第0話:【1から0へ、0から1へ】
皆々様お久しぶりです、861です。
今回、久々にしばらくぶりに一つ新作と相成りました。
それでは、どうぞ。
「・・・・・・まいった、もうやり残しがなんもありゃしない・・・」
とある街とある家、そこにてある老翁が大往生を遂げた。 享年105、いくつもの時代を見、色々やらかし色々な人と付き合った。最期までボケる事なく。
で、
「・・・・・・?」
意識がまた戻ったと思ったら、死装束を着ていた。それは当たり前なので別にいい。問題は、
「あら、次の方? 」
・・・自分はなぜ、受付のような場所に来ているのだろうか。
それに、この女性は誰だ?
「あら、質問が山ほどある顔ね。 とりあえず、何から聞きたいかしら? 」
「・・・・・・」
「あぁそうだったわね、とりあえず入って来て」
言われるままに受付の中に。すると、
「・・・あー、それはそれとして、あ、あれ、声が? 」
「そりゃそうよ、だって、死んだら喋れなくなるなんて、そんな訳ないじゃない」
「は? そういうものなんですか? 」
「そうねぇ・・・、そういうものかしらね」
そう言うと、頬に人差し指を添え考え込む、赤毛ポニーテールで白金蔓眼鏡の、一見司書にも見えなくもない女性。
「何考えてるんです、貴女は」
「とりあえず何から聞きたいのかしら? 」
「・・・ここはどこか、この札は何か、受付が複数ある意味は、貴女は何者なのか、わた・・・、俺はなぜ若返っているのか、自分はこれからどうなるのか・・・。そんなトコロでしょうね」
「まあまあ、落ち着いて。 そう急かさなくても答えは逃げないわよ」
「で? 」
「まずは、ここはどこかについてだけど・・・」
そう切り出すと、組んでた足を戻す赤毛ポニーテール。
「お願いします」
「端的に言うと、死んでその後の諸々の手続きをする場所ね」
「諸々の手続き? 」
「大雑把に言えば、来世の行き先やらなんやらね」
「・・・あ」
ふと思い当たることがあった。 ここに来る前、おかしな構造の門を潜り、そこで妙な札を渡され、その先にあった屋根のついた改札口のような場所でその札を係員? に見せて、ここまで来た事を。そこから上り坂、下り坂、平らな道の三本が伸びていたことを。
「おめでとう、貴方は来世も人間やれるわよ? 」
「は? 」
「魂は嘘を吐けないから、何をやって来たかは査察すればすぐにバレるのよね」
「スキャン? あぁアレか! 」
「そ。最初にくぐったアレで、対象の生前の罪業の度合いを測ったってワケ」
「それで、道が三本」
「即行で裁きを受けるべき相手が通る道、即極楽往生出来そうな相手が通る道、どちらとも言えない道・・・、この三本ね」
「なるほど、真ん中の道を通ってきたからここにいると」
「正解。まぁ、他のトコに行った人達は管轄外だから、聞かれてもむだよ♪ 」
「全く興味ないんですが」
「あ、そうなの? さて、それはともかく、質問のいくつかは纏めて答えちゃったわね。・・・」
「そういえば。で、なんで距離が近い?? こう、ズイって、グニュって」
いきなり前のめりになって顔がくっつくかつかないかまで寄る赤毛ポニーテール。 ・・・服の下は相当な発育っぷりなのか、西瓜大のゴム毬が押し潰されるような感触が。
「だって貴方、「あ、そんなの知った事じゃないんで。」 むぅ」
途中で遮り、ぐいっと相手の両肩を押して離れさせる。・・・相手は明らかに残念そうな表情だったが。
「で、他の窓口がある理由は? 」
「・・・真面目ねぇ、貴方。 まぁ良いわ、受け付けが複数ある意味だけど、まずここは、寿命よりも長生きした人の受け付けね」
言いながら下を指差し、説明再開。
「長生きした? 」
「そう。後で説明する内容に関係するから先に聞くけど・・・、貴方、来世どうしたいの? 」
「・・・正直、返答に困る。具体的には? 」
「その1、今までの記憶まっ更にして、裸一貫で魂を別の時代へGO! 」
『その1』で人差し指を立て、『GO!』で“ぴゅーん”と擬音がしそうな勢いで上を指差す赤毛ポニーテール、因みに右回り気味な軌道である。
「二つ目は? 」
「貴方の人生を換算したポイントを消費して色々と追加した状態で、他の世界に行ってらっしゃい♪ 」
「・・・は? 」
「は? ・・・って、仕方ないか。こっちに来る人は大概そうなるわよね」
『あー、そうかー』 な顔で納得した赤毛ポニーテール。
「正直言っている意味がわからんのだが 」
「あー、えっと、〇〇を〇〇するRPGとかの二週目引き継ぎみたいなものなんだけど・・・、わかる? 」
「・・・孫やらなんやらに買ってあげた事があるくらいだが、あぁ、あれの事か」
・・・頭をよぎるのは、産まれた意味を知るヤツだったり、 心を探すヤツだったり。
「そう、それよ」
「指を差すな、おい。それで、そのポイントとやらは、どう換算するんだ? 」
「こんな感じ」
“コツコツ”、と壁に掛かっていたボードをラジオのアンテナみたいなもので叩く赤毛ポニーテール。
「うわ・・・、ややこしい計算式だなぁ。・・・あれ? この計算式だと、若死にとか、所謂流れ弾の犠牲者は不利なんじゃ? 」
そのホワイトボードに書かれていることを黙読し、あることに気がついた。
「心配ないわよ? そういう場合は、ちゃんと補正入るから」
「補正? 」
「条件は2つのうちどちらかを満たしている事。
・・・まずは、その人生きていた時代の平均の寿命に対して三割未満しか生きられなかった場合。これは所謂早世・・・、早死にってヤツね」
‘ピッ’と人差し指を立てる。
「二つ目は? 」
「そうね・・・、死の原因が、自殺以外、且つ、寿命死以外の外的要因であること・・・、この2つのどちらかね」
続いて中指を。
「自殺以外なのはあれか、自殺は大概の宗教的にアウトだからか?」
「そういう事かしらね。その意味では心中もアウト。だいたい、そこまで面倒みきれないわよ、現実は甘くないわ、諦めなさい」
「・・・それは当事者に言うべきで、正直俺に言うなとしか」
ただただ困惑するしかない。
「それもそうよね」
「・・・ん? そういえば、外因死は寿命死扱いじゃないのか? 」
そう問うと、また考え込む赤髪ポニーテール。
「そこがややこしいトコなのよねぇ。寿命をアレする連中曰わくなんだけど、
『こちとら寿命の大枠切り分けてるだけで、アレやらコレやらの細かい配置なんか出来る訳がない。そのくせ、死因の発生原因配置までなんぞ出来るか! こちとらンな権限持っとらんわ! 』
・・・ですって」
「は? そういうモンなのか? ならアレか、さっき言った外因死ってのは、他人の糸に当たったせいで寿命の糸が切られたってコトになるのか? 」
「さぁ・・・、そうなるんじゃない? 身も蓋もないコト言えば、
【間が悪かった】、
ってコトかしらね。 神も仏も関係なく、日頃の行いなんて関係なしに」
「・・・納得いかないが、そういうモノならそうだと飲み込むしかないんだろうな」
やや重ためな雰囲気になる。
「・・・んー、こういうアレは私の性に合わないわねぇ。さて、これで他の受付の意味も見当ついたかしら? 」
「一応、な。で、諸々てのは、どんなのがあるんだ? 」
「そうね、ピンからキリまで色々ね」
そう言って指を鳴らすと、目の前にタッチパネル的な物が。
「どれどれ・・・」
・・・そこから暫く、手当たり次第に見ていたわけではあるのだが、
「・・・は? 何だコレ、最近は端から聞いてりゃ難しすぎて何言ってんだかわかんねえ呪文をベラベラ宣うのが流行りなのか?? パッと見ラテンかドイツ語みたいだが・・・」
とか、
「おー、これかぁ。懐かしいなぁ、全巻持ってるぞコレ」
とか、
「・・・ダメだこりゃ、頭痛とサブイボ出てきた。なぁ、口先だけカッコつけで、本質がスカスカな連中が跳梁跋扈する小説やらが今のガキんちょ共の流行りなのか? 」
とか、
「イヤイヤイヤイヤ、千里の道も一歩から。努力の【ド】の字もなく最初から楽すんのはその世界の皆々様に失礼でしょうに、舐めてんのコレ選ぶヤツは? 」
とか、
「・・・ブッ、ハハァハッハッハッ!! なぁにカッコつけてやがんだこの主人公。異端は叩かれるのが世の常だ。どんな力であれ、貰っちまった時点で世間様に後ろ指指される覚悟しとけってんだ」
・・・やら。ちなみに、これはなんだ、どんな能力だ、どんな作品だと問いたりし返したりしているときのセリフを一部抜粋である。
・・・そんなこんなでしばらく経過。
「それで? 何を選ぶのかしら? 」
「・・・とりあえず、コレとコレ、ついでにコレとコレ。ところで、能力の一部変更ってのは可能なのか? 」
「一部だけ? 出来るには出来るけど、何をするの? 」
「ああ。これなんだが、本来はエネルギーを打ち込んだ対象に生命を宿らせる能力なんだが、【生物に変える】って部分を、【急速に成長させる】って能力にしてくれ。あとは、来世の性別は、任せる。で、能力は、魔法的なソレに置き換えてくれ。一気に使えるようになるんじゃなくて、練習や訓練で段階的にあがるようにしてくれ」
「わかったわ。ちょっと待ってて」
そうしてしばらく待つ、そして。
「よし、完了! 今からあなたの魂に刻むから、少し動かないでね」
そう言うと、自分の周りに何層か重なった八角形が現れた。
「なんだこれ」
「今からパラメータ書き換えするから、少し動かないで」
大事な事なのか、二回そう言うと、真剣な表情でカタカタキーボードを叩き始めたので、言われたまま黙ることにした。
段階的に妙なむず痒さを感じながらしばらくされるに任せること十数分。書き換えは終わったようだ。
「・・・はいおしまい、後はそこの扉の向こうへ行ってちょうだい」
「・・・で、本当に使えるのか? 」
どうしても半信半疑。
「ま、そう言う気持ちもわからなくはないわね」
言われ慣れてるかのような反応な彼女。その直後、隣から炭酸が破裂したような音がした。
「・・・は?? 」
「・・・また、馬鹿がいたのね」
いきなりの音に呆然な俺と、頭痛でも発生したのかこめかみをぐりぐりと押さえる赤毛ポニテ。・・・いい加減名前聞くべきなのだろうか、どうせ転生したらすぐ忘れるだろうけど
。
「また? 」
「・・・えぇ、早死にしてこっち来た連中の中に時々いるのよ、ワケのわからないコトを言って、自分の存在の容量と強度以上の諸々を要求した挙げ句、“ああ”なるのが」
心底呆れ果てたような表情かつ態度である。
「訳のわからないコト? 自分の存在の容量と強度以上? 」
「支払う数値と刻む時の負担は必ずしも比例しないって言うか、さっきのリストの異能系の項目、一つ一つに三角グラフと数字付いてたでしょ? あれ、【支払う数値】と、【転写する際の精神・肉体への負担】、【再現可能な能力の上限】、【能力の戦闘転用時の実質的力量値】、・・・の4つの要素を表してるわけなんだけど、意味通じるかしら? 」
「・・・そういやちぐはぐだったな。安いのにA判定が2つ付いてたり、バカみたいに高いのに明らかに習得難度低い奴とか」
「そう。・・・後付けであれこれ付加するのは、例えるなら身体に色々付け足すようなモノかしらね。外見変更は外科整形手術、能力追加は彫り物入れるような感じかしら」
「彫り物かー、それは痛い」
「で、何をトチ狂ったんだか、ガキんちょがカッコつけて初めての彫り物で全身タトゥーするような選び方をする、言っちゃ悪いけどバカが何人もいたのよ」
「・・・なるほど、それは阿呆だ」
「でしょう? 」
「全くだ。浮かれて死んでりゃ世話ないだろ。で、もう終わりなのか」
「そうね、もう終わりね」
どこか残念そうな風な赤髪ポニテ。
「・・・それじゃ、行ってくるわ」
「ええ、良き来世を」
「おうさ」
話を終わらせ、さらに奥の扉の中へ。そうして、生まれ変わりの手続きは終わった。
・・・TO BE NEXT life・・・,
今回の話は如何でしたでしょうか? ・・・この話を思い付いたのは8ヶ月程前、とある方の作品を読んだのがきっかけでした。それから思い付いた時にちまちま積み上げ、要約投稿となりました。
おそらく色々突っ込みたい箇所はあるでしょうが、別に強制するつもりもなく様式が固定されて在る訳でもなし。気に入らんなら報告せずに勝手に読むのを止めて構いませんので。
それでは。