初めての共存
紅姫だけではないと言ったか。
式は、一体使役しているだけでも十分凄いのだ。
何せ、式の数は陰陽師の霊力と力量に比例する。
数が増えれば増えるほど、それにふさわしい陰陽師それが必要になるのだ。
「でもなぁ……今そいつらを呼ぶ必要も、お前に教えてやる必要もないからなぁ……」
光栄は、守道の目の前で腕を組み、さらに顎に手をあてて考えるような仕草をしてみせる。
教える必要がない。
それはつまり、教えてやれれるほど守道には陰陽師としての力量がないという裏付けだ。
その判断は正しい。
自分でも、光栄のいう通りだとわかっている。
悔しいが、反論出来ない。
守道はそっと膝の上でぎゅっと強く拳を握った。
それを光栄はしばらくみつめた後、やがて柔らかな笑みを浮かべて守道の頭を軽く叩いた。
「とりあえず、何かあったら紅姫を頼れ。 きっとお前の力になってくれる」
「……うん。 ありがとう、父さん」
少しだけ俯いたまま答えた守道の頭を、今度は優しく撫で回す。
そして、再び守道の周囲を優雅に浮遊している紅姫に視線を滑らせた。
その瞳は、いつも息子達にみせるものではない。
とても真剣で、まるで突き刺さるような鋭さがある。
その目が告げている。
あとはお前に全て託す、と。
紅姫はその光栄の眼差しに、無言で頷いた。
そして、頷いた守道の顔の下に回り込み、紅姫はそのまま見上げる。
『守道、わたしはこれから一時的にあんたの配下になる』
「……うん」
守道は紅姫の顔をじっと見つめる。
少しだけ悲しみの混じる目で。
それを紅姫も受け止めながら、さらに口を開いた。
『光栄の時と同じように、あんたの霊力に普段は混じって共に行く。 まだわたしと自由に干渉出来ないだろうから、出入りは独断になるけれど……』
「うん、大丈夫。 紅姫がやりやすいようにしていいよ」
紅姫の言うことの方がもっともなので、特にあれこれ言うつもりはない。
これから共に生活することになるのだから、少しでも紅姫が過ごしやすい方法でいてくれた方が守道からしても色々と助かる。
守道は紅姫をじっとみつめていた目を、ふいに柔らかく細めた。
「これからよろしくね、紅姫」
『こちらこそ、沢山頼ってくれていいわよ』
素直に紅姫の存在を受け入れてくれた守道に紅姫は力強い声で告げた。
そして、紅姫の赤い瞳が、少しだけ柔らかく細められた気がした。




