6 アレン再び再び
「フィオーレン!! お前と……。」
「婚約を破棄する!! だろ?……チョー聞きあきた。」
ケインが小指で、耳をほじりながら言った。アレン皇子にとっては初めてでも、私達、姉弟には、何回目かになる婚約破棄である。
「……なっ!?」
言葉を奪われた形になったアレン皇子は唖然である。そして、あいかわらずの不敬な態度である。
ちなみに、何故、弟ケインがこんなにも、アレンに不敬な態度をとるかというと、単にキライだからだ。乙女ゲームをプレイしていた時もだが、今は姉と云う婚約者がいながら、浮気を繰り返すからだ。弟は基本的に軽いが、婚約者が出来たら遊びは、キッパリやめる言っている。それも、どうかと思うとこだが。
「……姉ちゃん。ゲオルグ失敗したからって、チョイチョイ間にアレン入れんのやめない? こいつアホだし?」
余程キライなのか、アレンを見る目が軽蔑していた。
「……き、貴様……!」
アホと言われて、アレンはワナワナと憤慨している。
仮にも皇子なのだから、当たり前と云えば当たり前だ。
「……ごめん……なんか、楽だから。」
憤慨しているアレンは無視した。
父親が宰相なおかげで、上手くいく、いかないはともかくとして、婚約まではスムーズにいく人がアレン皇子だった。
「それな。悪役令嬢、断罪ルートまっしぐら……のために、楽になってんだよ。もうアレンやめようぜ?」
心底呆れていた。もちろん姉にではない、アレンにだ。ケイン的には何故、アレン皇子にルートを変更するのかが分からない。
「でも!! 見てよ!! いつものキャスリンじゃなくて、違う女と浮気してるわよ!?」
と、アレンの後ろを指差した。そう、アレン皇子の後ろに控えていたのは、いつもの可愛い感じのキャスリンではなく、ものスゴく胸が大きい、強気で美人な令嬢であった。やっとゲームシナリオとは、違うルートに入ったのかと、喜ぶフィオーレン。これで少しは変わるかと思ったのだ。
「あ~~やっぱり出ました。爆乳イザベラちゃん、登場~~~!!」
とケインは両手で体を挟み身悶えする。この言い方からして、知っているキャラ。
……と、いうことは、新ルートではない。
「……なっ!!」
イザベラは、ケインの言い方に、顔を赤くしアレン同様、憤慨していた。まぁ、爆乳なんて言葉自体は、初めて聞くのだろうけど、ケインの仕草で何を意味する事なのかわかるよね。
「……しってるの……?」
ショックでしかない。マイクのフラグが、折れにくくなってきたみたいに、変化が起きたのかと期待した分ガッカリだ。
「キャスリンが6だとしたら、イザベラ2ぐらいの割合で、アレンが連れてくる。」
「マジかよ~~。しらんかったし……教えといてよ。」
知っているのなら、それなりの牽制が出来たはずだった。キャスリンが来ないと、代わりがいるのか。この浮気者め。
フィオーレンは前世では、マイク以外を攻略した事がなかったので知らなかった。
……と、いうか主人公のキャスリンしかやっていないのに、何故かマイクなのだ。2回やって2回ともがマイク、3度目はやらなかった。
「ごめ~~~ん!! 生で爆乳イザベラちゃん見たくてほっといた!!」
「アホか!! 私の人生を返せ!!」
悪びれた感じもなく、あっけらかんと言う弟に、フィオーレンは怒った。確かに、イザベラの胸は女のフィオーレンでさえ、ガン見してしまう程の立派な胸だが、そんな理由でイザベラの存在を、隠していただなんてあり得ない。毎度フラれる身にもなってほしい。
「……っ!! ミ、ミュスエル!! お前の子育てはどうなっているんだ!!」
アレンは、二人の父親ミュスエルを見つけると、怒鳴りつけた。不敬な態度どころか、無視をして二人で話をしているからだ。
「浮気者には"死"を……と、育てていますが……何か?」
ミュスエルは、かったるそうに近づいてくると、軽蔑した眼差しで言った。何度やっても娘の婚約者が、浮気をするので苛立ってもいる様だった。
「…………っ!!」
あまりの迫力に、背筋がぞわりとしたアレンは黙りこんだ。
「フィオちゃん、お父さん"ローウェル"ルート、スゴい得意だからローウェルにしなさい。」
とニコニコ笑いながら、何故か結婚相手を薦めてきた。ミュスエルも、転生者であり前世でも父親だったのだ。
そして、父親も乙女ゲームをやった事がある。もちろんローウェルもゲームの攻略者の1人である。
「アホか!! 結婚するの私だし!!」
フィオーレンはぶった斬る。父親が得意だからって、自分にはなんの関係もない。むしろやりたくはない。
「……でもね?」
「親父……ローウェルはマジでない。失敗した時のリスク、超絶でかいし……俺的にマジでない。」
ケインは手を横に振った。完全攻略しているので、ローウェルルートも詳しい。その弟が2度ないと言った。それだけリスクが大きいらしい。
「人生なんて、ハイリスク、ハイリターンだよ?」
「「それで、ハイリターン出来るのオヤジだけだっつーの!!」」
姉弟は叫ぶようにキッパリと言った。
ハッキリ断らないと、何をするかが分からないのが、この父親だ。大体、ハイリスクを知っているハズなのに、娘に薦める神経がわからない。
「…………困った子達だね…………。」
と苦笑いするミュスエルだった。




