夢からの目覚め
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まだ朝を告げる雀の囀りさえ聞こえない、暗闇に包まれたままの夜明け前。
守道は導かれたように眠りから自然と覚めた。
いつもなら、まだ眠っている刻限。
しかし、深い睡眠を長く貪った後のような清々しく、爽快感に満ち溢れていた。
「…………夢……?」
守道は茵に寝そべったまま天井をみつめ、ぼそりと独り言のように呟いた。
ひどく重苦しく、恐ろしい夢。
もうダメかと、頭で考えた。
たとえ夢であれ、悪夢は人の気と霊力を一気に削ぎ落としていく。
それが悪ければ悪いほど、その影響が強く出る。
最悪、死に至らしめることもなくはないのだ。
けれど、それは一瞬で終えた。
清く澄み渡る微かな水音と女性の声によって。
一体、誰だったのだろうか。
自分の危機を助けてくれた、その女性の声は。
そうぼんやりと考えていた時だった。
不意に、部屋を渡る微かな足音が聞こえてきた。
その足音はしだいにこちらへ、ゆっくりと近づいてくる。
そして、几帳を挟んだ向こう側で、僅かな布擦れの音をたてながら座る気配が守道に届く。
なんとなく、気配と足音でわかった。
これは多分……。
「父さん……?」
几帳越しに声をかけると、脇側からひょっこりと光栄が顔を覗かせた。
「なんだ、起きてたのか」
「うん。 なんか、目が冴えちゃって……」
守道は光栄に向かって苦笑混じりにそう答えた。
すると、光栄は優しい笑みをみせて、ゆっくりと腰を浮かせる。
そして、守道の傍らまで膝立ちで床を滑るように近づいた。
「珍しいな……どうした、守道?」
優しい笑みのまま、光栄は守道の顔を覗きながら首を傾げた。
守道は目を頻りにしばたたきながら、光栄を見上げる。
さきほど見た夢を、言ってしまおうか。
光栄だったら、守道の持つ疑問に答えてくれるかもしれない。
そんな淡い期待を込め、守道はゆっくりと口を開いた。
「うん………なんか、嫌な夢を見た気がするよ」
「……夢?」
やけに素直に答えてくれる守道のふわふわと柔らかい髪を撫でながら聞き返す。
いつもなら、光栄に噛みつくような表情や言葉を向けてくるのに。
少しだけ心配の色が混じる笑みで、光栄は守道の頭を撫で続ける。
そんな光栄の手の温かい感触に浸るように、守道はやんわりと幼子のように目を細めた。




