きらきらとずたぼろ
とんとんとん。
時たま星が降りてきて村人の誰かのドアを叩く村がありました。
星は真夜中に玄関を叩いてこう言います。
「あなたのきらきらとあなたのずたぼろをちょうだいな」
きらきらとずたぼろを差し出すと、星は代わりに星の道しるべをくれました。
一晩だけ、真っ暗でも不可能なことでもどこに行ったらいいか示してくれる不思議な宝物です。
村では星が訪ねてくる日は大事なお祭りになりました。
空に流星が流れると、旅している星がやってくると思って星迎えの歌を歌いました。
けれど、欲張りな王様に聞き付けられてある時から星がくれたものを王様が取り上げるようになってしまいました。
王様は星の道しるべを戦争に役立てました。
見えない道を見つけ、不可能な戦争に勝つやり方を見つけました。
村では、誰かが星の贈り物を隠していないか、王様の家来にいつも見張られ、村の人は心が息苦しくなっていつしか星が訪ねてきても差し出せるきらきらがなくなってしまいました。
業を煮やした王様は星を捕まえようとして星はやってこなくなり、村の夜空も暗くなってしまいました。
星の道しるべは手に入らなくなり、戦争に負けて悪い王様の家来はいなくなりました。
けれど兵隊にするために連れていかれた人は戻らず、村は貧しいままでした。
ある夜、闇夜の中を一人の母親が飢えて死んでしまった赤ん坊をまっくらな夜空に掲げました。
そして、かつては楽しく歌われていた星迎えの歌を歌って祈りました。
「わたしのきらきらとわたしのずたぼろを差し上げます。どうかこの子を星の明るい世界に連れていって上げて。こんな暗い世界の冷たい土の下に埋めるなんてできない」
きらり、となにかが暗闇で光りました。それは古い割れた鏡でした。
近くには手紙や写真、破れた花柄の服や片方だけの手袋や壊れたおもちゃがありました。
それらはかつて捧げられたずたぼろでした。
手に取ろうとするとコツンと固いものに遮られます。
それはずたぼろでできた、暗い夜空に続く黒い階段でした。
母親は階段を赤ん坊を抱えて踏み出しました。
どこかで途切れて落下するかもしれません。目には見えず、どこへ続いているかもわからないのにためらいませんでした。
自分の子どもをもう悲しみのない空の世界へ連れていってあげることに必死だったのです。
階段を上がるごとに、暗かった空に星のようなきらきらが増えていきました。
星ではなく、かつて村人が捧げたきらきらとずたぼろが星の代わりに光って暗闇の階段を進む親子を見守っていました。
村人たちは、子どもを失った悲しみで母親がどこかで死んでしまったのだと思いました。
彼女が子どもを連れて夜の階段を登り、地上からいなくなってしまったことを誰も知ることはありませんでした。
〈おわり〉




