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2話 侵入者

おはようございます。

 我が要塞(トイレ)に侵入してきた大敵、童子宮子。あの事件以来、俺は童子の行動を気にするようになった。


廊下ですれ違うとき、遠くに童子を発見したとき、奴はどんな人間なのだろうかと全ての行動に目を見張ったのだ。


 1週間にも及ぶ『童子観察』の結果を発表しよう。あいつはめちゃくちゃ「ドジ」だ。とにかくドジ。すごくドジ。ほとんどドジ。毎日ドジ。


 その理由は数多存在し、説明するとキリがないが例を挙げてみよう。


 あの事件以来、童子は俺を見かけると指を目の下に当て、舌を少し出しあっかんべーをしてくる。長い髪をふわりと揺らす女の子に向けられるあっかんべー。これはもはや最高のプレゼントであり、俺が登校する唯一の理由となっている。


童子の容姿は俺の好みどストライクで、いつのまにか隠れ童子ファンとなってしまったのだ。


 まあそれは良しとして、童子はあっかんべーを実行するたび前方にある柱や壁に突撃していくのだ。これぞまさに猪突猛進。前に壁があると気づいてしまう一般人には成し得ないことだ。いくら横向いてるからって普通ぶつかる?ぶつからないよね?


 童子のドジは体育の授業でもひときわ異彩を放っている。俺の座席は窓際であるため、窓から他のクラスが体育をしているのが見える。童子観察のため貴重なおサボり時間を割いて授業中に窓から童子を観察したのだ。


 皆が砲丸投げをしている中、童子だけ急にやりを投げ出したり、ソフトボールをしているのに、ルールを知らないのか相手ランナーめがけてボールを直接投げたり。


 スカートがまくり上がってパンツが丸出しの時もあれば靴下は左右違うときもある。救いようのないドジだ。


 そもそもスカートの下ってスパッツとかそーゆーのじゃないの?なんで直接パンツ?男だからよくわからん。


 さらに、童子を観察していて気づいたことが2つある。1つは、童子はふざけてドジっ子になっているわけでは無いという事。周りから見ればありえないだろって言いたくなるようなドジも本気でしている。正真正銘のドジである。


今の時期、体育祭の練習もありかなり本気で臨んでいるようだが、気合いが空回りして余計ドジになっている。


 そして2つ目。これは割と深刻な問題なのだが、童子の限界を知らないドジのせいで童子の周りには人が集まらない。要するに友達がいないのだ。友達のいない俺に言えたことではないが、花の高校生ライフ、友達無しで過ごすのはあまりにも寂しすぎる。


 ゔぅっ……。自分で自分のライフを削っちまったぜ。


 俺と同じような状況の童子に同情感が芽生えるが、そこは流石のだるいさん。行動は何も起こさない。

童子には同情するし可愛い女の子とは話したいと思う。それでもだるいという感情が勝ってしまう。


 童子のクラスが体育を終えた次の授業からはまた相変わらず要塞(トイレ)に籠ることにした。


 柄にもなく授業に出たから疲労が溜まってしまった。一時限ぶりの休憩で回復を図ろう。そう思った矢先、要塞(トイレ)の外から足音が聞こえてきた。


 誰か来たな。しかし妙だ。授業中にトイレに来たにしてはやけにゆっくりな足音だ。普通授業中にトイレに来るやつは急ぎ足でくる。


 それなのに、その足音は進んでいるのかいないのかわかりづらい滑らかに動くタイプの秒針のようにゆっくりと要塞(トイレ)に向かってくる。


 敵襲か!?いやまあそんなわけない。


 そしてトイレの入り口が開きそいつは要塞(トイレ)に侵入する。


 いつも通り別のトイレに行くかと思ったが、そいつは個室の扉をノックしてきた。


 まさかまた童子じゃあるまいな。いや、でも昨日の今日でそんな間違える奴がいるか?


 考えれば考えるほどわからん。ノックする奴なんて中々いないぞ。中の人がまだ排出中だったらどうするんだ。


 別に俺はトイレをしにきているわけではないが要塞(トイレ)からは出たくない。個室から出ないため嘘をつくことにした。まぁ入ってるのは本当だからな。嘘ではないか。


「入ってまーす」


「濱田くんですか?」


 この声はまさか、童子か。なんだってまた男子トイレにいるんだ?


「童子か。女子トイレは満席だったか?まあ女子は女の子の日とか大変だもんな」


「そーゆーわけじゃありません!ちょっと相談がありまして」


 なんで要塞(トイレ)の番人に相談すんだ。人選ミスだろ完璧に。


 もしかして惚れた?パンツ見られて惚れちゃった?

その類の性癖のお方でしたか?

 

……無いな。絶対無い。


「まあとりあえず壁越しに話すのもなんだし入ってこいよ」


「入るわけないじゃ無いですか!?」


「あーそうか」


「当たり前じゃ無いですか。と言うか濱田さんが出てきてください」


「えー。だって動くのだるいし」


「それは頑張ってください」


 まあ確かにトイレの個室に女の子と2人はやばすぎるな。何をおっぱじめるのかわからん。


 めんどくさいが出るしかない。


 重たい腰を上げ渋々ドアを開く。


 そこにはもちろん童子が立っていた。


 あの時は気づかなかったがこいつ、身長低いな。俺も175cmくらいしかないがこいつは150cmちょっとくらいか。頭ぱふってしたくなるな。ぱふって。


「で、なんだ。わざわざ授業中トイレに来てまでしたい相談ってのは」


「実は私…」


「ドジなんだろ?」


「っ……。やっぱり分かります?」


「ああ。誰が見ても分かるだろな」


 俺と童子の間にはあまりにも微妙な空気が流れ、お互いの沈黙は2.3分続いたと言う。






ドジっ子よりも幼女が好きです。

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