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賀茂陰陽伝  作者: 東雲しはる
14/85

謎の男


―――――

――――――――――


ザワザワと賑やかな朱雀大路。

行き交う人波を横に外れ、朱雀門より死角になっている朱雀大路と三条大路の入り口付近。

黒の単に藍の袴、頭には顔が隠れるほど大きな(かさ)を被った男の姿がある。

男はさらに顔を隠すように笠を前に傾け、にやりと薄気味悪い笑みを浮かべた。


「あーあー…やだねぇ…。 これだから勘の鋭い奴は嫌いだ」


上手く気配を隠していたはずだった。

そのため、朱雀門にいた陰陽博士ですら気づいていなかったのだ。

それなのに、奴は自分の存在を見事に探し当てた。


「俺の目的は賀茂の陰陽師なのに…。 邪魔だなぁ…安倍の陰陽師」


とくに、安倍吉平。

陰陽寮に在籍する、全部署の学生達の中でも天才と呼ばれるこの子供は。

常に賀茂側にいて、付け入る隙がない。


「安倍吉平……勘づいてやがる…」


一体、いつからだ。

いつ、奴は気づいたのだ。

男は怒りで口端を歪め、小さく舌を打つ。

そして、強く歯を噛み合わせた。

賀茂と安倍は強い繋がりがある。

昔もそうだった。

賀茂光栄に手を出した時、やはり安倍晴明が勘づいて立ちはだかった。

賀茂に手を出すならば、おまけで安倍が必ずついてくる。

それは、息子も同様らしい。


「あー、失敗したなぁ…」


常に晴明がつきまとう光栄に今すぐ手を出すのは、無謀に等しい。

何せ、生きながらにして伝説とされ、霊狐が母の晴明は通常の陰陽師を遥かに上回る力を持つ。

それならば、色濃く父の血を継ぎ、まだ成長期真っ只中で隙だらけな長男の守道の方が先に始末しやすいと思っていたのだが……。

どうやら、それが裏目に出てしまったようだ。


「まあいい……。 いくらでも手はある…」


まずは、賀茂から目障りな安倍を引き離す必要がある。

そうすれば、今以上に容易くことが動くはず。

それに、息子共は親元を離れ、吉野へ行くというではないか。

これこそ、待ちに待った好機だ。


「………今度こそ、地獄へ墜ちろ…賀茂の陰陽師よ……」


男は袴の裾をひらりと翻し、三条大路の人混みの中に紛れて消えた。



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