仲良き賀茂家
「うん。 ……お前もおいで、行義」
守道は腕に抱えている着物を抱え直しながら、菖蒲に頷く。
そして、守道の袖を握って隣に立っている行義を連れて仲良く部屋に入る。
「その着物、守道と行義に畳んでもらってもいいですか?」
腕に抱えていた着物を床に置き、円座に座った二人に、菖蒲は首を傾げながら聞く。
そんな菖蒲に、同時に仲良く頷いた。
「なら、お願いしますね。 私は新しい狩衣を仕立てますから」
そう言って屏風の裏から出したのは、鮮やかだけれど優しい風合いも残した黄色の反物。
それは、守道がいつも着ている狩衣と同色のものだった。
「もしかして、俺の?」
守道は目の前に積まれている干したての着物をせっせと畳みながら、菖蒲に首を傾げる。
菖蒲はそんな守道を見ながら空いている円座に座り、淡い笑みのまま頷いた。
「えぇ、そうですよ。 明日から吉野へ行くのですから、新しいものをと思って……」
柔らかな声で言いながら、反物に慣れた手つきで針を通していく。
菖蒲は家族の着物の寸法を把握していて、仕立てる度に測り直す必要がない。
そのため、家族が出仕していない間に仕立てても、一寸の狂いもない着物が出来上がる。
さすが、光栄を支える良妻だ。
「明日までには仕立てますから、待っていて下さいね」
「うん。 ありがとう、母さん」
母の優しさに感謝を伝えながら、照れくさそうに顔を俯けて着物を畳むのに没頭する。
行義と一緒に畳んだおかげで、山ほどある着物は思っていたよりも早く片付いた。
再び積み上がった着物の山に最後の一枚を乗せ、守道は菖蒲に首を傾げながら視線を送る。
「終わったよ、母さん」
「あら、早かったのですね」
菖蒲は針を動かす手を止めて、
「守道と行義が手伝ってくれたから、とても助かましたよ」
と二人に笑みを浮かべた。
「他に何をお手伝いしたらいい?」
もっと手伝うよ、とやる気満々な行義が菖蒲に聞く。
そんな行義に、菖蒲は頬に手を添えて考えるような仕草をしてみせる。
しばらくそうして考えたのち、やんわりと口を開いた。
「守道、明日の準備を行義と一緒していらっしゃい」
「うん、わかった。 俺の部屋に行こうか、行義」
守道は素直に頷き、行義の小さな手を握る。
そのまま二人は一緒に立ち上がり、互いに寄り添うようにして部屋を出ていく。
菖蒲は子供達の愛らしいその後ろ姿を目に焼きつけるようにじっとみつめる。
そして、やがて満足感で溢れた笑みを浮かべ、針を止めていた手を再び動かし始めた。




