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さようなら
ーー薄暗い廊下で1人立ち尽くす。
「やっと眠ったか。さて、準備開始だ。全てを壊し、全てを作り直す時がきたんだ」
暗闇に消えていく蓮。
そしてひなたが寝ている寝室に 静かに忍び込んだ。
「可愛い寝顔…」
ひなたの頬をなで呟く
「これが最後かもしれない。でも、後悔はしない。お嬢様のためなら、どんな罪でも背負う」
そういいながら、忍ばせていたナイフをひなたに振り上げた。
「…ああ。やっぱできない……」
そのナイフを下に落としてしまう。
そして見守るようにベッドサイドに立つ蓮。
「本当にごめんなさい…でも、これ以外の選択肢はないんだ。さようなら、そして新しい始まりへ…」
虚ろな目でそう呟くと自身の荷物をまとめ始めた。
「これで終わりだ。全て忘れるんだ。私以外の全てを、ね」
窓際に立ち、月明かりを浴びる。
「もうすぐ夜明けだ」
そう呟いた彼はひなたの方を振り返った。
「最後の挨拶を……愛してました、さようなら」
彼は荷物を纏めて暗がりの廊下を歩き、屋敷を後にした。