吉昌、衝撃発言
「吉昌、君には若さが足りないよ、若さが。 もっとこう、少年らしく生き生きとだね……」
珍しく本気で心配する吉平は、吉昌に大袈裟なほどの身振り手振りで必死に言葉を伝える。
しかし、それがあっさりと仇になってしまうとは誰が思うだろうか。
「ああ、常に幼児に等しい精神年齢の兄上みたいにですか」
ふいに顔を上げ、本当にどうしょうもない兄だなとでもいうような呆れた顔でそう告げた。
「………………え?」
衝撃発言を耳にした。
目をパチパチと瞬いて、吉平が首を傾げながら動きを止める。
その瞬間、気まずいほどの沈黙が流れた。
言われた本人である吉平は、まるで石だ。
地にどっしりと腰を据えてびくともしないあの。
あまりの衝撃発言に、さすがの吉平も言葉が続かないようだ。
「あー……そうきたか……」
納得したかのように呟いたのは、守道である。
予想出来ていなかったかと問われれば、否。
十分に予想出来た答えだ。
そもそも、守道も吉昌も普段からそう胸の奥にそっと秘めていた言葉なのだから、言われても当然なのである。
「守道………」
「あー……うん、おいで吉平」
みっともない声で名前を呼ぶ吉平に、おいでおいでと手招きをする。
見ていて、とても居た堪れない気持ちになってしまったのだ。
すると、その手に導かれるようにふらりとおぼつかない足取りで、吉平が守道に向かって歩いてくる。
そして、すぐ目の前でぴたりと止まった。
しょんぼりと、しかし、じっと熱い眼差しでみつめてくる吉平の表情はとても悲しげで、今にも泣き出しそうだ。
「吉昌が、吉昌が……っ」
酷いんだ。
最後まで続かなかったその言葉が、喉に詰まって出てこない。
そして、わっと声をあげて守道に縋りつつ、顔を両手で覆った。
悲しみに打ちのめされた吉平を、どうして突き放すことが出来るのか。
しくしくと泣き出した吉平の背中を、守道は宥めるように撫ではじめた。
確かに、吉昌の言葉は事実ではあるのだが。
それは守道自身、この身で痛いほどわかっている。
毎日毎日、悩まされたことなのだ。
しかし、それはそれ、これはこれ。
これ以上苛めると、吉平が再起不能になってしまう。
何が嘘で真実なのかわからない、何が起こるかもわからない今の状況下で、最も強力な戦力だろう吉平が役立たずは困るのだ。
「おーい、吉昌……」
兄弟喧嘩には踏み込まないように心掛けている守道だが、もうそう言っていられない。
吉平を宥めながら、どうしたものかと吉昌を肩越しに振り返る。
「確かに、その通りだけど……何も今言わなくてもさぁ……」
「認めるんだね……」
ぼそりと、吉平が呟いた。




