3
この物語の第四話に興味を持ってくださりありがとうございます。サブタイトルを色々と変更してしまって申し訳ありません。やっとある程度統一的な命名法が浮かんだので、これからはそちらに合わせていきたいと思います。
よかったら今回のお話も最後まで読んでみてください。よろしくお願いいたします。
2機の亜音速ジェット戦闘機の「旭光」と、4機の亜音速ジェット戦闘機の「震電2型」が、小隊を組んで地上から6,000メートルも高いところを飛行していた。
震電2型は、皇紀2605年に正式採用された局地戦闘機であり、ジェットエンジンによって推進力を得ている。武装は4門の強力な30ミリ機関砲である。その速さは、最大で時速780キロメートルまで出すことが可能である。この機体は、九州飛行機によって作られたものである。
旭光は、皇紀2615年に正式採用された制空戦闘機であり、ジェットエンジンによって推進力を得ている。武装は20ミリ機関砲6門であるが、任務によっては30ミリ機関砲4門又は40ミリ機関砲1門に切り換えることができる。その速さは、最大で時速1,000メートルも出すことができる。
この速さは、大ドイツ帝国から提供されたジェットエンジンによって達成されたものである。このBMW社製のエンジンは、もうくたばったヒトラーから日本への"最期の贈り物"であった。
アメリカ合衆国を封じ込めて以来、各国が生き残りを掛けた戦いから新しい世界秩序のなかでどのような地位を築くのかという争いへの関心を強めていった。
そのような中でもドイツが東洋の国に技術を提供した理由には、ドイツの負担を減らすことと、枢軸国勢力が巻き返されないように保険を掛けること、ドイツには既に音速を超えることができる超音速ジェット戦闘機が存在していたことがある。
旭光の機体は、中島飛行機によって作られたものである。機体デザインは、震電をより大型化したものとなっている。この近未来的なデザインは、多くの軍関係者の男達を魅了した。
この小隊は、3人のベテラン操縦士と3人の新米操縦士によって構成されていた。小隊内部でも2人1組の分隊が組まれていた。ベテランの震電操縦士の分隊と、ベテランと新米の震電操縦士の分隊、そして新米の佐藤次郎と鈴木一希の旭光操縦士の分隊であった。ベテラン2人1組の分隊が全体をリードして、新米を含む分隊は彼らの後ろに配置することによって、三角形の飛行編隊を形成していた。
この小隊が飛行している空域は、日本軍の勢力範囲内であったが、連合国軍の勢力圏にも近い場所であった。次郎と一希は、空母からの離着艦訓練のために航空母艦大鳳に乗艦していた。しかし、最新鋭の空母を、新米の訓練目的のためだけに使うことができる程の余裕はなかった。それでも、航続距離が短いジェット戦闘機が太平洋で活躍するには、航空母艦を拠点とすることが必要であったため、定期的な訓練が要求された。
大鳳には、主要な任務として日本とカナダの境界線を警備する哨戒任務が与えられていた。これは、レーダー駆逐艦の島風や航空母艦鞍馬、防空駆逐艦初月等との協力の下で行われることになっていた。大鳳は就役して間も無く、乗組員は少数のベテランと多数の新米から構成されていた。よって、このような任務は比較的安全な地域限定のものになるとされた。
「大鳳06のお姫様、どうして女の子のあんたが男社会の軍なんかに入ろうと思ったんだ?もしかしてドMかな?」
暗号名「大鳳01」の小隊長機から、少しからかう様な質問が無線で入ってきた。ベテランの小隊長は、新兵との付き合い方も熟知している様であった。
「大鳳06」とは、一希の震電2型に付けられた暗号名であり、次郎の場合は「大鳳05」であった。
「ち、違いますよ。私はどちらかと言えばドSですよ!」
彼女は、勢い良く無線に叫んだ。
『一希さん、多分反論すべき場所そこじゃないよ。』
無線の会話を聞いていた次郎は、心の中で呟いた。
「あと、私が軍に入った理由ですけど、」
萎んだような声で彼女は続けた。
『いや、そっち先でしょ』
「無力な自分に身近なものを守ることができる力が欲しいと思ったからです。その時ちょうどですね、能力のある者であれば女子でも軍人になれるということを知って飛び付きました。」
次第に彼女の声は、先程とは打って変わって冷静で真剣なものになっていた。
皇紀2603年から2605年までの日ソ戦争において、戦いの主力であった関東軍は75ミリ砲を搭載した二式中戦車を装備して、赤軍の34式中戦車と戦った。赤軍の戦車には、男子のみならず女子までも搭乗して勇敢に戦っていた。その様子を見て軍部は、足りない人員を補充するために、能力のある女子にも徴兵の規模を広げた。その結果、女子である一希も帝国海軍に入ることが許された。彼女は、皮肉なことに連合国側で共産主義の国に救われたのである。
「アメリカがハンブルクとドレスデンに対して、新型爆弾を投下したことを覚えていますか?」
「あ、あぁ」
彼女の態度の変化に呆気に取られてしまった小隊長が、声を詰まらせて答えた。
危険なものを感じた次郎は、会話を止めようと行動した。
そう思ったとき、タイミング良く空母から無線で連絡が入った。
「こちら大鳳、大鳳01応答せよ。」
「あっ、えっと、こちら大鳳01、大鳳どうぞ。」
「先程、レーダー駆逐艦の島風から報告があった。現在、所属不明機が北東方向から高速でそちらへ接近している、とのことだ。注意せよ。以上」
「了解」
航空母艦との交信が終わると直ぐに、ベテランは小隊各機に指示を出した。
「聞いての通りだ。敵がこちらに向かっている。直ぐに迎え撃つ準備をする。高度を10,000メートルまであげるから編隊を乱さずに着いてこい。」
そう告げると、小隊長機は上昇し始めた。
「大鳳04、了解」
「大鳳05、了解」
「大鳳06、了解」
新米機は、急いで上昇を開始した。
しかし、最新型の旭光の方が上昇率が高いため、次第に震電2型は引き離されていった。
それでも何とか目標高度まで上昇してきたとき、青く輝く海を下側に捉えた。そこには雲一つない低酸素濃度の世界が広がっていた。
「1時の方向下方に敵機編隊確認、グロスターミーティア4機」
大鳳02が敵機を発見し、識別した。
「俺と02で前の2機を殺る、03、04は次の1機を、05、06は最後尾の1機を殺れ。」
報告を受けると直ぐに小隊長は命令を下した。
全機が命令を認識すると、降下を始めた。
緊張と興奮が交錯するなか、初めての実戦が開始されてしまった。
最後まで読んでくださりありがとうございました。まだ暫くの間は、大戦中の日本視点を1958~1962年のところのみ大まかに描きたいと思っております。その次は、ドイツ視点で2000年以降を描きたいと思っております。よろしくお願いいたします。