5話 帰り道
文章力を上げたい⤴️
体育祭の2日前、今日も今日とていつもの公園で練習に励んでいた。毎日の練習のかいあって童子の100メートル走のタイムは15秒を切るまでに成長していた。
努力が如何に重要かを教えられる。いつまでたってもだるいだるいって言ってる訳にもいかないかもな。
今日の分の練習を終え家路につく。初めての練習をした日に判明した事実、童子とは意外にも家の方向が同じなのだ。ご近所さんということで毎日カップルのように一緒に家まで帰っている。
普段特に会話を交わすことはないが今日は何故か童子がドジな理由を聴いた。
「童子はなんでそんなにドジになっだんだ?」
しばらく沈黙が続き、童子は重たい口を開いた。
「多分、自分のことを何も考えられていないんです」
「と言うと?」
そこから童子は自分がドジな理由を話してくれた。自分のことを考えられない。その真意とは何なのか。
童子は他人が困っているのを見ると放っておけないらしい。自分の事なんて二の次で、他人の幸せばかりを考えて行動しまう。そうするうちに自分のことに全く気が回らないようになり、ドジになってしまったと言う。
女神かな?自分は二の次とか女神かな?俺は自分1番の人間だから童子の考え方には相当驚き、素直に尊敬した。
普通みんな自分ファーストじゃね?各国の首脳がみんな童子だったら世界って平和なんじゃね?
「あ、濱田さん!小さい子が歩いてますよ!可愛いですね」
「ん?あぁそうだなぁ」
童子は自分の話を切り上げる様に他の話を始めた。童子がドジな理由はわかった。それ故に、何故そうなったのかを聞きたかったが、もう元の話にはまだしづらい。童子もあまりその話をしたくないのだろう。
確かに子供は可愛い。俺には2個下の妹がいる。今はもう中学生になってしまったが昔は可愛い妹だった。今も可愛いけど。シスコンじゃないよ?俺ロリコンだから。あれ?それもダメじゃね?
しかし、今はちびっこよりも断然童子のことを可愛いと思っている。ちびっこに興味なんてない。
2人で帰るとかカップル感マジパネェ。1人で盛り上がっていると童子の事が余計に可愛く見えた。少し前までだるいだるいといって要塞に籠っていた俺の姿からは想像できない日々を過ごしている。
体育祭の練習もだるいと思っていたが、良かったのかもな。
……待てよ、あのちびっこ今にも道路に飛び出しそうだが。ちびっこは自分の持っていたボールが道路に転がってしまい、それを追いかけていた。
ちびっこはボールを追いかけそのまま道路に侵入した。嫌な予感ってなんでか的中するんだよなぁ。親はどこにいったんだ全く。そして当たり前のようにやってきたのは猛スピードの車だった。
あれはやばいだろ。こんなところでちびっこがはねられるところなんて見たくない。急いで助けなければ。心はそう考えているのに体が動かない。こんなとき自分のチキンハートを恨む。
そう思った瞬間。いや、思うちょっと前、童子はすでに走り出していた。
「おい、童子ちょっと待て!!」
俺の静止には耳もくれず童子はちびっこを助けるめ走り続ける。童子がちびっこに向かって走っている間にも車はちびっこに向かっている。その車はもはや人を運搬する道具ではなく人を殺める道具と化している。
車が過ぎるのが先か。童子が子供を助けるのが先か。ギリギリのタイミングで童子は男の子を抱き抱え飛び出した。
童子と車がぶつかりそうになるまさにその瞬間がスローモーションに見えた。俺は思わず目を瞑ってしまったが車体は童子に当たったようにも見えた。
子供を抱きつき飛び込んだ先の道路でうずくまる。
「大丈夫か!!」
急いで童子の元へ駆け寄る。そして童子を揺さぶり声をかける。
「童子!おい童子!」
「あいたたたたっ。大丈夫ですよぉ〜」
道路で腕を擦りむいてはいたがどうやら童子は無事のようだ。
「っはぁー。無事でよかったな」
「はい。ありがとうございます」
そうは言うものの、俺の頭は煮えくり返っていた。どうにか抑えようと気持ちを落ち着かせる。やめろ俺。そんなことするな、柄じゃじゃないだろ。落ち着け。落ち着けって。
しばらくの間続いた奮闘は意味を成さなかった。
「何やってんだ!あぶねぇだろうが!」
夕方の道路に響き渡る怒号。怒りは治らなかった。
「いや、でも子供が……」
「子供が…じゃねぇよ!今回は2人とも助かったから結果オーライだ。でもそうじゃねぇ時だってあるかもしんねぇだろうが。考えて行動しろ!馬鹿!」
そういうと童子はおれの意見に反発してきた。
「馬鹿じゃないです!もし私が助けに行かなかったらあの子はどうなったと思ってるんですか!」
「そうかもれねぇけど、だからって自分を犠牲にしていいわけじゃないだろ!」
「いいんです!私なんか、もし死んでも誰も悲しまない。人のために死ねるなら本望です」
「このわからずや!!」
望んでもいない喧嘩をしてしまった。俺と童子はその後、言葉を交わすことなく家に帰った。
昔3台玉突き事故を起こしました。気をつけましょう。