地味目な魔術も使いよう・アナザーその一
暫く振りです、861です。筆が乗ったのでサラリサラリと書き上げました。短めですが、どうぞ。
・・・全くもってなァんにも色がない真っ白けっけな空間のド真ん中に、ぽつんと長机と椅子が一つづつ。そして机の上にはインカムと受話器の無い電話、そして真白な箱が一つ。それに空間に浮かぶモニター。
さて、今日も今日とて誰かが来た。死に装束にのっぺらぼう、磨り硝子ていどにやや透けて、精々わかるのは体つきが男か女かその程度。
そうして机に近づいて、画面がこんな文字を映し出した。
【インカムをお付け下さい】
指示されるままに装着すると、流れ始めるガイダンス。アナウンスに従って、ポチリポチリと数字を押していく。どこの親切設計か、声と同じタイミングで、画面にも同じ文章が。そう何度かのアナウンスの後、これまた流れた指示により、箱に腕を突っ込んだその誰か。それでもって引き抜いた手の中には数字の書かれた一枚の紙。これまた電話のボタンを押し、またアナウンスが始まった。そうしてこうして一番終い、
【お疲れさまでした。これにて手続きを終わります、インカムを外し、前へお進み下さい。あなたに、良き来世、良き出会いが在らんことを】
・・・そんな台詞が流れ、アナウンスはぷつりと切れた。今までとは違い、そこだけははっきりと感情がこもっていた。インカムを外して机に起き、そのまま前に進んだ誰かはしばらくすると見えなくなった。
・・・また誰一人いなくなった真っ白な空間も、暫くすればまた誰か来る。おんなじようにまた誰か来る。朝も昼も夕方も夜も晴れも曇りも雨も雪も関係なくこの世から人間が全く居なくなるまで変わらない。
・・・なら、一々神様が出て来て対応するなんて事あるわけがない、たかが人間一人、何の必然性があってそんな事する必要があろうか。人の手がいるところは人の手で、それ以外は自動化なこの時代、何をか言わんやあの世をば。
そんな理由が有りまして、かくの如く相成りました。
・・・このお話は、話と話の間の言わば箸休め。とりあえずこれにてお終い次回へ続く。
如何でしたでしょうか? 仮に一部の方に不愉快感を与えたとしても、私は知った事ではありません。逆に、聖人や極悪人でもない、何か成した訳でもない、大惨事の被害者でもない相手に神様がどうこうすることそのもの が不自然だと私は思っていますので。
それでは。