明るい親子
そうであろうことは、今の守道の表情を見れば一目瞭然。
やはり、昨夜可哀想だと思わずに、ちゃんと起こしてやればよかっただろうか。
しかし、そう今さら考えてたとて後の祭りだ。
光栄は深く息をつき、後ろ頭をガリガリと激しく掻きむしる。
そして、守道に手招きをした。
「ちょっと、俺の仕事部屋にこい」
「………………はい」
守道はたっぷりと間を置いた後、小さく消えそうなか細い声でそう答えた。
呆れを通り越して、苛立っているのだろうか。
守道から見て、光栄は少し機嫌が悪いように見える。
いや、多分、違う。
やってしまったという守道自身の後悔と罪悪感がそう見せているだけだろう。
光栄はため息をつきながらも口には柔らかな笑みを浮かべているのだから。
「ほら、早く来い」
「あ、うん」
いつの間にか立ち上がり、部屋の入り口にいた光栄が守道を呼ぶ。
守道は慌てて茵から降り、一緒に眠っていた行義の乱れた寝具を整えて光栄を追った。
部屋を出ると、東の空から少しずつ明るくなり始め、雀が数羽守道の視界を横切っていく。
しかし、昨日はあんなに晴れていて清々しかった空は、あいにくと重く厚い雪雲に覆われている。
今日は雪が降りそうだ。
しかし、ヒュウ…と冬の冷たい朝の風が、空を見上げていた守道に容赦なく吹き付ける。
守道は思わず、ひぃ…と情けない声をあげた。
それを聞いていた光栄は、背後の守道を振り返る。
そして、ぶるぶるとまるで生まれたての小鹿のように震え、おぼつかない足取りの守道の姿を見て、思わず笑いに噴き出した。
「そら寒いだろ、単一枚なんて……阿呆かお前は」
「う、だって……父さんが早くって急かすから……っ!」
守道はガチガチと歯を鳴らせながら光栄を下から睨みつけた。
しかし、それでもなお笑いが止まらない光栄は目にうっすらと涙を浮かべ、腹を抱えて盛大に笑っている。
「うー……ちょっと袿取ってくるから、待ってて父さん」
この寒空の下、単一枚で話しなんて出来そうもない。
そう思い、部屋に戻ろうとした時だった。
ふわりと、頭から、顔の上半分が隠れるほど布が深く被せられた。
「わ……っ」
突然の出来事に、守道はわたわたと腕をばたつかせて、なんとか布から顔を覗かせた。
「それを着てろ」
そう言って、光栄は守道の髪がぐしゃぐしゃになるほど激しく頭を撫で回した。
守道の体に被せられた大きな布に視線を滑らせて、目をしばたたく。
「……これ、父さんの袿でしょ?」
守道は首を傾げて光栄を見上げた。
多分、間違いない。
先ほどまで肩から掛けていたはずの光栄の袿がないのだから。




