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習作

人生

作者: ねこ

 もうとっくに諦めていた。


 少しずつ少しずつ前に進み、歩いた跡が道になる。そうして出来た道をわざわざ辿り、自分で砂をかけて元に戻した。

 歩いだ道が、時間が、巻き戻るはずもないのに。


 繰り返し繰り返し同じことをしているうちに、段々と地面が下がっていった。

 気付いていないふりをして、何度も何度も繰り返した。


 時間だけが前に進んだ。道は削られどんどん地の底へ落ちていった。


 やがて何も見えなくなった。光が届かないのだ。気づかないふりをして、手探りのままそれをまた繰り返した。


 何かが落ちてくる。それは明るく周りを照らした。はっきりと道が見えた。自分で削った道が見えた。


 光は輝くと道と、そこに立つ彼の姿を写した。彼は目をつぶった。


 何もかも否定した。ここには何もないと何度も言い聞かせる。なにも見たくなかった。


 光は彼に構わうことなく、不意に瞬くと、圧倒的な熱量で全てを焼き尽くした。


 削りとられ谷になっていた道は、全て消えた。


 平らに戻った土地で太陽の光を浴びて絶望した。また繰り返すのかと思った。


 そう思うと全てが面倒になった。もう何も考えず、ただ前に進むことにした。


 進んで進んで進んだ。


 結局、何もなかったが、何もなかったので、気持ちは楽になった。


 それとなく満足して、もう終わりだと呟いた。すると、太陽は落ち今度は彼ごと世界を焼き尽くした。



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