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2話目投稿です。

 本日二度目の目覚めを迎えた。

 ──しかし、今日は厄日か… 目を開けると、視界に木目の天井が目に入った。どうやらどこかに寝かされていたらしい。


 寝起きは良い方なのですぐに意識がはっきりしてくる。自分にかけられていた布団をどかし、立ち上がる。二十畳ほどの和室らしい。部屋の中は薄暗く、窓の外は闇に包まれている。


「うぅ~、ひどい目にあった」ひとりごちる。


「ごめんなさい…」


 僕の独り言に蚊の鳴くような声が答えた。

 もう一度見回すと、暗がりにぽつんと正座している女の子。まるで座敷わらしだ。


 正直不気味だ。

「ごめんなさい」と、女の子はそのままずずっとにじり寄ってくる。

──不気味度が二〇%増した。


「謝る前に電気つけてくれない?」


…怖いから、という言葉は飲み込んだ。


「あっ、気がつきませんでした」


 女の子は一度離れると壁にあるスイッチを押した。彼女は首を絞めてくれた娘だ。今は巫女服ではなく、普段着に着替えている。


「いきなり逃げてしまってごめんなさい」


 正座をして再度にじり寄ってくる。



「謝るのはそっちかよ」

「はぃ?」


 僕のツッコミに女の子はきょとんとする。


  はて? 首を絞めてきた時と雰囲気が違う。


「──もしかして、二重人格者とか?」

「いいえ」

「それじぁ、双子?」

 この質問にも首を振る。

「う~ん、もしくは… つーか、キミ誰?」

「申し遅れました。山岡このみです」


 女の子は深々とお辞儀してみた。


「ご丁寧に、こちらこそ。楠木雅史です」


 僕もつられて深々とお辞儀する。


「つーか、なんかお見合いみたいだ」


「えっ、そんな… でも、言われてみればそうかもしれないですね~」


 僕の軽口にこのみという女の子はのほほんと答える。



「何を口説いているのよ!」


 バンッ!とふすまが開いてこのみと同じ顔の女の子が乗り込んで来る。


「あれ? お姉ちゃん」

「お姉ちゃん? …あれ、でも双子じゃないって」

「だからお姉ちゃんですよ」

「双子のお姉ちゃん?」

「いいえ、年上のお姉ちゃんですよ」


 お姉ちゃんは普通年上だ。


「だーっ、そんなことはいいから」


 新しく乱入してきたほうの姉(?)は地団太を踏む。


「お姉ちゃん。まさか、ふすまの裏で聞き耳立ててたの?」


 このみの指摘に姉(?)は「うっ」と詰まる。


 視線をそらし、「心配だったのよ」ボソリとつぶやく。

「そんなことより」ビシッと僕を指す。


「この色情魔!」

「誰が色情魔だ! まだ何もしてないだろ」


 ああ、僕の首を絞めたのはおそらく、…いや、間違いなくこいつだ。

「まだってことは、これからするつもりなのね。この変質者! 女の敵!」


 初対面の女の子に何でここまで言われなくちゃならないんだ……

 彼女はさらに言葉を続けるが、それまでボーと見ていたこのみが、納得したようにポンと手をたたく。


「仲良しさん?」

「「どこが?」」


「ほらぁ、息ぴったり」

「違うのよ。これは… このみが心配だからであって…。ほら、あなたも何か言いなさいよ」


 何かねぇ… 彼女を覗くと照れと怒りがミックスしたような表情。


「顔赤くなってるぞ」

「誰がそんなこと言えって言ったのよ」怒りの割合が増す。

「いや、だって『あなたも何か言いなさいよ』って言ったから」


「だからってそんなこと言うことないでしょ」


 ほかに何も浮かばなかったのだからしょうがない。それだったら最初から『何か』って言うなよ。


「やっぱり仲良しさんだ~」と、このみは一人納得しているし…


「ああっ、いいからこのみはお母さんでも手伝ってきなさい」


「は~い」と、このみは逆らわずに部屋を出て行く。


 彼女はこのみが完全に出て行ったのを確認すると、僕を凝視する。


「あなたって、井上さん(後で聞いたところによると土産物屋のおばさんのことらしい)の言っていた宿探しの人よね。──何しにこの村に来たの?」


「──土産物屋のおばさんに酒を飲まされて、 気がついたら終電がなかったから…」


「あ~、お気の毒様。井上さんしつこいから。──それより、S駅まで行く予定だったんでしょ。何しに行くつもりだったの」


「ん~、観光だよ」


 S町の駅はここと違って、新幹線も停まる観光地だ。観光目的で何の不思議もない。


「本当に?」彼女は嘘かどうか見定めるように凝視する。

 何かこの子の気になることでもあるのだろうか。


「何だ、疑うのかよ。お姉ちゃん」

 僕は肩をすくめ、おどけるように答えた。


 本当の目的は別にあるが、本当のことを言う必要はないだろう。


「別に疑ってないわよ」

 僕の表情からは言葉の正否が見極められなかったようで、それ以上突っ込んでこなかった。


 そこで、僕は話題を変えてみる。


「ふ~ん。それより、双子?」

 見れば見るほど二人はそっくりだ。性格は正反対っぽいけど。


「あの子は3つ年下よ」

「いくつ?」

「十五」

「どっちが?」

「あの子が」

「へ~。ということはお姉ちゃんは十八歳で高三? お姉ちゃんは童顔だな」

 妹のほうは十五歳なら年相応だろう。


「…山岡美琴よ」

「へっ?」

「お姉ちゃんなんて呼ばないで。あなたの方が年上でしょ」

「分かったよ。美琴ちゃん。僕は楠木雅史だ。よろしく」

 盗み聞きしているときに聞いていたかもしれないが、一応名乗っておく。


「……」


 美琴は一瞬何か言いかけたが、結局何も言わずに部屋を出て行った。


「何なんだ、一体」


 何を考えてるんだか……

 気が短くて怒りの沸点も低い娘だな。


 気を取り直して、部屋の片隅に置いてあったカバンから携帯を取り出す。


 時刻は九時。


 ──さて、どうするか。


「こんばんは」

 僕が部屋を出ようか悩んでいると、声が聞こえた。


 おにぎりを載せたお盆を手に、妹このみが現れた。


 顔は同じだが雰囲気で違いが分かる。


「ごめんなさい。急だったからこんなものしか用意できなくて」


「いやいや。そんなに気を使わなくても。用意してもらって、申し訳ないんだけど。僕ご飯食べられないんだ」


「そうなんですか? もしかしてパン派ですか?」


「ん~、体質というかなんと言うか…… パンでもなんでも固形物が食べられないんだ。胃が受け付けなくて。──だから申し訳ない」


「へ~、豆腐なんかも駄目ですか。ダイエットに便利ですね」


 いきなり逃げ出すような子だから、もっとオドオドしているかと思った。

 しかし、このみは僕の感想にこのみは唇を尖らせる。


「ちょっと前に近所をうろついていた変な人がいたんですよ。それでその人かと思ってちょっとびっくりしちゃいました。それにわたしの友達が昨日から行方不明になってしまって… お姉ちゃんとも仲良しだった子なんですけど……」


「それで、あのお姉ちゃんが苛立ってた訳か」

「う~ん。確かにそれもありますけど、それだけじゃないと思います」


 このみは部屋の外、今ここにはいない姉を思い、口を開く。


「お姉ちゃんがあんな風にムキになるのって珍しいんですよ」

「そうなの?」

「はい。家族以外の人とは距離を置いてるっていうか… あんなにムキになって怒鳴らないですもん。いつもは問答無用で殴り倒して、後は無視しますから」

「デンジャーなお姉ちゃんだな」

「でも本当は優しいお姉ちゃんですよ」


 少し言い過ぎたと思ったのか、慌ててこのみは弁解する。


「そうだ、楠木さん。お姉ちゃんと結婚してずっとこの村にいるっていうのはどうですか?」

 僕が絶句したのは言うまでもない。


 美琴の考えも分からないが、このみの思考回路もぶっ飛んでいるようだ。


続きは明日投稿予定です。

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