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乙女ゲームの悪役令嬢は、ハッピーエンドを模索する〈連載版〉  作者: 神山 りお


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5/20

5 え? なんで?



 ケインの言った通り、東側赤いチューリップが咲いている方向から、ゲオルグらしき、黒髪で武骨な背の高いイケメンが見えた。



 ……カッコいい……のか?



 …………遠っ!! 見にく~~~い。



 ひどい……酷すぎる……想像以上に遠い。

 ここから50メートルはある。だれか、ゲーム補正してくれ。

 おまけに公園あるあるで、目の前の噴水が非常に邪魔だ。破壊したい。

 ……って事は、上手く魔力を操作しないと、この帽子は届かない。

 マジで鬼畜なクソゲームである。



 うそ~~ん。

 文句を言ってる暇もない。

 え~~~と、風に乗せて行けゲオルグの所に!!



 フィオーレンは、帽子を空に放り上手く風の軌道に乗せた。



 よし!! さすが私!!



 自画自賛だが、このために必死に練習して来たのだ。

 余程の事でもない限り、失敗しない。



 よし!! いける!!



 ーーーパシッ。



 …………えっ?



 何か黒い影が横切った。

 そのせいで死角となり、ゲオルグが帽子を…………取らなかった。

 いや……取れなかった。



 「お姉~~~さま~~~!! 僕が帽子を取りましたよ~~!!」

 銀髪、碧眼の美少年、見た目は天使……中身は悪魔なヤツがやって来た。その悪魔が、高さ3メートルにあった、あの帽子をいとも簡単に取った。いや……取りやがった。

 「アホ~~~空気を読め!! マイク!! 」

 フィオーレンは叫んだ。この一番厄介な小僧はマイク。可愛らしい見た目に反して、中身はどこかオカシイ。だから、マイクのフラグは真っ先に、叩き潰したハズだったなのに何故にいる。

 「空気を読んだから、取れたんですよ~~~?」

 風魔法を使って、取ったに違いないが……その空気じゃない!!

 「あ~~~っ!!」

 アホマイクのせいで、ゲオルグ様がこちらをチラリと見て、スタスタ行ってしまった。こうなったら、もう終わりだ。ゲオルグルートに戻るのは至難の業である。ガッカリだよ泣けてくる。

 「……お姉さま。」

 キラキラしたマイクが、帽子を手に持ち目の前のにいた。



 なんなんだよ。お前は……。



 このゲーム、主人公で全部クリアすると、もれなく隠しキャラとして、悪役令嬢スタートが出来るのだ。それが私。

 ただし、主人公はゲーム補正もあり、すべての対象者が好感度50%スタートに対し、悪役令嬢はマイナススタートという鬼畜ゲームだった。

 おまけに、何故かこのキラキラ少年、マイクの好感度だけ70%スタートとかいう、ありえない偏り。これを作ったクリエイター、マジで頭大丈夫? と訊きたい。だから、早めにフラグを叩き潰さないと、こうなる。

 「うっわ~~。マイコー出てきたし!! 姉ちゃん……マイコーのフラグ折らなかったのかよ。」

 隠れていた藪から、ばさりと出できたケインも、げんなりしてるのか、いつもの軽さがあまりない。それほどマイクはよく出てくるキャラだった。

 「折ったし!!」

 確かに折った。っというか、人としてどうかと思うが、出会い頭でいちゃもんつけて、平手打ちを喰らわす、それで折れるのだ。

 なのに……折れていない。ナゼだ?

 「姉ちゃん……ちゃんと、折っとけよ。」

 「ポッキーじゃないんだから、んな簡単にポキポキ折れるか!!」

 破滅フラグは、そんな簡単には折れない。ウンザリである。

 「アハハッ!! 名言いただきました~~!!」

 と、弟ケインはゲラゲラ腹を抱えて笑う。そんな弟にマジでイラッとする。1度は本気でぶん殴りたい。

 「お姉さま。結婚式はいつにします?」

 そんな姉弟のやり取りもなんのその。空気も何も読まないマイクは、ニコニコと笑う。

 「まだ、1回しか会ってないのに、結婚も何もないよね?」

 フィオーレンもげんなりである。

 そう、まだ1回目だ。今日で2回目。その1回でキミの中で何が起きているのかな? 出会い頭は平手打ちしたんだけど? しかも、プロポーズどころか何もかもすっ飛ばして結婚式ってナニかな? 好感度マックスになってたとしても非常識だよね。

 「1回会えば十分ですよ。愛しのお姉さま。」

 と可愛く小首を傾げて見せた。たぶん端からみたら可愛くてキュンとくるのかもしれないが、コイツの裏の顔を知っているのでキュンとはこない。むしろ、ゾゾゾッと鳥肌を通り越して、恐怖……狂気を感じた。

 「……アンタ、私が平手打ちしたの覚えてる?」

 訊かずにはいられなかった。あれで折れるのだ……普通は。

 「あの快感……忘れられません。」

 マイクは、以前打たれた左頬を擦り、恍惚としている。



 ヤバイやつだ。



 「姉ちゃん……なんか……コイツのフラグだけ、バク入ってんじゃん?」

 さすがのケインも、恐怖を感じているみたいだ。

 「…………やりなおそう……。」

 当然だ。こんなヤツとエンディングなんか迎えてたまるか。

 「……同感……親父のトコ行ってくる。」

 ケインは、急いで家に向かう事にした。

 「メンタルもたないから、早くね!?」

 「わかった!! 任しとけ!!」

 こういう時だけは、頼もしい弟ケインは颯爽とこの場から消えた。



 頼むから、早くリセットしてくれ~~~!!



 そこに残されたのは、青ざめているフィオーレンと、その腕に絡みついている天使マイクだけであった。



 「僕だけの、お姉さま……フフッ。」



 


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