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賀茂陰陽伝  作者: 東雲しはる
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慌ただしい朝 ―弐―

「守道、食事はどうしますか?」

朝餉あさげはもういいよ、食べてたら遅刻するから」


守道は差し出されたそれらを受け取りながら、菖蒲に首を横に振る。

そして、受け取った直衣に素早く着替えて、髪の寝癖を軽く整えたあとに高く結い、その上に烏帽子を乗せた。


「しっかり食べないと体に悪いですよ?」


菖蒲は忙しく着替える守道を見ながら、心配そうな表情で首を傾げた。


「大丈夫だから心配しないで、母さん」


そんな菖蒲を安心させるように、守道は明るい笑みを顔に浮かべた。

守道はいつも毎度の食事を欠かさない。

というのも、陰陽師は基本的に体力勝負だからだ。

何も、静かに星の動きを確認する星見や、暦作りだけが仕事ではない。

どちらかといえば、都に蠢く怨霊や(あやかし)を見つけて調伏(ちょうぶく)する方が仕事としては多いだろう。

怨霊や妖が蠢くのは夕暮れを過ぎた辺りから夜明けまで。

睡眠時間を削ることも珍しくはないため、食事くらいはきちんと管理していなければ体が持たない。

そうとわかってはいるのだが、今はとにかく時間が惜しい。

体の心配より、遅刻する方が問題なのだ。


「じゃ、行ってくるね、母さん!」

「えぇ、行ってらっしゃい。 道中気をつけるんですよ?」


菖蒲は優しく微笑み、小さく手を振って見送ってくれる。

そんな菖蒲に大きく手を振り返して、大急ぎで部屋を出た。

部屋を出ると、外気に(さら)され、冷えてている簀子が守道の体温を足の裏から奪う。


「ひー、冷たい…っ」


守道は体を震わせ、ぴょんぴょんと足の先で飛び跳ねるように簀子を渡る。

その足で素早く玄関に向かい、石畳の上に揃えて置いてある(くつ)を履いて、開いている玄関から全速力で駆け出した。

眩い日の光を浴びている庭に積もっていた雪は少しずつ溶け、斑模様になっている。

その雪が溶けて出来た水溜まりにはうっすらと氷が張っているようだ。

滑らないように気をつけながら、守道は(やしき)の門を開く。

そして、邸の外へと出た。

その先は、左京の五条大路。

すでに沢山の人の往来が見受けられ、賑やかになり始めた五条大路を右京方面へ走り出す。

急ぎすぎて、たまに足が縺れて転びそうになりながらも、人を掻き分けて一心不乱に走る。

しばらく走っていると、五条大路よりも幅が広く、人の往来も遥かに多い朱雀大路に出た。

守道が向かっているのは、今いる場所からさらに北にある大内裏南面中央正門の、朱雀門。


その先にある、中務省に属した、

『陰陽部』

『天文部』

『暦部』

漏刻(ろうこく)部』

の四部署からなる、天意を問うための機関・陰陽寮だ。


ここから、そう遠くはない。

全速力で走り抜ければきっと、出仕時間に間に合うはずだ。

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