霊符にひそむもの
そんな大人が見たら微笑ましい光景を眺めていた光栄がゆっくりと歩み寄る。
「吉平、吉昌、晴明はどうした?」
光栄は首を傾げながらそう背後から声をかけた。
すると、吉平と吉昌は寸分違わぬ動作で光栄を振り返った。
「父上はもう出仕なさいましたよ」
そう当たり前だとでもいうような声で答えたのは吉昌だ。
そんな言葉に、光栄は思わず遠くを見るような目で口端を苦笑で歪ませた。
こんな時まで息子達を放置するのか、晴明。
そう喉元まで出かかっているのだが、息子達の前では言えず、光栄は言葉を飲み込んだ。
そんな光栄の思考を読み取ったのか、吉平はにっこりと微笑みながら首を傾げた。
まるで、いつものことだとでもいうように。
「光栄様へ父上からの伝言は預かってますよ」
にっこりと笑んだまま告げた吉平を、光栄は目をしばたたきながらみつめる。
それを確かめた後、吉平は緩やかに口を開いた。
「あとはよろしく、だそうです」
「…………」
一体、何をだ。
光栄は呆れたような目ですいっと視線を空へ戻した。
これから息子達は吉野に行くだけ。
光栄も見送るだけだ。
もしかして、この場にいない自分の分もしっかり見送ってほしいということか。
どこか思考がずれている気がしてならないが、そういうことにしておこう。
光栄は自分に納得させるように一つ頷き、再び息子達に向き直った。
「守道、今朝渡した移動手段の方の霊符を出してみろ」
「……え? あぁ、うん」
突然の言葉に、守道は戸惑いながらも素直に懐から一枚の霊符を出す。
そして、それを光栄に渡した。
「いいか、守道。 使い方をよく見ておけ」
「うん」
守道が頷いたのを確認し、光栄は霊符を立てた人差し指と中指の間にそれを挟んだ。
「綺瀏!」
それを言霊と共に勢いよく空へ放つ。
空へ放たれた霊符が光栄の声に反応し、ピタリと動きを止めた。
そして、動きを止めた霊符から、紙に刻まれていたまじないがまるで生き物のように意思を持った動きで弾き出る。
その弾き出たまじないは、またたき一つで姿を変えてしまった。
その光景に、その場にいた息子達はもはや言葉もない。




