12 ケインは……
「姉ちゃん、どこに行くんだ?」
フラりと裏口から、屋敷の外に出ようとしていた、フィオーレンにケインが声を掛けた。先のローウェルの事もあり、心配してくれての事だった。
「ゲオルグ用の帽子を買って来る。」
時期的にそろそろ用意しないと、間に合わない。
どうして、こんなにも悪役令嬢ルートは厳しいのか。
「それな~~。面倒かと思って用意しといたし?」
とケインは、そのゲオルグ用の帽子を、背後から出すと、クルクル回して見せた。ピンク色のリボンがついた、ふわりとした帽子だ。
「どうしたの? それ。」
フィオーレンは驚いた。それは間違いなく、いつも用意をするのが大変な、エレガントな帽子だった。
「毎回、探すの大変だし~~? ウチ侯爵家よ? 帽子の1つや2つ、用意は簡単なんだな~~。」
そう、侯爵家ともなれば、買いに行く必要はない。発注して届けて貰えばいいのだ。
「……ありがとう! ケイン!」
勢いよくケインに抱きついた。軽いヤツだけどいいヤツだ。
「姉ちゃん、胸がないからフラれんじゃね?」
ーーーバシン。
「……いってぇ……。」
フィオーレンはケインの頭を、思いっきり叩いた。
却下だ。いいヤツではなかった。
最低なヤツだった。
頬を叩かなかっただけでも、褒めてもらいたい。
……というか、抱きつかれて何を思いその言葉を吐いた?
そういえば、爆乳イザベラは言わずもだが、小柄なキャスリンも胸はある。
私は……と、チラリと見て諦めた。
あの皇子は、胸で選んでいるのか?
だとしたら、どうすればいい?
自分の可愛らしい胸に問いかけてみるのだった。




