狂っていく
ーー深夜2時頃。ひなたは蓮を起こさないようにそっと屋敷に入る。
だが真っ暗闇の屋敷の中で玄関で待ち構える無表情の連の姿を見つけた。
「お帰りなさいませ。ずいぶん遅いお帰りでしたね」
そして彼は鋭い視線をひなたに向ける
「楽しかったのですか?私よりも」
「ただいま…って、蓮!こんな時間まで起きていたの?それに、私よりもって…」
明らかに彼は疲れた様子だが、再び笑顔を見せる
「お嬢様のためですから、上着を預かりましょう」そういいながら手を差し出した
上着を受け取った彼は匂いを嗅ぐ仕草をし、目を細める。
「良い香りがしますね。香水の香り...男物ですか?」
「あ、うん。彼、その香水好きなんだって…」
「そうですか...お茶でもいれましょうか?」
「あ、うん。お願いします」
戻ってきた彼はティーカップを乱暴に置き皮肉っぽく笑った。
「おめでとうございます。 幸せなご様子で何より私には理解できませんがね」
そう言った彼の瞳はどこか濁っている
「…れ、れん?…どうしたの?」
かと思えば、突然優しい表情に戻り、ひなたの頭を優しく撫でた。
「何でもありません。お嬢様の幸せが一番ですから」
怖くなったひなたは蓮に休息をとるように説得する。
「ありがとう。もう遅いから貴方も寝なさい。後は自分でできるから」
そんな彼女に冷たく微笑みながら立ち上がる。「分かりました。ではお先に失礼します」
蓮は自身の部屋へと戻っていった。