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賀茂陰陽伝  作者: 東雲しはる
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いつの間にか迷子

「大丈夫、心配させてごめん」


守道は全ての考えを脳内から払うように、激しく頭を振る。

しかし、真剣な守道の隣で吉平がふう…、と浅い息をついた。

先ほどまでとは違う吉平の反応が耳に届き、守道は目を頻りにしばたたきながら首を傾げる。


「どうしたんだよ、吉平?」

「うん、あのね……。 何も考えずに進んでたんだけれど……その集落跡って、どこにあるのかな?」

「「……………」」


耳が痛いほどの静寂が三人を包んだ。

吉平の呟きに、守道も吉昌も言葉が続かない。

守道達はその場に再び立ち止まり、しばらく呆然と時を過ごす。

しかし、しだいに我に返りはじめた守道の顔に、はっきりとした怒りが浮かんでいく。

そして、最終的には額に青筋を浮かべ、くわっと吉平に向かって牙を剥いた。


「ちょっと待て! 散々俺と吉昌引っ張って進んでたのは何だったんだよ!?」


あれだけ楽しげに、自信満々だとでもいうような顔で引っ張っていたのに。

どこだと聞き返すのは何事だ。


「知ってるから俺達を誘導するみたいに引っ張ってたんじゃないのかよ!?」


守道は、間髪容れずに吉平へ詰め寄る。

詰め寄られている吉平はとくに焦った様子もなく、にっこりと屈託のない笑みを浮かべた。


「そんなはずないじゃない。 保憲様に詳細を伺っていた時、君も吉昌も一緒に聞いていたのだから知ってるだろう?」


守道は吉平の答えに、次の言葉が紡げない。

代わりに、悔しげに歯噛みして吉平を下から見上げるように睨み付けた。

確かに、よく考えてみればそうだ。

あの時、正確な位置までは話に出なかった。

吉野の山奥、という曖昧な位置情報だけだった。

それしか聞いていないのだから、吉平が知るはずがないのだ。


「兄上……道がわからないのに無闇に歩き回らないで下さいよ」


吉昌が吉平に恨めしげな眼差しを向けた。


「だってねぇ……」


吉昌の眼差しにも屈せず、吉平はうふふと無邪気な子供のように笑ってみせた。

しかし、それが気に触れたのだろう、吉昌は吉平に握られている手を潰れるのではと思うほど強く握りしめた。


「少しは後先考えて行動して下さい!! こんな山奥で迷子にでもなったら笑い話にもなりませんよ!?」

「もう遅いと思うよー? だって、最初の場所わかんないもん」


さらに明るい声で吉平が楽しそうに答えた。

しかし。

守道と吉昌は、互いの頭の中で何かの糸がぷつりと切れる音を確かに聞いた。

そして、目を狐のように吊り上げて牙を剥いたのはほぼ同時だった。


「「誰のせいだと思ってるんだ!!」」

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