、貴方は一体……」


「そうだな、正体不明はお互い様だな」


「俺は妖怪の尻目。多分君と同じようなモノさ」


「そうなんですね」


「コホン」


 ある程度打ち解けただろうか、軽く咳払いをし、突っ込んだ話をすることにした。


「単刀直入に聞こう。若者たちをさらったのは君かい?」


「……はい私です」


「さっきの悪魔は?」


「芝居のために変身していました。もちろんナレーションさんも死んでいません」


「いつもならあの後、ゲームの世界に引きずり込んで悪魔が若者を襲おうとすると謎の声とともに悪魔が消滅。私が助けたってことにします。そこから勧誘を始めます。もちろん私が一人三役です」


「ちなみにあんな悪魔のような姿をしたのはこんな敵もいるよっていう脅しのようなものですね。ほとんどの子は納得して私達の世界へ来てくれました」


「全員無事か?」


「はい、元気でやってますよ」


 一応安否の確認はできたな。鵜呑みにはできないが。


「ふむ、理由があれば説明してもらえるかな」


「私が住むこの『アースホール』にもうじき世界を破壊すると言われている魔王が復活するのですが、我々、『アースホール』の住人達では勝てる見込みがなかったため、そちらの世界の人、能力が高い若者達を借りることにしました」


「君でも勝てないと」


「はい。前回はかろうじて封印することができたんですがもう封印する素材がなくて」


 うーん。とりあえず俺がその魔王とやらを倒せばいいか。その前に若者たちの開放だな。


「彼らを引き上げさせたいんだが可能か」


「申し訳ないんですが、『クリアするまで元の世界に戻れない』ので不可能です」


 あちゃー、面倒なことになってんな。


「魔王退治でクリアかな」


「はい」


「ソイツはいつ頃復活するんだ」


「だいたい三ヶ月後くらいです」


「俺も参加したいんだが可能かな?」


「は、はい! 力がある人なら是非!」


「早速出発しますか!?」


「ちょっとまってね」


 とりあえず連絡しておくか、これから三ヶ月戻れないようだし。

 高山に電話をした。


「かくかくしかじかで――」


「わかった、この件は尻石さんにまかせるよ」


 後はっと、そうだ、この姿のまま入るわけにはいかないな。

 ダンスの棚に入れてあった变化用の葉っぱを持ちにいく。三ヶ月ゲーム内なら何枚か持っていかないとな。


 画面の前に戻って变化の葉を使う。どこからどう見ても普通の人間に変身した。


「おまたせ、いつでもいいよ」


「ほぉー、変身できるんですね」


「君と同じようなものさ」


「では行きましょう! 両手を出してください」


 言われたとおりに両手を前に伸ばす。マインが俺の手を握り何やら呪文のようなものを唱え始めた。


「ビシュン」


 呪文が終わると同時に俺は画面の中へ。

 はぁ~、長いこと生きてきたがゲームの中に入るのは初めてだ。


「今いる場所は神界、その雲の切れ目から見える場所が人間界となります」


 神界は雲の上、人間界は地上ってところか。


「ここへ来た皆さんは基本的に人間界へ行って修行を積んでいます。尻目さんもそうしますか?」


「ああ、そうする」


「地上へいく前にこれを」


 道具袋を渡してきた。


「この中に少々のお金と身分を証明するカードが入っています」


「えーっと、尻目さんの名前はシリメ。25歳、元々村人で、腕に自身があるからモンスタバスターをやりに街へ来たという設定でお願いします」


「モンスターバスターってのは?」


「人を襲ったり、害になる怪物たちを駆除する人たちのことですね」


「ふむふむ」


「後、こちらのゲームに合った衣装に買えましょう。ちょっと目をつむっていて下さい」


 言われたとおり目をつむる。


「はい、お着替え完了です。目を開けてもいいですよ」 


 自分の体を確認する。部屋着から中世ヨーロッパ風の服に変わっていた。


「着ていた服は先程の部屋に戻しておきました」 


 マインが地面に魔法陣を描く。


「この魔方陣に乗って下さい。周りのモンスターたちが弱く、色々教えてもらえる『始めの街』の近くに出ます」


「ではいってくる」


 魔法陣に乗ると、一瞬で地上へと移動した。広い平原に来たようだ。

 周りを見渡す。遠くに街の外壁が見えた。あそこへいけばいいのかな。


 街道を見つけ、その道に沿って歩いて街へと向かった。

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