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賀茂陰陽伝  作者: 東雲しはる
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不思議な出会い

『……守道……』


水音に混じり、聞こえてくるのは玉響のような清く澄み渡る女の声。

不気味な男のものとは違い、耳に届くその声はとても心地いい。

ひどく荒れ、騒いでいた心が少しずつ落ち着いていくのがはっきりとわかる。

守道は倒れ、目を閉じたまま弱々しくとだが、息を吐き出した。

助かった。

その一言が脳裏をよぎった。

安堵する守道の頬に、ピチャンと一滴の雫が落ちる。

それはしだいに守道の頬を伝い、漆黒の闇に溶けて消えていく。


『………ちっ、もう少しだったものを……』


少しずつ柔らかな眠りに誘われ、朧げな意識の守道に悔しげな声が吐き捨てられる。

また、何かしら手を出されるのではと不安がよぎる。

しかし、それ以降は声が一切聞こえなくなってしまった。

それどころか、気配すら感じられない。

横から邪魔をされ、これ以上ここにいるのはよくないと男は判断したのだろうか。

なんにせよ、危機は逃れられた。


『……守道……』


男もいなくなり、静かになった闇の中で、再び女が名前を呼んだ。

さっきから誰だろうか。

この声が聞こえ始めてから、不思議と息苦しさも体の重さもない。

あるのは、心地いい睡魔。

しかし、守道は睡魔に襲われながらも、鉛のように重い瞼を必死に押し上げる。

そして、ようやくうっすらと糸一本の太さほど開けた瞼から、闇に視線を這わせた。

しかし、あるのはやはり闇ばかり。

声の主も、聞こえている水音の正体もわからない。

本当に、誰だろうか。

そう再び頭の中で疑問を繰り返す。


『……疲れたでしょう? 眠りなさい……』


守道の疑問に答えるよりも先に耳に響いた、優しい声。

その声を聞いた瞬間に、守道の瞼が耐えかねたように落ちた。

そして、すぐに安らかな寝息が聞こえてくる。

闇の中、あどけない表情で眠る守道。

その守道の頬に白くなめらかで、しなやかな腕がそっとのびる。

のばした手で守道の頬に触れ、優しく撫でた。

大丈夫。

ひどく疲れているようだが、命に別状はない。

そのことに安堵し、そっと眠る守道に寄り添う。

そして、まるで守るかのように、守道が目覚めるまでただ静かに、ずっとそうして寄り添っていた。



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