かごの中の鳥
ーー時刻は20時。ひなたとその恋人はひなたの部屋で未来の事を話していた。
暗がりの中廊下に佇み、 2人の会話を立ち聞きするその悪魔の存在にも気づかずに。
(さぁ…クライマックスの時間だ…)
(静かに扉をノックする)
「お嬢様、よろしいでしょうか。大事なお話がございます」
「大丈夫よ、蓮。どうかした?」
部屋に入り
「失礼します。実は…お茶を淹れすぎてしまって…」
「あら、じゃあいただこうかしら?ね」
「ぜひ…お二人のために特別なブレンドを…それと、お嬢様。これからの話、聞いていただけますか」
「えぇ、どうしたの?蓮」
「実は…お嬢様のことを、ずっと……お慕いしていました。許されないことだと分かっていながら」
そういうと蓮はゆっくり立ち上がり、窓際に歩み寄る
「だから、これ以上見過ごせないんです。お嬢様、本当の自由を手に入れましょう」
そして徐にカーテンを引く
「外は危険です。この世界には、お嬢様に相応しくない人間が多すぎる…私が守り抜きます」
その声はどこか低く 冷たいものだった。
そして今度は ひなたの恋人に歩み寄る
「気づいたか。お前もまた…お嬢様の周りにいる書虫の一つに過ぎないんだよ」
そしてひなたの恋人の胸ぐらを掴んだ。
「怖いかい?でも逃げられないよ?君の役割はここまで、あとは消え去るのみ」
「蓮!彼を…どうするの!!」
ひなたが問おうと蓮は冷酷な笑みを浮かべる。
「心配無用です。ただの掃除です」
淡々と語る蓮はポケットからナイフを取り出した。
「邪魔者は片付けるのが一番効率的だろう?」
そして蓮はナイフを構える
「さあ、ショータイムだ!お嬢様の前で醜く散ってもらうよ、君の役目は終わったんだ」
その既の所でひなたが声を荒らげた
「待って…蓮…わかった。わかったから…私の話を聞いて」
それを聞いた蓮は動きを止めた
「…ほう。何がわかったと言うんだ?言い訳か、それとも交渉か?どちらでも聞くぞ」
ひなたは決意して断言する
「彼とは別れます。だから彼を離して…」
それを聞いた蓮は彼を離した
「本気か?まあいい、もし嘘なら……今度こそ容赦はしない」
そういいながら彼に再びナイフを向ける
「うん…私外にもでないから…彼とももう、会いませんから…」
彼を見つめ寂しそうな顔で呟いた
「わかった。だが証明しろ」
再び彼に向かって紙を差し出す
「この場で誓約書を書け。二度とお嬢様に近づかないと」
彼は一瞬ひなたの方を見やり 震えながら契約書を書き始めた。
「よくできた。これで自由だ。二度と姿を見せるなよ、次はない」
そう言われた彼は怯えながら屋敷を後にする
「やれやれ(ドアを閉める)お嬢様、これでようやく二人きりになれましたね」
そういうとひなたに振り返り不気味な笑みを浮かべた。
「怖がらせてしまい申し訳ありません。でもこれで本当の自由が手に入ったんです」
そういいながらゆっくりひなたに近寄った
その手には首輪が握られている。
「怖がらないで。私たちの絆は永遠です。これからはずっと一緒だよ、ひなた」
そういって私を抱きしめる彼は とても幸せそうで、私の首に首輪を巻き付け嬉しそうな顔をしている。
首輪に繋がる鎖はしっかり蓮が握っている。
私はもう彼から二度と 逃げられることはないのだろう。
そう考えながら私はゆっくり 瞼を閉じた。