サンタさんの正体〜サイドチャイルド〜
さて、『十二月二十四日の夜』と言ったら、あなたは何を思い浮かべるだろうか……。やはり、クリスマスイブと思い浮かべるのではないだろうか?そして、サンタさんを連想するのではないだろうか。赤い服を着た真っ白なお髭の、あのサンタさんだ。
あなたは考えたことはあるだろうか。サンタさんの正体を。
私はサンタさん正体は何なのかということを、ふと考えてしまい、夜も眠れない。
だって、サンタさんだ。すべてが謎に包まれているプレゼントをくれるおじいさんだ。
考え出してしまったら、答えを導き出せるまで考え続けるだろう……。
そんなことになってはいけないと、私はクリスマスイブの一週間前、今日からサンタさんの正体について真面目に推測していこうと思う。
◇
まず、サンタさんは私が知っている限りでは一晩で子どもたちにプレゼントを配るという荒業をやってのける。その点から考えて、サンタさんは人間でないということが考えられる。
例えば宇宙人とか、妖精とか。けれど、サンタさんを人間ではないということにしてしまうと、説明がつかないことがある。
毎年のことになるが、親というものはサンタさんと知り合いだから、ほしいものを教えてくれと言って私からほしいものを聞き出そうとする。教える気がないとわかると、サンタさんに手紙を書きましょう! なんて言って無理矢理にでも書かせる。
そして、その書かされたサンタさん宛の手紙は親の手に渡り、その後サンタさんに送られるという。
世間にはサンタさんとメル友なんていう恐ろしい親も存在するという。どんだけメル友多いんだサンタさん、と突っ込みたくなる話だ。
それ以外にも、どうやってトナカイを操っているんだ。サンタさんが人間じゃないのなら、トナカイを触ることができないのではないか……いや、もしかしたら。そうだ、もしかしたらサンタさんは人間化できるのかもしれない。そうすれば配りに来たプレゼントを触ることもできるし。
そうだよ、きっとサンタさんは人間化して配っているんだ。やっと一つ固まった。
次はどうやって家に入っているのか、である。人間でないのなら納得がいくことだ。すり抜けて入ってこれるだろうから。でも考えてみよう。
先の仮説では、サンタさんは人間化して配っているんだ。なら、すり抜けて入ることは不可能なんじゃないだろうか?プレゼントだってすり抜けて入ることは無理だ。
なら、サンタさんのために親がドアの鍵を開けて、どうぞお入りくださいって招き入れているのかな。人間化しているサンタさんなら、親に見えるだろうし、親だって我が子にプレゼントをもらえるんだから喜んで招き入れるだろう。
しかし……ここで問題が出てくる。この考えだと、親はサンタさんが二十四日の夜に来ることを知っている。知っているのは親だけじゃない、その他の大人もなのではないだろうか。
すると、泥棒さんだって知っている。二十四日にサンタさんの格好をして子どもがいるお宅にいけば、喜んでドアを開けてもらえることを……。
子どもの部屋に行ってプレゼントをおいてくるふりをして、金目のものを盗んでいくのだ。盗んだものはサンタさんも持っている白いプレゼント袋に入れれば完璧さ。
こうなると……親がドアを開けてくれる、というのはちょっと否定せざるを得ない。泥棒さんがいなければそうだと思ったのに。
だったら、親も寝静まった真夜中にピッキングをして、静かに家に侵入してプレゼントをおいていくのか? うーん……それだと、サンタさんが泥棒さんになってしまう。
全然予想がつかないや。どうしよっかな……。サンタさんに直接聞けたらいいんだけど……。
ん? サンタさんに直接?
そうだ、それだ! サンタさんに直接聞いて確かめればいいんだよ。そうと決まれば、サンタさんはどうやったら私と話すことができるのかを考えないと。
とにかく監視カメラは必要だ。人間化した姿だったならカメラに収めることができるだろうから。
あと、ワナは外せない。
サンタさんが監視カメラに映らなかった場合、サンタさんの正体は来年に持ち越しだ。そんなのは嫌だ。だから、ここで出てくるのがワナになるのだ。
罠を張って、人間化しているサンタさんを捕らえるのだ。私が朝に起きるとサンタさんが捕まっているということ。我ながらいい考えだ。
うんうん……!
でも、あと、もう少し何かあればなぁ……。お兄ちゃんに聞いてみよう、何かいいワナの案はある? って。
お兄ちゃんは高校生だし、頭がいいし。絶対にいい案を出してくれると思う。
「おかし、おいておくんだよ。サンタさんはおかしが大好きだから」
おかし……。全然考えつかなかった。
お兄ちゃんの案は、疲れているサンタさんに温かいお茶と美味しいお菓子を用意して、そのそばにお手紙をおいておくのだ。内容はこう。サンタさんのことを教えてくださいって。すると、サンタさんがお返事をくれるんだって。
「ワナもカメラも用意する必要はない。あったら逆に怪しまれるよ」
それもそうだ。カメラとワナはやめて、お茶とおかしをおいて、お手紙をそえて置くだけ。
それでいいんだ。
クリスマスイブの夜が楽しみになったな。もともと楽しみにはしていたけど、もっと楽しみになったわけ。
ふふふ……正体を絶対に教えてもらうんだから!
END
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