最終章(後編)「終わりと、始まり」
空が砕ける。
暗黒龍の咆哮が、世界そのものを震わせた。
大地が裂け、空間が歪む。
その中心に――
カイゼル・ノクス。
そして、ルミナ・セレスティア。
「……行くぞ」
低く、確かな声。
「うん」
背に触れるルミナの手。
光が宿る。
温かい。
それが――
カイゼルを“人でいさせる”。
踏み込む。
空間を裂く速度。
暗黒龍の巨体へ。
爪。
振り下ろされる。
回避。
同時に斬撃。
――浅い。
「……足りない」
だが止まらない。
次。
次。
次。
連撃。
すべてを繋げる。
ルミナの声。
「右!」
瞬間、身体が動く。
回避。
致命の一撃をかわす。
「今!」
踏み込む。
斬る。
確かな手応え。
(……いける)
一人では届かない。
だが――
二人なら。
暗黒龍が咆哮する。
魔力が膨れ上がる。
世界を飲み込むほどの力。
「カイゼル!」
ルミナの声が揺れる。
「大丈夫だ」
振り返らない。
だが確信している。
(……いる)
背中に。
「……全部は使わない」
自分に言い聞かせる。
境界線。
越えれば終わる。
だが――
「ここで終わらせる」
力を解放する。
制御された限界。
光と闇。
神と竜。
その狭間。
「――ッ!」
踏み込む。
加速。
暗黒龍の核へ。
爪が迫る。
避けない。
斬る。
ぶつかる。
衝撃。
世界が揺れる。
「カイゼル!!」
ルミナの叫び。
その声。
その瞬間――
力が、繋がる。
光が強くなる。
「……今だ」
全てを込める。
一撃。
――貫く。
静寂。
暗黒龍の動きが止まる。
そして。
崩れる。
巨大な体が、ゆっくりと光に変わる。
消えていく。
世界を覆っていた闇が、晴れていく。
空に光が戻る。
風が流れる。
「……終わった」
誰かが呟いた気がした。
カイゼルは、その場に立っていた。
剣を下ろす。
(……まだ)
意識がある。
感情もある。
(……人だ)
崩れ落ちる。
その体を――
ルミナが支える。
「カイゼル!」
声が近い。
温かい。
「……終わったな」
小さく笑う。
ルミナは涙を浮かべている。
「……うん」
その一言。
すべてが、そこにあった。




