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全5話くらいの予定です。

実は昔書いた別の話を投稿しようと思ったのですが、データが壊れていたのか、開けませんでした。

という訳で、これも昔書いたやつです。

「う~っっつっ」


 僕、楠木雅史はガンガンする頭をおさえ、目を覚ました。

 ぼやけた焦点できょろきょろと見回す。


 ここはどこだ?


 見覚えのない場所。どこか雑貨屋っぽい造り。


「おやっ? 目を覚ましたかい」


  僕のうめき声を聞いたのか誰かの声がした。

 声のほうへ振り向いてみると人のよさそうなおばさんが僕の顔を覗き込む。


「はぁ…」


 ぼやけた頭のままとりあえずうなずく。


「びっくりしたよ。いきなり倒れるんだから」


「はぁ、すいません」


  反射的に謝り、状況を把握しようと脳みそをフル回転させる。


「終電はもう出ちゃったよ」


 …終電……


 その言葉で思い出す。


 ここはT県K村。この三つ先のS町の駅へ行く予定だったが、電車の本数が一日六本というローカル線を乗り継ぐ道のり。しかも電車の乗り換えが二時間もあった。


  次の乗り換え電車待っている間、暇を持て余し、雑貨屋のようなこのお土産屋で店主であるおばさんにお茶をご馳走になった。


  行楽の季節はハイキング客などでそれなりに賑わうらしいが、その季節から外れている今は閑散として、雅史しかいない。

  久しぶりの客、もしくは話し相手として強引に捕まってしまい、引き止められた。


 おばさんの話は天気の話から田舎の過疎化、孫への愚痴へと繋がり、かなりの時間喋り続けた。

  その流れで断りきれず、日本酒をしこたま飲まされた。


 酒に弱いというのに…


 田舎の人はなぜこういうことに押しが強いのだろうか。何度断っても勧めてくる。

 自分では親切でやっているつもりだからなおさらたちが悪い。



  窓の外はすでに夕暮れ。


 仕方なしに、そのおばさんに宿を紹介してもらった。


 アンニュイな気持ちに浸りつつ本日の宿まで酔いを醒ましながらとぼとぼと歩く。


 ──そこは神社だった。


「あれ? おかしいな。でも、ここで合っているはずだし…」


  おばさんに描いてもらった地図を見るまでもなく、ここまでは一本道だから迷いようもない。

 周囲に他に家があるが、見るからに普通の家だ。


「しょうがない、誰かに聞いてみるか」


 神社の境内では女の子が掃除をしていた。

  中学生だろうか。外見的には十四、五歳くらい。艶のある長い髪に、普通よりぱっちりとした目で、全体的に可愛らしい感じを醸し出している。さらに巫女服だ。


  ──まあ、ここは神社だし、不思議は無いのかもしれないけれど……


 初詣以外で初めて見た。


 手に持ったほうきで熱心に掃いており、こちらに気づいていない。


「こんにちは」


 右手を上げ、フレンドリーに声を掛けた。


「えっ…」


  僕の声にその子はびくっと振り向く。が、こちらを視界に認めた途端、脱兎のごとく走り去ってしまった。ウサギというよりネズミかもしれない。


 あっけにとられ、右手を上げたまま呆然と立ちすくむ。


「あの~~~」


 朗らかに尚且つ親しみをこめて声をかけたつもりだったが、何がいけなかったのだろうか。


 ガックリと肩を落とし、自分の存在意義について検討していると、女の子が去った方向からドタバタ音が向かってくる。



「この~~~!」


 振り向く間もなく、衝撃が背中を突き抜け、その勢いのまま僕の体はこらえようとした自分の意思を無視して前方にダイブする。


「うぎゃ~~っ。痛って~~」


 受身をとれず強打したあごをさすりながら、後ろを振り向くと女の子が仁王立ちでこちらを睨みつけている。

 どうやら背後からこの子が蹴りをくらわしてきたようだ。


 先程ぱっちりと表現した目が吊り上り、可愛らしさは微塵もない。


「何するんだよ!」


 こちらも負けずに睨み返しながら立ち上がる。


 しかし、彼女は怯まない。


「このみに何したのよ! この、ヘンタイ!」


「誰がヘンタイだ!」


「知らばっくれるんじゃないわよ。さあ、吐きなさい」


 目を怒らせ凄んでくる。


 そもそもこのみって何だよ。

 好み、木の実、この身…、いったい何のことだ。


「しゃべらないんだったら、痛い目見るわよ」


「…すでに痛い目にあっているんだけど」


 小声でボソリと呟いたのだが、彼女は聞きとがめた。


「何理屈言ってるの!」


 いや、屁理屈どころか正当な主張だと思うんだけど……


 僕の主張は全く受け入れられず、彼女は肩を掴みカクンカクンと揺さぶり始めた。


「ちょっと、やめてくれ」


 手を外そうとするが、異様に力が強くて外せない。


 せっかく酔いが醒めかけてきたのにまた気持ち悪くなってきた。


「あの…… お姉ちゃん……」


 この馬鹿女で気がつかなかったが、誰か他にいるらしい。少し離れた物陰からか細い声が届く。


「大丈夫よ。今からこいつを半殺しにしてあげるから」


 肩の手を首に回す。


「これじゃ、半殺しどころか全殺しだよ」と言ったつもりだが、喉を締めつけられが声に出ることはなかった。


  そうして僕の意識は沈んでいった。



予約投稿した分はこれで終わりです。

後は土日にまた投稿します。


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