エピローグ「それでも、共に」
風が、穏やかに流れていた。
世界は、静かだった。
あの日の戦いが嘘のように。
街には人が戻り、笑顔が戻り、
日常が、ゆっくりと再び動き出している。
カイゼルは、丘の上に立っていた。
空を見上げる。
青い空。
ただそれだけなのに――
どこか、懐かしい。
「ここにいたんだ」
声。
振り返る。
ルミナがいた。
少し息を切らしながら。
「……来たのか」
「うん」
隣に立つ。
自然に。
「探したよ」
「……そうか」
短い会話。
だが、それでいい。
沈黙。
だが、不快じゃない。
「ね、カイゼル」
ルミナが空を見る。
「これから、どうするの?」
その問い。
少しだけ考える。
「……分からない」
正直な答え。
「でも」
ルミナを見る。
「一人じゃない」
それだけで、十分だった。
ルミナは笑う。
あのときと同じように。
「うん」
風が吹く。
穏やかに。
「……行くか」
カイゼルが言う。
「どこに?」
「どこでもいい」
歩き出す。
ルミナも並ぶ。
同じ歩幅で。
少しだけ近い距離で。
触れそうで、触れない。
でも――
離れない距離。
「ね、カイゼル」
「なんだ」
「これからも、よろしくね」
その言葉。
少しだけ、間を置いて。
「……ああ」
短く答える。
だが――
それがすべてだった。
世界は救われた。
だがそれ以上に。
一人の少年は、“人であること”を選んだ。
そして――
その隣には、必ず少女がいる。
神でもない。
竜でもない。
ただの人間として。
それでも前に進む。
二人で。
これからも。




