表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/25

第十二話 アリスと聖剣と十二の鎧

 アリスは体に鞭を打って歩く、自分を手招く謎の女性を追いかけて。

 不倒樹を切り拓いて建てられたログハウスの周りと違って、森の中は夜になると完全な闇、十メートル先も見えないが、光の魔法を扱えるアリスにとって通常魔法の【灯火(ライト)】でさえ、凄まじい光量を持つ。

 少女の上で輝く光の玉は、大きさはソフトボール程しかないが、その発光はLEDライトですら敗北を認めたくなる程、彼女を中心に数十メートルを白く照らし出していた。

 女性は二〇メートル程の距離を保ちながら、アリスを手招く。

 少女がある程度近寄ると、大気に溶けるように消え、また距離を開けて現れる。

 彼女が誰で、何者なのか、アリスには分からない。

 でも、何故か彼女を追わなければならないと本能が――自身の中の光の力がそう叫んでいる。

 そんな気がしてならない、そんな思いが少女を突き動かしていた。


 どれだけの時間が流れただろう。どれだけの距離を歩いただろう。

 感覚がおかしくなりそうだった。

 一歩踏み出すたびに体中に激痛が走る。息が切れ、心臓が早鐘を打って、汗が瀑布の如く流れる。

 だが、それでも彼女は足を止めなかった。止めるわけにはいかなかった。

 

 そして、ついにゴールらしき場所に辿り着いた。

 

 そこは深夜だというのに昼間のように明るく、開けた場所だった。

 周りに生えている木も不倒樹ではなく、何処にでもあるような普通の木だった。

 透明度の高い水で満たされた大きな泉があり、泉に沿うように白いユリの花が咲き誇っていた。

 アリスは【灯火(ライト)】を消し、泉に歩み寄る。


「こんなところがあるなんて……綺麗……」


 泉の美しさに見惚れながら、そう呟いた。


『そうであろう……』


 少女の感想に答えるように先程の女性が聞こえた。

 すると、目の前の泉の水がまるで生きているかのように蛇のように浮かび上がり、空中に集まっていく。

 集まった水は人を形成すると、その表面に色が付き、先程の女性になった。


『妾の領域によくぞまいった、『無限より生まれし光(アイン・ソフ・オウル)』よ』

「え?」


 女性の言葉に、アリスは首を傾げた。

 彼女もアリスの様子を見て、首を傾げるのであった。


 バレット、クリア、ティアはブーさんの鼻を頼りにアリスを追っているのだが。


「だらぁぁぁぁぁ!」


 カタストロフに炎を纏わせて、メチャクチャに振り回していた。

 今、彼らは魔獣(ビースト)の群れに取り囲まれていた。

 バレットも近づいてこようとする魔獣(ビースト)の眉間に、的確に回転式拳銃(リボルバー)の弾を撃ち込んでいく。

 彼が扱っている銃は加具土命(カグツチ)ではない。

 加具土命(カグツチ)はクリアによって隠されている為、代わりの回転式拳銃(リボルバー)を作っておいた。

 ティアも不倒樹の枝で鳥型の魔獣(ビースト)を相手していた。

 バレットとクリアが背中合わせに立つ。


「ああ、クソッ! なんなんだ、この数は!?」

「なんか、俺達をこれ以上、先に進ませないようにしてるみたい!」

「だろう……な!!」


 クリアは飛び掛かってきたブレード・ウルフをカタストロフで地面に叩きつける。


「とにかく、この群れをなんとかして、アリスを追うぞ!」

「うん!」


 その頃、アリスは謎の美女と話していた。


「貴女は誰なんですか?」

『妾はこの泉の女神、人の様な名は持たない……』


 自らを女神と名乗る女性。普通ならば、そんな言葉を信じられず、訝しげな視線を向けるのだが、アリスは何故か、彼女の言っていることが真実だと思えた。


「それで……その……女神様が一体、何の御用でしょうか?」

『うむ、妾は昔、ある者から預かったモノをお主に返す為に現れたんじゃ』

「あるモノ?」

『うむ、お主のモノじゃよ。『無限より生まれし光(アイン・ソフ・オウル)』』

「アイン・ソフ・オウル?」


 女神の話す言葉にアリスは首を傾げることしかできなかった。

 そんな少女の様子に女神は眉間にしわを寄せた。


『……お主は自分が何者なのか知らんのか?』

「え、はい……すみません……」


 心の底から申し訳なさそうに謝罪をするアリスを見て、女神は考える仕草をした。


『……まぁ、よいじゃろう。たとえ、お主が自らのことを知らずとも、お主が『無限より生まれし光(アイン・ソフ・オウル)』であることに変わりはない』


 女神は自分の中で何かを納得させて、少女と向き直る。


『さて、ではお主にアレを返すとしよう』

「はぁ……それで、それは何処に?」


 アリスの言葉に女神は泉のほうを向くと、右手を上に向かって振るった。

 すると、泉の中心が波打ちだし、そこに小さな島が浮かび上がってきた。


『あそこにある』


 女神は浮島を指差し、ただ一言だけそう言った。


「……あそこまで行けばいいんですか?」

『うむ』

「……分かりました」


 アリスは頷くと、履いていた靴を脱ぎすて、泉に足を入れた。

 泉の水は冷たくもなく、熱くもなく、触れているだけで心地良く幸せな気分になりそうだった。

 水深も浅く、足首ほどまでしかなかった。

 アリスが泉を歩き、浮島に辿り着くと、そこには武器が置かれていた。

 剣、槍、斧、弓等、様々な武器が数えると十二もあった。

 全てが金や銀、色とりどりの宝石で豪奢な装飾を施され、素人目に見ても全てが一級品の代物だと分かった。


「これ、全部ですか?」

『いいや、この中にある』

「え?」

『この中にお主へ返すモノがある。さぁ、探してみるがいい』


 女神の少し悪戯っぽく笑う顔を見て、アリスは困惑しながら、浮島の武器を見て回る。


(どれだろう……どれか一つなんだよね?)


 アリスは剣の一つを持ち上げた。

 彼女の身の丈よりも大きい両刃の大剣だった。

 刃に太陽と思しき紋章が刻まれ、鍔に赤橙色の六角形の宝石が嵌められていた。


『それじゃと思うか?』


 女神に声をかけられ、首を振った。


(違う……こうゆう時、こんな豪華なモノを選ばせるワケがない……)


 アリスが大剣を元に位置に戻し、浮島を歩いていると、不意に足に何かが触れた。

 視線を落とすと、豪華絢爛な武器の陰に隠れて、一本の剣が無造作に置かれていた。

 ただ、剣というにはあまりにもみすぼらしく、周りの武器に比べれば、酷く汚かった。

 見た目はどこにでもあるような普通のロングソード。

 切っ先から柄先に至るまで錆まみれで、とてもではないが剣として使えるような代物ではなかった。

 アリスは何故か、その剣から目が離せず、拾い上げた。


『どうした? そんなボロボロな剣なぞ拾い上げて?』

「…………これにします」

『何故じゃ? 何故、そんな使えもしないような剣なんじゃ? そこの細いのとかお主によさそうじゃと思うんじゃが?』


 女神が指さす先にアリスは視線を向けた。

 そこには細剣(レイピア)が刺さっていた。銀色の刃、鍔や柄に至るまで紫色の宝石で作られていた。

 アリスは視線をもう一度自分が持った錆びた剣に向けた。


「いえ、私はこれでいいです」

『分からんのう、何故じゃ? お主ほどの魔法の使い手がそんな剣で満足なのか?』

「確かに私は魔法は得意ですが、剣は全然ダメです。そんな私に、ここにある武器たちでは文字通り、宝の持ち腐れです……それに……」

『それに?』

「――できれば、命は奪いたくありません。出来ることなら、話し合いで解決したいです。それがダメなら……戦います。私の大切な人達を守るために。それにこの剣なら、斬っても相手を殺さないで済みそうですから」

『……………………うむ、正解じゃ』

「え?」


 女神の言葉にアリスが首を傾げた直後、錆びた剣全体に無数の亀裂が走った。

 剣はそのまま粉々に砕け散り、光の粒子になって形を変成していく。

 それは再び、剣に成った。

 ただ、先程までの錆びたボロボロの剣とは違う。

 柄は鍔は黄金と白金(プラチナ)で作られ、更に鍔には色鮮やかな宝石が鏤められていた。

 刃も長さが少女の腰の高さほどまであり、その表面は鏡のように反射したモノを全てを映し、わずかだが、白い光を纏っていた。

 アリスは剣を軽く振るってみる。

 重すぎず、軽すぎない。まるで、剣が自分の体の一部かのように振るうことができた。


「これが……」

『うむ、それがお主へ返すと言った代物『未来を導く聖剣(エクス・カリバー)』』


 女神の言葉の直後、周りにある武器にも変化が起こった。

 全ての武器が浮島を取り囲むように宙に浮き、徐々に巨大化していった。

 更に、上空に十二の魔法陣が展開し、中から巨人が現れた。

 正確には全長十メートル程の鎧だった。

 関節や兜の隙間から中身が確認できず、伽藍洞であることが分かった。

 鎧達は自分の目の前にある武器を手に取り、それを眼前に掲げた。


『うむ、『聖鎧』達もお主を新たな主と認めたようじゃな』

「……………………」


 あまりに理解不能なことが立て続けに起こり、アリスは口を開けて放心していた。


『これ、何を呆けておるんじゃ』

「す、すみません」


 女神に軽く叱咤され、アリスは我に返った。


『さて、『無限より生まれし光(アイン・ソフ・オウル)』よ。剣を掲げよ』

「え?」

『新たな主として、その剣を掲げよと言っておるんじゃよ』


 女神に言われ、アリスは少し困惑するが、すぐに表情を引き締め、ゆっくりと剣を天高く掲げた。

 聖鎧達も各々の武器を天高く掲げ、切っ先を合わせた。

 その光景はさながら、剣を掲げる王とその王に集う騎士達の様だった。


 同時刻。

 バレット達と戦っていた魔獣(ビースト)達に異変が起きていた。

 遠くから狼の様な遠吠えが轟き、それを合図に魔獣(ビースト)達はまるで蜘蛛の子を散らすように何処かへ走り去っていった。


「なんだ、急に?」


 先程までアレほど好戦的だった魔獣(ビースト)の豹変に戸惑う三人。

 しばらく様子を窺ったが、追撃の気配はなかった。


「何だったの?」

「分からん、だが、引いてくれたんなら、今のうちにアリスを探すぞ」

「うん、分かった」


 少女の捜索を再開しようとした時だった。

 近くの茂みが揺れる音が響き、三人はそちらを向き、警戒する。


「アレ、皆さん。どうしてここに?」


 茂みからアリスが出てきた。三人の様子を見て、目を丸くしていた。

 少女は同じ装飾が施された鞘に聖剣を収めて背負っていた。


「アリス!」


 妹の顔を見て、バレットは駆け出すと彼女を力の限り抱き締めた。


「ちょっと、兄さん。痛いです!」

「痛いですじゃねぇよ! どんだけ心配したと思ってんだ!」


 今にも泣きだしそうな声で、バレットが叫ぶ。


「まったくだぞ、アリス。こんな時間に何してんだ!」


 クリアも早足で歩み寄ると、少女の頭を叩いた。


「そうですよ。一人で森に行くなんて……アリス、その剣はどうしたんですか?」


 ティアが少女の背負う聖剣に気付き、尋ねた。


「これですか、これは……とりあえず、家に戻りましょう。話はそれからでも」


 アリスの言葉に三人は頷いて同意し、ログハウスに戻ることにした。

 戻るまでの間、バレットはアリスの手を繋いだまま離さなかった。

 それからアリスは自分にあったことを全て話した。

 女神に会ったこと、聖剣の主になったことを。


 翌日、いつも通り、アリスはクリアとティアを相手に近接戦の修行をしていた。

 なお、聖剣は部屋に置いてある。さすがに真剣で二人を斬るわけにはいかないからだ。

 相変わらず、アリスは攻撃をするたびにその場で不格好なダンスを踊っていた。

 その瞬間に二人はアリスを空中に打ち上げ、地面に叩きつけ、力の限りぶん投げるなど、一切加減のない攻撃を続けた。

 いつも通り、ボロボロになって地面に転がるアリスに向かって、ティアが追撃を行う為、距離を詰める。

 アリスも立ち上がって、攻撃を防ごうとするが足が震えてうまく立ち上がれないようだった。

 時を同じくして、双子の部屋に置いてある聖剣に変化が起きていた。

 聖剣が白い輝き纏い、同時に徐々に浮遊し始める。

 完全に剣全体が輝きに包まれると聖剣は姿を消した。

 その頃、ティアはアリスの目前まで迫り、右の拳を振りかぶっていた。

 木剣を杖にして立ち上がる少女に向かって、剛腕が迫る。

 そして、二人のいる場所に膨大な砂塵が舞い上がった。

 舞い上がった砂塵が徐々に霧散し、二人の姿が現れだした。

 二人の表情は驚きに染まっていた。

 二人の間に割って入るように聖剣が浮いていた。

 ティアの拳は聖剣に激突し、少女に届くことなく阻まれていた。

 咄嗟にアリスは聖剣を手に取ると、鞘が光の粒子になって、抜き身の状態になった。

 未来を導く聖剣(エクス・カリバー)はアリスが持つことで鞘が抜かれる。

 正確には聖剣が持つ魔力で作られた鞘が消えて、抜刀される。

 アリスは聖剣で峰打ちをしようと、ティアの腹部目掛けて剣を払う。

 ティアは後ろに飛んで距離を取った。


「……変わった剣ですね。主を守る為に飛んでくるとは」


 聖剣の力を目の当たりにしたティアが静かに呟く。

 アリスは聖剣を見つめると、意を決して、木剣を投げ捨て、聖剣を構える。


「アリス……それがどういうことか分かってますね?」


 ティアの問いに、アリスはしばし目を伏せていたが、覚悟を秘めた眼で彼女を睨みつける。

 修道女も瞼を閉じ、彼女の決意を認め何度か頷くと、その場から姿を消した。

 アリスは歯を食いしばり、聖剣を握る手に力を込めた。

 その瞬間だった。


 キィィィィィィィン。


 聖剣から甲高い金属音が響き、目の前の光景が刃に映し出された。

 すると、姿を消したはずのティアが数十メートル程離れた位置に現れた。

 ただ、彼女はまるで時間が静止したように動かなかった。


「え?」


 あまりのことに驚きの声を上げていると、ティアの体から黒い分身ような影が飛び出し、黒い軌跡を描きながら再びを接近し始めた。

 影はアリスに接近すると、右ストレートを顔に向かって打ってくるが寸止めし、更に左フックを脇腹に、その後、右回し蹴りを横っ面に繰り出してくるが、全て寸止めで止めていた。

 影はそのまま固定して動かず、今度は止まっていたティアが影の軌跡をたどるように動き出した。

 ティアは影のように顔に右ストレートを打ち出してきたので、アリスは顔を左に傾けて回避した。

 その動きにティアは一瞬驚いてみせたが、すぐに表情を引き締めて影と同じように今度は左フックを脇腹目掛けて繰り出すが、この一撃をアリスは聖剣の鍔部分で受け止めて、防いだ。

 二撃目まで回避されたことにティアは驚嘆した。

 アリスも影で動きが分かっていたとはいえ、ティアの攻撃を全て防げたことに驚愕した。

 すぐに平静を取り戻したティアが回し蹴りを横っ面に向かって行うが、少女は身体を反らして回避し、その隙に反撃しようとするが、横から飛んできたクリアの飛び蹴りが直撃し吹っ飛ばされてしまう。

 アリスは聖剣を地面に突き立てて飛んだ勢いを殺し、停止する。


 キィィィィィィィン。


 再び聖剣から金属音が響き、刃に遠くにいる二人の姿が映し出される。

 またもティアの動きが止まり、今度はクリアも一緒に止まってしまう。

 ティアと今度はクリアからも影が飛び出し、クリアの影は上空に飛んでカタストロフを振り上げ、ティアの影は自分の背後に回り込んで姿勢を低くし、拳を振り上げる体勢を取った。

 そのまま影が静止し、時が動き出したかのように二人が影の軌跡を追うように駆け出す。

 アリスは中腰の姿勢になって、剣を水平に構えた。

 そして、そのまま右足を軸にして、回転切りをした。

 その攻撃にティアは接近を止め、少し手前で停止する。

 回転を止め、ティアに接近し、聖剣を振り上げる。

 斬撃を最小の動きで回避するティアに対して、少女は振り上げた剣で袈裟斬りをし、次に脇腹目掛けて薙ぎ払い、その次に連続突きを行う。

 攻撃の動作に隙や無駄がなく、今までの武器に振り回されていた少女の姿はそこになく、所作一つ一つはまさしく、剣の達人の如き雄姿だった。

 そのことにティアとクリアは驚愕した。


「どうなってるのこれ~!?」


 当のアリス本人も()()()()()

 自分の動きが突然、プロレベルになれば誰だって驚く。

 アリスの猛攻にティアは回避に専念することしか出来なかった。

 上空でその光景を見守っていたクリアは空中で軽い爆発を起こして、その爆風を利用し軌道を変え、アリスに近寄り、カタストロフを振り下ろした。

 アリスは後方に飛んでその剛撃を回避する。


「なにこれ? 何なんですかこれ?」


 着地しながら突然の武術上達に混乱するアリスに二人も困惑していた。


「どうなってんだ?」

「……もしかして、これも聖剣の力?」


 ティアの言葉にクリアが彼女と目を合わせた。


「聖剣を持ってから突然、人が変わったように攻撃に隙が無くなりました。恐らく、聖剣には持ち主の身体能力を向上させる力がある。もしくは以前の持ち主の動きを模倣させる力があるのかもしれません」


 彼女の身の変化を冷静に分析したティアが説明する。


「ティア、いいですか?」


 遠くにいる為、少し大き目の声を上げながら恐る恐る手を上げた。


「どうしたのー?」


 ティアも同じように大き目の声で聞き返す。


「あのー! 動きが良くなっただけじゃなくてですねー! 二人の動きがー! 黒い影になってー! 先に見えるんですー!」

「どうゆうことですかー?」

「どうもー! 聖剣にはで――」

「だああああああ! 一々メンドイから一旦こっちに来て説明しろおおおおおおお!」


 クリアに怒鳴りつけられ、ビクッと体を震わせて、アリスは慌てて駆け出した。


 アリスは自分が見た黒い影の事を説明した。

 それを聞いた二人の手によって、検証が行われた。

 あらゆる方法で聖剣の能力を解明しようとした。

 そして、以下の事が分かった。


 ①.聖剣を持つと本人の運動能力とは関係なく武術に関しての能力が向上し、しかも目の前にいる相手の行動に対して、身体が自動で動き、回避、攻撃を行う。

 ②.聖剣には少し先の未来の相手の動きを視ることが出来る。

 ただし、これには条件があり、未来を視たい相手が目の前にいて、ある程度距離が離れており、なおかつ聖剣の刃にその人物の姿が映らないとならない。

 しかも、相手の初動を回避し、相手が次の動作を変えた場合、変えた動きを視ることは出来ない。

 ③.聖剣はアリスの身が危機に瀕する、もしくはある程度、距離が離れると自動的に彼女の目の前まで瞬間移動してくる。


 以上が未来を導く聖剣(エクス・カリバー)の解明出来た部分だった。

 クリア達は聖剣の力に頭を抱えた。

 聖剣の力に頼ってばかりでは本人に身に付くモノも付かなくなる。

 だが、その力がアリスには必要であるのと、聖剣を切り離そうにも勝手に戻ってくるというのも分かっている。

 どうしたものかと悩んでいると、バレットがこんなことを言った。


「別にいいじゃん、それでアリスが強くなるなら。俺も銃がないと魔獣(ビースト)と戦えないし、それと変わんないだろ?」


 その一言にクリア達も納得し、聖剣のことは飲み込んだのであった。

 ただ、そのせいで修行のレベルが数段上がってしまったのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ