闇を閉じ込める檻
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きゃらきゃらと、甲高くこの世のものとは思えぬ不気味な笑い声が響いた。
そこは、一寸先も見えぬ暗闇。
この世に生を受けた者が入れない、漆黒の底。
――待ってた……。
――ようやく来るよ……。
不気味な笑い声に混じり、高くも低くもない不思議な声が聞こえてくる。
その声は、歓喜に満ちあふれているとさえ言っていい。
――あぁ、待ち遠しい……。
――あれらがこの地に来るのは幾年ぶりか……。
ずっと、待ち焦がれていた。
長年に渡り我らと背中合わせで血を繋いできた、賀茂の陰陽師達を。
以前ここに来たのは光栄だった。
しかし、再びこの地には来ないだろう。
常に傍にいる安倍晴明がそれを是が非でも止めるはずだから。
しかし、彼らの血を継ぐ子らがやってくる。
何も知らずに、やってくるのだ。
――でも、残念……。
――本当は光栄を待っているのに……。
――我らを閉じ込めたあいつを、待っているのに……。
ザワリと濃密な闇が膨れ上がる中、悔しげに声が呟かれた。
そう。
本当に欲しているのは、賀茂光栄。
今まで先代達が出来なかった闇を閉じ込める檻を造り上げた陰陽師。
この檻を解放するためには、彼の血と霊力、魂が必要なのだ。
息子のそれらを使っても、微々たるものだ。
解放するまでは至らない。
傷一つ檻にはつかないだろう。
しかし、そんな息子でも役には立つ。
光栄を誘き出す餌として、大いに役立ってくれる。
息子に危険が迫ればあの男のことだ、全てを振り払ってでもこの地にくるだろう。
そして、後悔するのだ。
再びこの地に来たことを。
息子をこの地へ送ったことを。
しかし、安倍の者達が邪魔なのが否めない。
どうにか、引き離したい。
そのためには、都にいるあの男に動いてもらわねば……。
――あぁ、早く外へ……。
――そして、我らにあだなす彼らに制裁を……。
絶望の底なし沼にはまってしまえ。
そして、これで全てに終焉を……。




