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賀茂陰陽伝  作者: 東雲しはる
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光栄、聞く耳持たず

「えぇー……本気なの、父さん…?」


どこをどう通ろうかと考えている守道に光栄はおいでおいで、と頻りに手を上下に振っている。

それをしばらく恨めしそうにみつめ、やがて決心した守道はそっと部屋に足を踏み入れた。

しかし、その瞬間から何かを踏みつけ、守道は思わず悲鳴をあげる。


「ぎゃあっ! せ、専門書踏んだ……っ、あ、下に数珠も!!」


一つ荷物を脇に退けるたび、また一つ下から出てくる。

部屋はもう、陰陽道の宝箱状態だ。

下手に踏みつけると、守道自身が色々危ない気がする。

守道は丁寧に足が踏み入れられるくらいの僅かな道筋を作り上げながら、光栄のいる畳へ向かう。

やっと辿り着いた頃には、寝起きとも思えないほど疲れ果てていた。


「ねぇ、父さん……」

「どうした、息子よ」


ふう…と疲れきったため息を漏らして目の前に座った守道に、光栄は目をしばたたきながら首を傾げた。

そんな光栄を見上げ、ゆっくりと億劫そうに口を開く。


「……片付けようよ」

「部屋が散らかってることなんて、些細なことだろ」


陰陽師に大切なのは腕だ腕、と胸を張って光栄は守道に言う。

守道は今度は恐ろしく長く深い、現在の感情全てを吐き出すようなため息をついた。

どうやら、自分の部屋が散らかってることは自覚があるらしい。

それがさらに厄介だ。

わかっていないなら気づかせてやれる。

しかし、散らかってるとわかっていて、さらに些細なことだと断言した人間に、片付けようという気にさせるのは難しい。

ならば、妻の菖蒲に片付けてもらえばいいとも思う。

だが、何度も言うように、ここは陰陽師としての仕事部屋。

専門書は触っても問題はない。

しかし、呪具や穢れを移す形代など、扱い方を知らない道具なども散乱してるのだ。

長い間陰陽師の妻をつとめている菖蒲は、その自覚がある。

だから、どんなに散らかっていようとも、この部屋には手を出さないようにしているのだ。

そもそも、そんな大切なものをそこらに投げ捨てるなと、心の底から呆れてしまう守道である。


「………もういいや……。 父さん、呼んだ理由を聞かせてよ」


痛みを堪えるかのようにこめかみを手で押さえ、守道は光栄に話すように促す。

それを聞いていた光栄は、守道の頭をくしゃりと撫で回し、ゆっくりと口を開いた。

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