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シーユーレイター・アリゲイター、インアホワイル・クロコダイル 2

 私は台所に行って冷蔵庫の中を覗いてみた。その間にもラジカセは歌い続けている。冷蔵庫の中には昨日作ったらしいサラダが入っていた。だけど私にはそれを作った記憶はなかった。

「こんなものをいつ作ったのかしら」

 きっと記憶ねずみがその記憶を奪っていってしまったのだ。たぶん私が寝ている間だろう。

「昨日の夕方だよ。君は昨日の夕方、本屋に行く前にサラダを作っていたんだよ。帰ったらすぐに食べられるようにね。ワインも冷やしたままだし、戸棚にはフランスパンだって残っているよ」

「どうして結局食べなかったのかしら?」

「君は帰りにマクドナルドでフィレオ・フィッシュを買ってきたんだ。だから食べる必要がなくなったんだよ」

「ああ、思い出したわ」

「君はMサイズのコカ・コーラを飲みながら帰ってきた」

 コクリ、と私は大きく頷いた。神様の言葉と自分の記憶の一致に納得したのだ。

「そうそう、でもね、仕方なかったのよ。ああいうものって、突然食べたくなっちゃうのよ。あれってね、神様、どう食べたって不味くはないの、そういうものなのよ。それでね、そういうファスト・フードとかインスタント食品って突然食べたくなっちゃうの」

「そういうものなのかい?」

「そういうものなの。誰が食べたってそれなりに満足出来ちゃうの。とびきり美味しいってわけじゃないの。そりゃあたまにキライな人っているだろうけど、そういうものなのよ」

「大衆的味つけ」

 神様は妙な文学的表現を使った。何となくこの神様は可愛げで、ずいぶん茶目っ気があるなと思った。神様は本当の、あるいは本当に神様なのだろうか、神様は本当に存在するのだろうか?

「そうよ、カップヌードル的味付け、マクドナルド的味付け」

「ボンカレー的味付け、ポテトチップス的味付け」

 どれもジャンク・フードみたいなものだ。私はクスクスと笑った。何となく神様は可愛かった。神様もクスクスと笑った。

 ラジカセは歌うのを止め、すぐに別の曲を歌い出した。その空白の時間はまるでラジカセの息継ぎだった。

 今度はラジカセの中でビーチ・ボーイズがコンサートを始めた。ラジカセの中にあるどこかのスタジアムで、ビーチ・ボーイズが歌っている、興奮の絶頂にあるファンが観客席から溢れんばかりに跳ね、あるいは揺れている。


よし踊れるぞ。ダンスだ、踊れ、踊れ。さあホントにホットなビートだぜ。

これがピッタリだ。ダンス。ダンス。ダンス。この周波数でピッタリだ。

ホントにホットなビートだぜ。ダンス。ダンス。ダンス。ホントにホットなビートだぜ。

冴えない気分のときなんかは彼女を傍らにして、さっさとそんなものは振り払うんだ

ラジオがうまいことやってくれるのさ


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