13 軍人ゲオルグ様
ーーー1週間後。
いつもの公園に、姉弟はいた。そうゲオルグルートだ。
赤い花は……あちらこちらに咲いている。だが、東側だと確認は取れた。準備も万全だ。
「1・2・2、はともかくとして、まずは帽子をキャッチして貰らう事だけを考えろ。」
ケインが、フィオーレンの肩に手をのせて言えば、さながらこれから競技する、選手と監督の様である。
「まかしといて。今回は、ケインがマイクを、どうにかしてくれたから、来ないだろうし大丈夫よ。」
マイクは出会い頭の平手打ちならぬ、出会い頭の手套でケインが気絶させたのだ。もう、来ないだろう。
後は、ゲオルグに集中するだけ。フィオーレンが頑張る番である。
……しばらくすると、東側からやって来た。
距離は来る方向を考えて、少し近寄っていた。近くのベンチを早々に確保して、待っていたのだ。ケインは早々と気づくと藪の中に消えた。マイクはいない。
よし!!
フィオーレンは、風魔法を上手く操り、ゲオルグの方向に帽子を飛ばす。ケインが用意してくれた、ピンクのリボンの帽子だ。噴水が起こす風に、帽子が一瞬方向を変えそうだったが、なんとかこらえゲオルグの方向に向かった。
ーーーパシッ。
やったぁ~~~!!
二人の思いが詰まった、帽子を今回こそゲオルグがパシりとしっかりと取った。スルーされたらどうしようと、ヒヤリとしたが、華麗にジャンプして取ってくれた。まずは、始めのイベントは完璧だ。
「…………。」
わざとらしく、下を向ききょろきょろと探している風に近寄る。ここで私の帽子です! なんて言って上手くいくのは、主人公のキャスリンだけだ。フィオーレンはがっついてはいけない。あくまでもさりげなく、さりげなくだ。
「……探し物は、この帽子ですか? 美しいお嬢さん?」
ゲオルグが、フィオーレンに気付いて来てくれた。
よし、来た!!
何度目だとしても、彼が目の前に来ると、すごい背が高い事にドキリとする。そして、さすが軍人だ。ガッシリとしていて無駄のない筋肉が、服の上からでもわかる。
声は渋めで、いい声だ。ゲームよりやっぱり生ゲオルグは、カッコよかった。
「……お嬢さん?」
あまりのカッコよさに惚けていると、もう一度声を掛けてきた。
「……あ、すみません……私のことだと……思わなかったものですから……。」
と恥じらって見せた。だって、あまりのカッコよさに惚けてましたなんて言えないでしょ? ゲームのキャスリンは言うんだけどね。
「美しいお嬢さんは、ここにはあなたしかいない。」
フィオーレンはドキドキした。美しいなんて、社交辞令で聞きあきていたけど、ゲオルグは別だ。社交辞令ではないのが、ゲオルグを見ていると良くわかる。ゲオルグも少し頬が紅いのだ。
「あり……がとう……ございます。」
可愛らしいな、と思いつつ、帽子を受け取ろうとした瞬間……。
「んぎゃぁぁぁ~~~!!」
と、猫を踏んづけた様な悲鳴が公園に響いた。




