60回転目
ホバーバイクを飛ばしたおかげで、夜の帳が下りる頃には街へ戻る事が出来た。街の手前でバイクを縮小させてから門へ。
門番の所の持ち物チェックで例の物を見てギョッとしていたが薬の材料だという事を伝えたら納得して貰えた。ちょっと内股気味だったのは男としては仕方がないと思う。
門を潜って医者の元へ急ぎ走る。道中でメイド……ピックルだったか? を見かけたが急いでいたので声をかけずに医者の元へ。
ドアを開け2階へ、医者の部屋が分からないので片っ端から開けて回ると、最後の部屋に医者は居た。
「おや、おかえり。案外早かったね」
「まあな、それより材料だけど……コレでも問題無いか?」
そう言って例の物をマルシへ渡すと、マルシはソレの一部を切り取り、直ぐ様顕微鏡で見ている。
暫く顕微鏡を覗いてから机に広げている本へ視線をやり、交互に顕微鏡と本を見比べていると唐突に此方を振り向いた。
「大丈夫、これなら薬に使えるよ。早速作り始めるから下へ行ってもらえる?」
「そっか、じゃあ俺はキャシーの所に行っとくわ」
軽く手を振って一階へ。出かける前にキャシーが寝ていた部屋へ入ると……キャシーが居なかった。
「は?」
入る部屋を間違えたか? 左右の部屋を開けるがそこにキャシーは居ない。
部屋を移したのかと二階へ向かいマルシへ聞いてみると、『ん? 何を言ってるんだ? 彼女を動かすはずが無いだろ。昼過ぎに彼女を運んだ部屋で寝てるはずだ』と言い切られた。
再度一階へ戻り部屋を片っ端から開けていく……一階の部屋を全て開けたが何処にもキャシーは居なかった。
ふとメイドの事を思い出した。
彼女に聞けば何か知ってるんじゃなかろうか。
直ぐに医者の家を出てくる途中で見かけた場所へ走る。
10分も走ると彼女を見かけた場所に辿り着いたがもう大分日が落ちている所為で薄暗く、顔の見分けがし辛いが人の数は先ほどより幾分減ってるので探しやすいのは不幸中の幸い。
多分買い物に来てたとなるとどっかの店に……そこで気づいた。彼女デバイス持ってるじゃん。
つまりデバイスさえあれば連絡用の魔法が使える、そしてマルシはデバイス持ち。
うわー、アホでー。
途端に自分の行動が馬鹿丸出しの行動だと気づいて恥ずかしくなる。
一旦冷静になってどうするか考える。
引き返してマルシに頼み、連絡を取るか。それとも折角だからちょっと買い物がてら彼女を探してみるか。
少なくともマルシ経由で彼女へ連絡が取れると思ったら冷静になれた。
落ち着いた頭で周りを見回すとカフェが目に留まった。
キャシーを見てもらった礼の意味も込めてお店でケーキを少し買ってからマルシ宅へ戻る。
念の為、再度一階の部屋を見て回ったがキャシーは居なかった。
仕方なくマルシの居る部屋へ足を運び彼女へ連絡を取ってもらおうと扉を潜るとマルシの怒号が聞こえてきた。
「ふっざけるなっ!!!!」
『----』
「いいか、もう一度だけ言ってやる。今すぐ戻せ!!」
『----』
「こっの……いいから戻せ!!」
どうやら取り込み中か?
「貴様がやろうとしてる事は殺人だ!! お前の所為で彼女が死ぬんだぞ!!!!」
『----』
「いいから戻せ!それが最善なんだよ!!」
何か揉めてるみたいだがこっちも急ぎだから遮らせてもらう。
扉をノックしてマルシの注意を引く。
「ちょっとスマンが、あのメイドの子と連絡取れるか? やっぱ一階にキャシーが居ないんだ。あの子なら知ってるんじゃないか?」
マルシが顔を歪めながら此方を見る。
「アイツなら出て行ったよ。患者と薬の材料を持ってな」
「はぁ??」




