夢うつつ
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重く深い、肌に吸いつくような漆黒の闇。
しん…と静まり返るその中で、守道は閉ざしていた瞳をそっと開いた。
「ここは……?」
周囲を緩慢に見渡しても自分の手すら目視出来ないほど、濃厚な闇につつまれている。
守道は思わず目に見えない不安に、身震いをした。
『……見つけた……』
突然背後から聞こえてきたのは、ぼそりと呟く男の声。
その声に、ざわりと全身に鳥肌がたった。
恐ろしい。
本能が告げている。
あれに関わるな、逃げろと。
しかし、まるで縫いとめられているかのように体はおろか、指先すら動かせない。
『おかしいなぁ……いつも頑丈な檻の中にいたのに……』
おかしいと疑問を口にしているはず。
それなのに、全くそれらしさが声音に含まれていない。
逆に、どこか楽しんでいる、歓喜しているとさえ感じてしまう。
『……そうか、賀茂光栄が揺らいでいるのか……』
一際楽しそうな男の声が闇に響き渡る。
ドクン…と胸が跳ねた。
同時に、気持ちの悪い冷や汗が全身から噴き出してくる。
何故、ここでその名が出てくるのだ。
不意に頭をよぎった疑問を解したのだろう、男の笑い声が上がる。
『なんだ、知らないんだなぁ……賀茂守道』
「…………っ!」
不意に名を呼ばれ、思わず息を詰めた。
いや、違う。
強制的に、何かに首を絞められたのだ。
「……っ」
守道はなんとか逃れようと必死に喉元を掻きむしる。
しかし、そこには何もない。
あるのは、守道自身の白くなめらかな皮膚だけだ。
苦しい。
このままだと、まずい。
逃げろと、頭がうるさいくらいに危険を告げている。
しかし、体は言うことを聞いてくれない。
『まずは、お前からだ………賀茂守道』
いつの間にか縫いとめられていたはずの体が動いていることすら、守道は気づけていない。
気づける余裕がないのだ。
「………っ」
不意に、喉元を掻きむしっていた守道の腕が落ちた。
空気が足りない。
そのためか、全身の力が抜け、意識が薄らぐ。
助けて……。
薄らぐ意識の中、無意識にそれを求めた。
そうしないと、こんなわけのわからないところで命を捨てることになる。
それだけは、いやだ。
誰でもいい、気づいてほしい。
守道は強くそう願う。
しかし、ついに耐えかね、糸が切れたかのように膝から崩れ落ちた。
その時だった。
ピチャン……。
かろうじてまだ働いている耳が、僅かな水音をとらえた。
ピチャン……。
それは、ゆっくりと近づいてくる。




