16 悪役と決めたのは誰?
フィオーレンは、いつも通り一人でこっそりと、街に出ていた。
勿論、服は誰でも着ている、市民の簡素な洋服にしてある。
そもそも、こっちの洋服の方が肌にあう。令嬢のふわふわ キラキラな服なんて、動きづらいし本来は庶民な自分に合わない。
だが、洋服がそれでも、フィオーレンは人目を惹いた。
王妃、令嬢教育で身に付いた仕草、歩き方、そして元から持ち合わせていたその美貌にだ。それは、もう身に付いていて、隠しきれない様だった。
考え事をして歩いていたせいか、いつもは興味のない、高級なお店が並ぶ通りにいた。ガラス越しに並ぶ商品は、どれもこれもが、きらびやかで目を引く。
もうすぐ、春先なせいか、明るいピンクや黄色、そして若草色のドレスが目立った。
「……きれい……。」
心は質素倹約なフィオーレンだが、やはり少女だ。新作は気にもなるし、宝石類にだって目は留める。
ただ、あまり高い物は、傷つけたり落としたりが怖くて、滅多に身には着けない。たが、それを知っているのは、侯爵家の人間だけだった。
フィオーレンは侯爵令嬢だ、御家の威厳もある。なので、どうしてもパーティなどの場には、それ相応の服装を着ていく。
だから、それを見た人達は"派手好き""散財する令嬢""傲慢"……妬みや嫉みもあって、ねじ曲がった情報が飛び交い、勝手なフィオーレン像を作っていた。
それが今の"悪役"令嬢……フィオーレンだ。
フィオーレンは、ガラス越しに見ていた店から目を離すと、どこからか、聞いた事がある男の人の声がした。
誰だろう? フィオーレンがその声に振り返ろうとした瞬間、何者かに身体を引き寄せられた。




