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弟五部に興味を持っていただき、誠にありがとうございます。
今回は、色々考えて全力で空中戦を描いて見ましたので、よろしかったら最後まで読んでください。
また、前回までの内容に大改修を加えました。書いていて無理がありすぎると思ったため、内容を変更させていただきました。前回までのものと噛み合わないと感じてしまう部分がある可能性があります、ご注意ください。
これから文章力をもっと上げたいと思います。もし説明不足であるや分かりにくいと思われる箇所がありましたら、ご指摘くださるとありがたいです。よろしくお願いいたします。
次郎と一希の震電2型は、小隊長機や他の友軍機に続いて降下を開始した。彼と彼女の視界内には、豆粒サイズの4機の飛行機が入っていた。それらの飛行機は、左右の翼に1つずつのジェットエンジンを配置した姿が特徴的な、イギリスの亜音速ジェット戦闘機であるグロスターミーティアであった。
誇り高い大英帝国は、日本と同盟関係にあったドイツによって侵攻されて降伏した。しかし、そのときの降伏文章にサインした者はチャーチル首相ではなくて、チェンバレン首相であった。チャーチル首相は、徹底的な交戦を唱えて海外植民地に亡命した。イギリスの科学者や工場の設備も海外の安全地帯に避難させられた。一部の科学者は、故郷を離れるよりも新しい支配者を受け入れることを望んだが、多くの科学者は、アメリカ合衆国に亡命した。
これらのことによって、イギリスの戦闘機開発及び生産は続けられ、日本軍は主にカナダ軍の英国製戦闘機と対峙することになってしまっていた。
グロスターミーティアは、縦一列の飛行編隊を組んでいた。次郎と一希は、命令通りに編隊の最後尾の敵機を狙った。
高度約9,000メートルを飛行中であった敵編隊は、攻撃してくる日本軍機を察知すると、上昇を開始して戦闘態勢に入った。
「小隊各機、敵編隊を分断するまでは縦一列の飛行編隊を維持して俺に続け。」
小隊長からの無線による指示が入った。友軍機が飛行編隊の隊形を変化させると、直ぐに次郎や一希もそれに続いた。
大鳳01,02の旭光は、最高速度が時速1,000キロメートルであるという速さの暴力と重力による加速を利用して、急激に敵との距離を詰めた。そして、振り切ろうとするグロスターミーティアに対して、彼らは30ミリ機関砲4門による斉射を行った。
敵操縦士は下降して逃げ切ろうとしたが、旭光の性能はそれを許さなかった。大鳳01の30ミリ機関砲から放たれた巨大な砲弾が、先頭のグロスターミーティアの胴体を切り裂いた。敵機は、爆発して部品をまき散らすと急速に落下していった。さらに、大鳳02の砲弾が、2番目の敵機の翼をもぎ取った。飛ぶ力を失ったミーティアは、炎上して回転しながら落下していった。
当初の予定通りに、大鳳01,02が敵編隊前方の2機を撃墜した。彼らが生き残った敵機とすれ違うと、動揺した敵操縦士は判断ミスを犯した。生き残った2機のグロスターミーティアは、互いに正反対の方向へと進路を変えた。
「敵が分断されたぞ!予定通りに最後尾にいた奴を追うぞ!」
次郎が、絶頂に到達した興奮を付け加えた声で、一希に無線を入れた。彼は、心臓の鼓動が増大することを止めることができなかった。たった今から、憧れていた戦闘機乗りの仕事である生死をかけた空中戦に、自分の身を投じるという現実を上手く処理しきれていなかった。
「了解」
一希は、興奮や緊張の渦から抜け出して、一周回って冷静な状態になっていた。
二人は、目標の敵機に対して一直線に突撃していった。そして、下降して離脱しようとするグロスターミーティアの背後に張り付いた。
敵操縦士は、後方6時の方向をとられまいと必死だった。彼は、機体を絶えず上下左右に移動させて、激しい重力の変化に耐えながら逃げていた。
高度が5,000メートルほどまで落ちたとき、敵機は次郎と一希から見て左側に旋回を始めた。
2機の震電2型と1機のグロスターミーティアが、大きな円を描くように飛行していた。次郎と一希は、照準の中に敵機を捕捉しようと躍起になっていた。
二人は、更に速度を上げて敵機に接近した。そして、ようやくその時が来た。
「ここだ!」
次郎は、思わずそう叫んでしまった。敵機が震電2型の照準器の中心へと入り、彼は機関砲を撃った。しかし、遠心力の影響で、砲弾が円の外側に飛んで行ってしまった。
「何、だと」
照準の中心に合わせて安定したところに砲弾を飛ばしたはずであったのにも関わらず、敵機を撃墜できなかったことに対して、彼は驚きを隠せなかった。
そこで今度は、照準の中心をミーティアの上側に合わせて射撃した。しかし、砲弾は、敵機の機首をかすめて飛んで行ってしまった。
「はいクソエイム、当たりません。」
彼は、自分の射撃の能力に呆れを隠せなかった。
目の前に砲弾を飛ばされたミーティアの操縦士は、これはまずいと思ったため、円のより内側に向かって急旋回した。次郎と一希は、突然の旋回行動に対して対応できず、敵機を通り越してしまった。
これを好機と見た敵機は、切り返して彼と彼女の後方に張り付いてきた。先程までの関係が、真逆になってしまったのであった。
「えっ」
目の前で起きた予想外のことに対して、二人は、綺麗なまでに同時に驚愕の情を表に吹き出した。
敵機に後ろを取られてしまったが、解決策を見つけるまでは円を描いて飛ぶしかなかった。彼と彼女は、急旋回時にかかる大きな重力に耐えながら、グロスターミーティアの20ミリ機関砲を避け続けた。
次郎は、いつ死んでも不思議ではない状況に陥ったことで我を忘れかけていた。一方で、一希は、死を間近に感じても平常心を保っていた。彼女の心は、大きく強く大胆に思考するように出来上がっていた。彼女の経験的な知識から、どれだけ危険そうな事でも思いきってやってしまえば、万事上手くいくのではないかという主張を、彼女は持っていた。
「次郎、次郎、思いついたよ、作戦」
一希が、無線で次郎に呼び掛けた。彼女の声には、少しだけ興奮が含まれていた。それは、最適解を発見したと思うと、つい舞い上がってしまうといった類いの気持ちの高なりであった。
「どうしたの次郎、応答して、大丈夫?」
返事が無かったため、不思議に思って続けてコールした。
「あっ、あぁ、大丈夫だ、大丈夫。」
彼は、敵機の動向に夢中になってしまっていた。
「じゃぁ、あの流星くんを落とすための作戦だけど、まず、次郎がこの円から急速に離脱する。そうすると敵機はどちらか一方だけしか追えないから、追われなかった方が切り返して戻って来て撃墜する。これで行こうよ。」
「わかった、それでいい」
彼女の作戦を了承すると、彼は、円の外へと急速に離脱した。これには、ミーティアの操縦士も機関砲のトリガーを押すことができなかった。
敵機は、そのまま一希を追い続けた。その時、味方から無線が入った。
「こちら大鳳03、グロスターミーティアを1機撃墜!」
予定通りに、大鳳03、04の分隊が、敵機を葬った。この知らせを聞いた次郎は、自分を奮い立たせて士気を上げた。次こそは、敵に砲弾をくれてやれる気がした。
彼は、右への急旋回から切り返して、敵機の方向へ機首を向けた。そして、機体性能ギリギリまで加速させた。
一希と敵機が描く円を横断して、目標までショートカットした。砲弾を確実に当てるために、出来る限り接近した。
そして、遂に敵機の後ろを正確に捉えた震電2型は、一度に4発の弾丸を吐き出した。それらは、グロスターミーティアの操縦席に人間の内臓を抉り出してぶちまけた。
その後、操縦士を失ったミーティアは、太平洋に落下した。次郎と一希は、敵機とその影が重なる瞬間まで全てを見届けた。
「やったね、次郎!今回は二人で協力して撃墜したから、次郎と私の撃墜数に1加算されるね。」
一希は、生まれて初めての敵機撃墜に興奮し満足していた。
一方で、次郎は、砲弾を撃ち込んだばかりの敵機とすれ違い、操縦席を鮮明に見てしまっていたため、素直に喜べない心情であった。一歩間違えていたら、自分がその立場になっていたかもしれない、と考えてしまうのであった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
今後の事なのですが、ちょっと忙しくなってきているため、更新速度が著しく低下しそうです。すいません。できるだけ早く更新したいと思います。
今回もよろしくお願いいたします。