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賀茂陰陽伝  作者: 東雲しはる
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就寝

「内装も、都のものと変わらないね」


椎菜の足音が完全に消えた頃、吉平が呟いた。

確かに変わったところはない。

部屋の中心に几帳があり、手前には畳と火の灯る燈台。

部屋の奥には色々な道具をしまう、納戸として用いる塗籠(ぬりごめ)がある。

守道はその戸を開け、中にあった茵を引き摺って部屋に無造作に敷いた。


「一式しかなかったけど……」

「いいんじゃない? ちょっと狭いかもだけど、三人川の字で寝ればいいんだし」


そう告げて、吉平は何も言わない吉昌を振り返る。

視線に気がついた吉昌は、頷いた。

大人であったなら、三人で眠るのは不可能だった。

しかし、彼らはまだ子供。

体はまだ小さいのだから、眠れなくもない。


「さ、早く眠ろうよ」


るんるんと弾むような足取りで茵に寄り、真ん中に寝そべった。

そして、立ったままの守道と吉昌に早く早くと急かすように、手を激しく上下にひらひらと動かしている。

守道と吉昌は互いに顔を合わせて、仕方ないなというような表情で笑った。


「何でお前が一番いい場所取るんだよ、吉平」

「ふふ……二人の普段は見ない寝顔をじっくり観察出来るね」

「………やめてくれ」


楽しそうに笑う吉平に、守道は呆れたような眼差しを向けながら呟いた。

その向こう側で、吉昌も苦い顔をしている。

この吉平のことだ、やりかねない。

守道は掛布代わりの袿を、頭から深々と被った。

これなら寝顔は見られまい。

そう思った。

しかし、その考えは甘かったと思い知らされる。

ぴらりと袿を少し捲り、開いた隙間から覗いているではないか。

にこにこと楽しそうに笑っている吉平と目が合った瞬間。


「ぎゃあああああっ!?」


思わず叫んでしまった。

何をしてくれているのだ、こいつは。

少し開いている隙間から覗かれると、いささか気味が悪い。

ぶるりと震え上がった瞬間、ごっ…と重く鈍い音が響いた。

突然の物音に驚いた守道は被っていた袿を勢いよく剥ぎ取り、聞こえてきた方へ視線を向けた。

その先には、頭に巨大なこぶをつくり、目を回している吉平がいた。


「よ、吉平……!?」

「あぁ、守道。 放っといていいですよ、静かになったでしょう?」


吉昌は清々しく言い、握っていた拳を下ろして再び横になる。

そんな吉昌と吉平を交互にみつめ、苦笑いを浮かべた。

どうやら今の鈍い音は、吉昌の鉄拳の音だったようだ。

さすが吉昌。

兄に手加減がない。

半ば気絶するように眠った吉平をしばらくみつめ、守道も再び横になる。

そして、ゆっくりと目を閉じた。

よほど疲れていたのだろうか。

すぐに睡魔が襲ってくる。

それにゆっくりと身を委ね、守道は深い眠りへと誘われていった。



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