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本性

翌朝。


蓮が寝室のカーテンを開く。

朝日が差し込む中、ベッドサイドに彼がそっと立っていた。


「おはようございます。お嬢様、今朝は特別な朝食をご用意しました。お目覚めになりましたらお召し上がりください」


「おはよう、蓮。いつもありがとう」


眠い目を擦りリビングに行く。


「こちらへどうぞ」


テーブルは綺麗にセッティング済みで 彼が軽く椅子を引いた。


「今朝のメニューは特製パンケーキです。甘い香りで目覚めるのも悪くありませんよね」


ニッコリと私に笑いかける彼。


「わっ美味しそう!いただきまーす」


甘い香りに目は完全に覚めて1口食べようとした私は、パンケーキを見てふと思い出した。


「そういえば彼もパンケーキ好きなんだ。蓮はお料理上手だから彼にも食べさせてあげたい 」


そういうと蓮は、手にしていたフォークを落とした。


「あ……失礼。」

「そ、そうなんですね。光栄です。よろしければ、レシピを教えましょうか?」


その言葉にテンションが上がり私は食いついた。

「え!いいの!?教えて教えて!!」


「はい、喜んで」

そう言うと彼はメモ帳を取り出し的確に教えてくれた「まずは卵を泡立てて……」

書きながらら密かにインクの量を増えている

「これで完璧に作れるはずです」

彼が私にメモ帳を手渡す。


「わぁー!ありがとうっ!蓮って私のお母さんみたいだよね」


「母、ですか...」

そういうと彼の動きが止まり、咳払いをした。

「お褒めいただき恐縮です。お嬢様のためなら、何でも致します」


「さっそく、彼に作ってあげなきゃ」


ウキウキしながらメモ帳をポケットにしまう。


そんな私をよそ目に彼はさりげなく距離を取り、窓の外に視界をやる。


「素敵なお考えです。きっと喜んでくださるでしょう。でも…私ほど上手くは作れないだろうな」


「ん?なにかいった?」


そういうと いつもと変わらぬ笑顔で、ニッコリこちらに視線を戻した


「なんでもありませんよ。お嬢様」


「ふふ…彼もお料理は上手なんだよ?蓮ほどじゃないけどね」


そう言うと眉間にしわを寄せた彼はふっと深呼吸をし、またいつもの笑顔に戻った。


「そうですか。素晴らしい才能ですね。」


そして、私の指輪に視線を向ける。

「本当に、お似合いですね。お嬢様の幸せが、私の最大の喜びです」


そういうかれの手は、無意識なのかこぶしを握る握る手も声も微かに震えているように感じた。


私はそれに気づき話題を変える。

「れ、連は優しいね!顔もかっこいいし!」


そういうと彼は目を見開き、少し沈黙した後顔を赤らめ視線を逸らす。


「……そ、そんな、もったいないお言葉です。私など、お嬢様の足元にも及びません」


彼の顔色にほっとし話を続けた。

「謙遜しなくていいよ!」

そして本題に入る。

「それと……また悪いんだけどデートの支度手伝って貰えない?」


すると彼は笑顔でクローゼットを開けて、いつもの様に服を選んでくれる。


「かしこまりました。今度はどのような雰囲気に?」


「うーん、そうね。……この指輪に似合う服がいいわ」


彼は笑顔でクローゼットの中から 1枚のワンピースを差し出す。その声はどこか震えていた。


「承知いたしました。では、このワンピースなどいかがでしょう。お嬢様の美しさを引き立てるはずです」


「わぁ!素敵……さっそく着てみるわ!ありがとう!」


「どういたしまして、お嬢様。とっても素敵ですよ、私の目に狂いはありません」

そう呟いた蓮の瞳はどこか悲しげだった。

蓮はふと時間を確認する。

「もう出かける時間では?楽しい思い出を作ってきてください。」


そういって深々と頭を下げる蓮。


「うん!行ってきます!!」

私は彼に会いに行くために、屋敷を後にした。


ドアまで見送ったあと一心は ドアが閉まる瞬間、表情を一変させる


「なぜ私じゃないんだ...!なぜだ!!!」


叫びながら壁を何度も何度も殴りつけ、手が血の色に染まり始めた。


「そんなにあの男がいいのなら……...二度と戻ってくるな……」

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