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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

テンシ・デンキ・テンシ!

最初は練習程度の軽い作品にするつもりだったのですが、思いのほか筆が乗り、これはここに載せてみたいと思って出しました。拙作ですがどうぞ。

デンカイは転がった電気部品を足で退けながら、地下街をぶらぶらと歩いていた。


あちらこちらから吹き出す高温の煙で、辺りは酷く蒸し暑い。手袋に付いている電子タブレットは、気温35℃を指していた。その上、デンカイはゴム製の防護服で身体を覆っているのだから、身体はまるでサウナに居るように感じられた。今すぐにでも脱ぎ去ってしまいたいが、髪の毛が全部抜け落ちるのは勘弁なので仕方ない。


しかし、機械達はそうもいかないようだ。デンカイは地面に転がる、すっかり錆びついたロボットの頭を拾い上げた。


念の為、後頭部を剥がして中を見る。やはり、内側まで錆が伝播して使い物にはならない状態だった。


穴場かと思いきや、とんだ落とし穴だな。力任せに頭部を投げ捨て、デンカイはため息をついた。


ゴミ山の中から、どれだけ希少な素材や部品をどれだけ良い状態で掴めるか、ジャンクハンターにはそれが大切である。同業者も増え、長年の仕事場では採算が取れなくなってきたデンカイは、新しい宝島を探していた。少なくとも、今回の旅は失敗のようだ。


デンカイは踵を返した。周囲は霧が濃く、道も入り組んでいる。深入りするリスクに対して、想定できるリターンがあまりに少ない。このザマでは期待するだけ無駄だと考えてのことだった。


「全く、これじゃあ電車賃分丸々赤字じゃねえか」


ぶっきらぼうに吐き捨てた、その時だった。右手に持っていた貴金属探知機が今までに聞いたこともないほどけたたましく鳴り響いた。


慌てて地面をくまなく探す。しかしそれらしき物は見当たらない。


探知機の音に急かされて、必死で辺りを見回すデンカイの上を、嘲るように、小さな影が横切った。


ふと空を見上げる。地下街の排ガスの曇り空に、小さな穴があいていた。


そんな事が起きる理由は一つしか無い。上から何か落ちてきたのだ。空を探すと、確かにいた。小さな何かが、黒い煙を噴き出しながら墜落している。


探知機が故障していなければ、あの飛行物体の中には、ここに来るまでの電車代どころでは済まされない希少な素材が入っているはずだ。デンカイは探知機を折りたたみカバンの側に差すと、重い体で走り出した。


飛行物体はみるみる速度を上げる。だんだんと、その詳細がはっきり見えてきた。見たこともない戦闘機のような翼、地下街では先ず見かけない純白の服、風になびく青混じりの銀髪。


落下してきているのは、背中に翼をつけただけの、紛れもない人間の少女であった。


「おいおい、どうなってんだ?」


地面に近づくと、少女の翼は逆噴射し勢いを殺し始める。デンカイの目の前で、少女は極めて優雅に地上に降り立った。


デンカイは、その姿に思わず息を呑んだ。雲に開いた小さな穴から光が差して、少女を照らしていた。デンカイは何時ぞや画面越しに見た、最新型のアンドロイドを思い出した。その美しさは、未だ網膜に焼き付いている。少女は、それによく似ていた。


デンカイは恐る恐る少女の顔を覗き込んだ。完全に目を瞑っている。気絶しているようだ。今の着地は彼女の意思とは関係なく、背中の翼が勝手に行ったようである。型落ちのガラクタロボットばかりの地下街では、滅多にお目にかかれない技術だ。

なぜこのような年端もいかない少女が、このような高度なジェットパックを使っているのか疑問だったが、そんなことは後回しである。デンカイは久しぶりの大捕物に上機嫌になりながら、少女を起こさないようにジェットパックに手を掛けた。


ピクリとまるで生きているかのようにジェットパックが動き、それに反応したのか、少女はゆっくりと瞼を開けた。ルビーのような、鮮やかな赤い瞳だった。


少女は身体を起こし、まだ靄が取れきっていない視界で辺りを見回すと、近くで狼狽えている防護服姿の男を見つけた。


「おじさん誰?」


デンカイは言葉に詰まった。素直にジャンクハンターだと伝えれば警戒され、背中のジェットパックにはもう触ることができないだろう。


少し考えて、デンカイは口を開いた。


「君を助けに来たんだ。落ちてきているのが見えたからね」


我ながらいい言い訳だ、デンカイは心の中で自画自賛した。こうすれば、修理するという名目で、壊れている背中の翼に触れることができる。


「ふーん。でも私、大丈夫だよ。この翼があれば、どこへだって行けるもの」


しかし少女の反応は予想外のものだった。自分の翼が故障していることに気がついていないらしい。


デンカイは慌てて訂正する。


「いやいや、君の今の翼じゃあ無理だと思うなぁ。ほら、煙が出てる」


「えっ……ホントだ。道理で痛むと思った」


翼を内側に折りたたんで、故障箇所を見ると、少女はそんなことを口走った。まるで外付けのジェットパックに、神経が通っているかのような物言いである。


引っ掛かりながらも、デンカイは計画通り、ジェットパックの修復を持ち掛けた。


「修理してあげよう。貸してみなさい」


「えー、おじさんに出来るの?」


「出来るとも。こう見えても、機械には一家言あるんだ。」


「いっかげん?」


「得意ってことだよ」


「ふーん。よくわからないけど、そこまで言うならいいよ。はい」


少女はそう言って、デンカイに背中を向けた。


「えーっと、できればジェットパックを外してくれるとやりやすいんだけど」


「?何言ってるのおじさん。これは私の体の一部だよ。外すことなんてできない」


「え?そんな筈は……」


デンカイは半信半疑で、ジェットパックをくまなく観察する。


言われてみれば確かに、見辛くはなっているが、翼の根元は皮膚と一体化している。背負えるような機構も無い。まず考えてみれば、彼女の付けているジェットパックは節だらけで、一般的なそれとは構造がかけ離れている。


信じられない、という顔のデンカイに、何故か自慢げな顔で少女は言う。


「どう、わかったでしょ?自分で自由に動かせるのよ」


少女は翼を大きく広げてみせた。


「おぉ……」


思わず声が漏れた。これはとんでもないものを拾ったかもしれない。


体に機械を埋め込むというのは偶に聞く話だが、みな手酷い失敗を被ったという失敗談だ。落ち目の機械技師曰く、神経系と電子回路の接続が難しいのだという。だが目の前の少女は、翼の小さな機微に至るまで、見事に操って見せている。


そもそもこのジェットパックは、一般に流通しているものとは形が大きく異なっている。自動の逆噴射といい、地下街でジャンク品を弄くり回している機械技師達とは比べ物にならない職人が作ったものだろう。


ふとそこで、デンカイの頭に何処かで聞いた噂話が過った。


あれは眉唾ものだ、そう思いながらも、デンカイは恐る恐る尋ねる。


「因みに、君はどこから来たんだ?もしかすると、空の上からだったり?」


「えっ?」


少女は不思議そうな顔でもう一度辺りを見渡すと、何かに気付いたようにハッとなり、わなわなと震えだした。


「おじさん、ここってもしかして……地下街ってところ?」


「そうだけど」


デンカイの言葉を聞いた少女の顔から、さっと血の気が引いた。


「ウソ……私、落ちてきちゃったの……?」


「"落ちてきた"って、やっぱり君、上界から来たのか?」


上界。酒場のお下劣なジジイ達が酒の肴にしている、幻の場所。動植物に満ちた、羽を生やしたテンシと呼ばれる美しい人々が暮らす楽園。地下街の劣悪な環境に耐えるために、誰かが作り出した神話だと思っていたが、まさか実在していたとは。


テキトーにだまくらかしてジェットパックだけ奪おうと思っていたが、作戦変更だ。デンカイは少女を通して、上界へ上がる手段を見出すことにした。


そのためにはまず、少女に落ち着いてもらわなければならない。


「大丈夫だよ、きっと帰れる。僕も協力するよ」


「無理だよ!地下街まで落ちて帰ってこれた人なんていないって、お母さんが言ってたもん!」


「じゃあ君が記念すべき一人目になればいい。とにかく、落ち着いて。ね?」


「う、うぅ……」


薄っぺらな励ましでどうにか少女を宥めて、デンカイは続ける。


「言ったでしょ?僕は機械修理には自信があるんだ。君のその翼だって、きっと直せるよ」


「本当に?」


「ああ。ただその代わり……直ったら、僕も一緒に上界に連れて行ってくれる?」


「うん!それぐらい、お安いゴヨウだよ」


「本当?約束だよ」


デンカイは少女の弱みに付け込んで、どさくさに紛れて言質を取ると、翼の確認作業に移った。


空高くから落ちてきたにしては、損傷はあり得ないほど軽微なものだった。姿勢制御装置も外装も問題はない。ただ、左翼のジェットエンジンが一つ、酷く変形している。これでは飛行するときにバランスが崩れてしまう。恐らく、墜落の原因はこれだろう。


しかしここで問題なのは、そもそもこのジェットパック自体が、地下街の技術職では足元にも及ばない上界の職人によって作られていることだった。ジェットエンジン一つとっても、その作りは、デンカイが知っているものとは全くの別物であるかもしれない。その再現にどれだけ時間がかかるか、はたまた一生掛かっても再現できないか、全てが未知数である。


「直せる?」


「うーん、どうだろう」


「うぅ…………」


「い、いや直せる!直してみせるよ。だから泣かないでほしいな」


泣き虫な子供の機嫌を取るのは実に面倒だ、デンカイは胸の中で溜息をついた。


ただ勿論、構造部分に大きな損傷が無いのは吉報であることは変わらない。これなら、丁度よい代替品が見つかれば、修理は案外と楽に終わるかもしれない。


その為にもまずは、その代替品を探す必要がある。自宅に戻って、使えそうなジャンク品があったか探してみよう。


そう思って後ろを振り返った所で、デンカイは気がついた。


帰り道が分からない。落ちてくる少女に夢中で走った為に、見失ってしまったのだ。天まで続く建造物で仕切られ、迷路のようになった通路には霧がかかり、どこに繋がっているかすら満足に見えないこの場所で、記憶を頼りに来た道を帰るのは至難の業だ。


端的に言えば、彼は迷子になってしまったのである。


「道理で、他のジャンクハンター達が手をつけない訳だ」


「おじさん、どうしたの?」


「なんでもないよ。とりあえず、足りない部品があるから、それを探しに行こう。ついておいで」


とにかく、道を戻っていくしか無い。デンカイは表面上は冷静を装いながら、座り込んでいる少女に手を差し伸べた。


「ありがとう」


「さ、行きますよ」


ジャンク漁りと機械仕掛けのテンシ。2人は横並びになって、濃霧の中を歩き出した。


「あ、あとねおじさん」


「なんだい?」


「慣れない敬語使わなくても大丈夫だよ、似合ってないから」


「…………テンシ様にはお見通しってことか」




霧の中を進めば進むほど、いかに絶望的な状況にいるかが鮮明に理解できてきた。


歩いても歩いても、一向に出口にたどり着かない。念の為にと道中つけてきた目印も見当たらないとなると、ハナから行く道が違うのだろう。ただ、戻ったとしても、無数に入り組むこの道から正解を探し出すのは至難の業だ。


これでは少女の翼を修理するどころか、無事に家に帰りつけるか怪しいな。デンカイは自虐的な笑みを浮かべた。


さらに悪いことに、デンカイのストレスを増やしてくる問題はそれだけに留まらなかった。


「ねーねー、このロボット達ってもう死んじゃってるの?動かないの?」


少女は、錆びついた旧型ロボットの頭を持ち上げながら尋ねた。先ほどまではあれだけグズっていたのに、今はケロッとして、持ち前の余りある好奇心でデンカイを襲っていた。


気分屋で独りよがり。デンカイが子どもを嫌いな理由は、当にこの2つである。


また、不思議な事に、有毒ガスと金属の粉塵で汚染されきっているはずのこの場所で、この少女はケロリとしている。聞いてみると、逆におじさんはなんでそんなマスク着けてるの?などと言われた。それもまた、デンカイの苛立ちを増長させるのだった。


答えてくれないデンカイに業を煮やし、少女は声を張る。


「ねーえー!」


「……ああそうだよ。見りゃわかるだろ」


デンカイはぶっきらぼうに返した。歩き始めてかれこれ1時間。蒸し器のようになった防護服と、一向に出口が見えない焦りで、脳みそにはもう少女の素朴な疑問に真摯に向き合えるだけの余裕は残っていなかった。


しかしそんなことはお構い無しに、少女は話を続ける。


「えー?でも、ウチのお婆ちゃんならまだ動かせるよ?」


ピクリ、とデンカイの耳が動いた。技術屋の端くれとして、聞き捨てならない事が聞こえたからだ。マスクの狭い隙間から、少女の手の中にあるロボットの頭に視線を傾けた。


ジャンクとしては到底売り物にならないような旧時代の設計。錆びて元の塗装の色すら分からず、この環境を考えれば、内側の回路も融解して使い物にならないだろうことは容易に予測できた。


こんな物を直す、などというのは馬鹿げている。機械のキの字も知らない子供のデタラメだ。デンカイは鼻で笑った。

「ウソだと思ってるでしょ、ホントのことだよ。だからこの子、まだ死んでないよ」


「ハァ……そうかもな。ただこんな無駄話してたら、まずオレらが死んじまうぞ。そんな物棄てて、早く歩け」


「やだ。」


「あぁもう分かったよ!好きにしろ!」


デンカイはぶっきらぼうに叫んで、視線を前に戻した。そしてそこで初めて、霧の先から微かな光が漏れ出してきているのに気がついた。


出口にたどり着いたのか?デンカイは喜びに声を上げそうになるのをぐっとこらえて、側面の壁を見た。


入る際に付けていた目印がない。入った時とは別の出入口らしい。


ただ、進展があったというだけでも、デンカイには嬉しい知らせだった。何も見えない変わり映えもしない迷路を歩き続けるのは、精神衛生上良くない。


心なしか早足で、デンカイは光の射す方へ近づいていった。


「これは……?」


一気に開けた空間で2人を待ち受けたのは、大きな鉄製のゲートだった。落ちていた端材で作られたものだろうが、綺麗に再利用されていて、錆びつきながらも安定感がある。


ゲートの一番上には、鉄板に溶接される形で、格言のようなものが記されていた。


「『希望を捨てるな』……どういうことだ?」


「取り敢えず入ってみようよ」


ゲートをくぐると、小さな小屋が建ち並んぶ集落のような場所になっていた。


困惑しながらも道なりに進んでいくと、ふと横からノイズ混じりの音声が飛んでくる。


『何かお困りですカ?』


「ん?なんだこりゃ、随分な旧型だな」


どうやら、小屋一つ一つに1台のロボットが振り分けられているようだ。『サカナ屋』とか『酒屋』とか、色々な看板が取り付けられている。とは言え、実際に商品を売っているかといえばそうではないらしい。


まるでごっこ遊びをそのまま大きくしたみたいだ。デンカイは不思議そうに頭をポリポリと掻いた。


不思議なことはそれだけではない。この辺りは、やけに植物が豊富だ。どこにでも生える苔だけでなく、背の低い下草だとか、所によっては花さえ生えている。金属の黒と油の茶ばかりの地下街では考えられない。


「随分と不思議なとこに来ちまったな……」


デンカイがそう呟いたのと同時に、どこからか大きな腹の音が鳴った。


無論、デンカイからではない。となれば残るのは一人である。


少し遠慮がちに、デンカイは片目で少女の方を見た。


「……なぁに?お腹空いたの。悪い?」


「だれも悪いなんか言ってねえよ」


顔を少し赤くして膨れる少女に、デンカイはバツが悪そうに返事をすると、背負っていた鞄から何かを取り出した。


それは、銀色の無骨な包装がされた2つの栄養バーだった。薄茶色で、香ばしい香りがしている。


「ほれ、食え」


「何これ」


「コオロギバーだ」


「うげっ!虫を食わすの!?」


「何言ってんだ、栄養満点だぞ?」


「やだー!」


「しょうがないな、ワームの缶詰でもいいぞ」


「もっとやだー!」


デンカイがしつこく勧めても、少女は断固拒否といった姿勢で拒み続ける。コオロギバーを押し付けようとするデンカイとそれを手で押しのける少女。攻防は街の中心で数分間続いたが、結局、頑固な子どもとの我慢合戦には勝てず、デンカイは不満たらたらで白旗を上げた。


「はいはい分かったよ!全く……じゃあなにがいいんだ?」


「お魚食べたい」


「サカナ?あの屋台にも書いてあったやつか。いったいどんな食べ物なんだ?」


「えっ!おじさんお魚知らないの?すっごーい美味しいんだよ」


少女はそう言うと、辺りをきょろきょろと見回して、あった!と1枚の看板を指さした。


「なになに、『釣り堀』?」


「いいから、ほら来て!」


少女に手を引かれるまま、デンカイは看板に描かれた矢印の方向へと歩いていった。


「これは……」


小屋が建ち並ぶ一本道を逸れた先にあったのは、大きな丸池であった。溜まった水は淡く透きとおっており、中には、いつか見た魚雷を小さくしたような何かが泳いでいる。


絶句するデンカイを他所に、少女は持ってきたロボット頭をそっと地面に置いて、近くに置かれた小屋のロボットに話しかける。


「釣り竿2つちょうだい」


「ドーゾ」


細い三本指の手から釣り竿を受け取ると、少女は立ち尽くすデンカイに一本手渡した。


「はいこれ」


「お、おぉ……なんだこれ?」


「これで魚を釣るんだよ。ほら、池で泳いでるじょ。あれが魚。この針の先についたキラキラに寄ってくるんだ」


少女の説明に合わせて、渡された『釣り竿』なる枝に掛かった糸の先を見た。なるほど確かに、綺麗に磨かれた金属のお守りが、光に当たって輝いて見える。


「これをね、こうやって……それ!」


少女は徐ろに竿を大きく振りかぶって、その重りを思い切り池に向かって飛ばした。ちゃぽん、と柔らかい音とともに、重りと針が池に沈んでいく。


「ほら、おじさんも」


「あ、ああ」


催促されるままに、デンカイは見様見真似で重りを飛ばした。少女が入れたものより少し横に逸れて、池の縁の直ぐ側に着水する。


「おお、初めてなのに筋がいいね」


「そうなのか?ならいいんだが。……それで、ここからどうするんだ?」


「どうするって、待つんだよ」


「待つ?」


「うん。魚が食いつくのを待つんだ」


少女のあっけらかんとした答えに、デンカイは思わず頭を抱えた。


「あのなあ。俺たちは一刻も早く、お前の翼の部品を探さなきゃならないんだぞ?こんなよく分からない生き物の為に、どうして待たなきゃいけない?」


「どうしてもだよ。私、コオロギとか芋虫の気分じゃないもん」


「なら、中に爆弾でも投げ入れて一気に獲ってしまえばいいだろ」


「それじゃあお魚さんがかわいそうじゃん。ほら、そんなカッカしないで、座って座って」


そう言って地面を叩く少女に、ぶつくさ言いながらも、デンカイは渋々、緑の芝生の上に座り込んだ。


急に、辺りはしんと静まり返った。とは言っても、2人が黙りこくっただけだ。あれだけお喋りだった少女も、何を考えているか分からない顔で口をつぐんでいる。聞こえてくるのは、風の音、触れ合う草花の音、それくらいなものだった。


人の声が無いと、この場所はこんなに静かなのか。何もしなくても耳を痛めるように喧しい地下街の喧騒に慣れたデンカイには、どうにもむず痒かった。


暫くの静けさの中、結局その沈黙に耐えきれずに、デンカイは口を開いた。


「上界には、魚以外にはどんな食べ物があるんだ?」


デンカイの言葉に少女はぱっとあどけない笑顔を見せた。


「知りたい?」


「腹の立つ顔だな」


いたずらっぽく笑いながら近づいてくる少女の額に、デンカイはデコピンをお見舞いした。


「いっつ……ちょっと!デコピンはないでしょデコピンは」


「なるほど、上界にもデコピンという言葉はあるのか」


「話逸らさないでくれる!?」


少女はそう言って、片手で額を押さえながら立ち上がると、お返しと言わんばかりにデンカイにじゃれつく。いくら少女の体重とは言えど、不意を打たれたデンカイは堪らず地面に倒れ込んだ。


「ちょっ、やめろ馬鹿」


「バカはそっちじゃー!」


そうして芝生に寝転がりながら2人で押し合いへし合いしていると、ふと、デンカイの竿がピクリピクリと動いているのに気がついた。


「あっ、食いついてる!」


「なんだって?」


「魚が掛かったんだよ!さ、立って立って!」


「今度はなんなんだよ……」


デンカイは少女にレクチャーされるまま両手で竿を握った。確かに、何かに引き込まれているような感覚が手のひら越しに伝わってきている。


デンカイは両手を振り上げてぐんっと思い切り引き上げた。サカナも負けじと、池の中に引き込もうと力を振り絞る。


「おい、これでいいのか!?」


「オッケー!そのままガンガン引いて!」


得体のしれない何かとの攻防は、長期戦になった。時に前に、左に、下に、サカナは縦横無尽に動き回り、翻弄する。


しかし、その戦いを最終的に制したのは、デンカイだった。


止めとばかりに力を振り絞って引き上げると、サカナはついにその姿を現した。そして宙を舞い、デンカイ目がけて落ちてきた。


男性の前腕ほどはあろうかという、青白く輝く紡錘形の生物が、膝の上でビチビチと跳ねている。全く未知の生き物との会合に、デンカイは絶句した。


「わっ、おっきー!お手柄だねおじさん!」


「こ、これがサカナか。……余り旨そうな見た目はしてないが」


「それは食べてからのお楽しみだよ。ちょっとそこで待ってて!」


少女はどこからか枯れ枝を持ってくると、慣れた手付きで組み合わせていく。デンカイは魚との猛烈な駆け引きに体力を奪われ、ただそれを見ていることしかできなかった。


「ちょっとそれ貸して」


少女は膝元で跳ね回る魚を掴み取り、口から思い切り鉄芯を突き刺した。デンカイはまた絶句した。


「さっき、サカナがかわいそうだとか言ってなかったか?それを、こんな……」


「いいの。美味しく食べてあげるのが優しさだよ」


「物は言いようだな……」


少し落ち込むデンカイを他所に、少女は魚の刺さった棒を地面に突き刺す。これにて準備は完了だ。


「おじさん、ライターは持ってる?ちょっと借りたいんだけどさ」


「いいぞ」


デンカイは鞄から真鍮のライターを取り出して、少女に手渡した。


蓋を外し、回転ヤスリを回すと、ぼうと薄青い火が立つ。少女は枯れ葉に火をつけ、きちんと燃えていることを確認すると、組んだ枝の中に放り込んだ。


火はあっという間に枝全体を包み込み、少し暗くなってきた周囲をも明るく照らす立派な炎となった。パチパチ、と火花が散る音が心地良い。


「今の時代に焚き火か?」


「頭固いなぁ。逆にこういうのがいいんだよ。ほら、おじさんも食べるんだからガスマスク取って」


「いや、お前はいいかもしれないけどな、ここは有毒ガスが……」


そこまで口にして、デンカイは空気汚染度のメーターが正常値を表示していることに気がついた。この植物たちのおかげか、もしくはそれ以外の要因かは分からないが、この場所までは有毒ガスの脅威は到達していないらしい。


デンカイは意を決して、ロック解除のボタンをそっと押した。


「そんな顔してたんだね。ヒゲ剃ったら?」


「余計なお世話だ」


不思議な気分だ。色ガラスの無い視界で見る景色は、より一層美しく見えた。フィルター無しの新鮮な空気が鼻を通り抜け、肺を満たす。なんというか、気分がいい。オイルの匂いが付いていない空気を吸ったのは何時ぶりだろう。


「どう?気持ちいいでしょ」


「…………ああ」


少女の無邪気な笑顔に、デンカイも知らぬ間に釣られて笑う。その一瞬だけは、デンカイは裏の思惑や野望なんてものを完全に忘れ去っていた。


そんな2人の鼻腔を香ばしい匂いがそっと擽った。魚が頃合いになっていたらしい。


「はい、どーぞ」


少女は地面から魚の刺さった棒を引き抜くと、デンカイに手渡した。


「食べたがっていたのはお前だろ」


「初めてなんでしょ?この味は知っておかないと。あ、全部は食べちゃ駄目だからね」


どうやら、少女はデンカイに一口目を食べさせる事に決めたらしかった。こうなった彼女はもうテコでも動かないことを、デンカイはこれまでの旅でよく理解していた。


観念して、手に持った魚に視線を移す。白銀の皮には薄茶色の焼きめがついていて、何故だか無性に食欲を唆る。得体のしれない生き物の姿焼きだというのに、不思議なものだ。


少女の期待の眼差しを受け、デンカイは少しためらいながらも、その身に齧り付いた。


「うまいな!?」


「えへへ、でしょ?虫なんかより余っ程美味しいよ」


「こ、これは認めざるを得ん」


じゅっと魚の脂が染み出した上質な脂に、柔らかいながらハリがある身。コオロギより味がよく、ワームよりも食べ応えがある。こんな食べ物がこの世にあったとは。


デンカイは夢中で二口ほど食べた後、少女の羨ましそうな目を見て、残りを手渡した。


小さい口で魚を頬張る少女を横目に、デンカイは目の前で揺らめく焚き火を何をするでもなく見ていた。


考えれば考えるほど、この場所は異質だ。ぺんぺん草も生えない地下街と地続きでありながら、草花が茂り、時代遅れのロボット達が当然のように動いていて、挙句よく分からない美味しい生き物が生息している。そんな辺境が、迷えば命取りになるような通路の先でひっそりと放置されている。


ここを管理していたのは、何者だったのだろう。そんなこと考えて、デンカイは頭を振った。そんなこと、一ジャンク漁りが知る必要はない。


火の粉が跳ねる音は、不思議な安らぎを連れてくる。迷路の中で歩き続けた疲労感、果ては地下街でのあれこれも、今のデンカイには酷くちっぽけなものに思えた。現実逃避と言えばそれまでだが、デンカイの心は、こんなときは二度と来ないと思えるくらい、軽やかだった。


軽くなった隙間に、デンカイは何か入れたくなって、少女に尋ねた。


「お前、どうしてこんな所に落ちて来ちまったんだ?」


口にした後に、デンカイは自分らしくないことを聞いたと思った。自分に他人を気にする余裕など無いだろう。聞くとしても、彼女自身についてではなく、上界の環境だとか、そういう内容であるべきだ。馴れ合いはろくなことが起きない。


訂正しようと顔を上げて、デンカイは、少女が先程までとは違った雰囲気を纏ったことに気付いた。これまでを赤やオレンジだとすれば、青とか藍とか、そういった色になるだろう。


デンカイが何も言えずにいると、少女は意を決したように口を開いた。


「鬼ごっこ、してたんだ」


「鬼ごっこ?」


「ユーリカって子とね。やさしいんだよ、こんな私とも一緒に遊んでくれて」


「…………」


「私、いわゆる落ちこぼれってやつでさ。飛ぶの下手だし、勉強もあんまり得意じゃないし。お父さんお母さんがすごい人たちだから、よけいに酷く見えるんだと思う。」


少女はそこで、少し言葉に詰まり、しかし話を続けた。薄っすらとした朱色を帯びていた空は、だんだんと夜の黒に飲まれていっていた。


「みんな、私に冷たいんだよ。でもユーリカは違うの。だからね、私、あの子のこと大好きなんだ。あの子も、そうだといいんだけど」


少女は体育座りを少し深くして、組んだ腕の中に顔を埋めた。


「でね、今日はいつもより白熱しちゃって、私、楽しくなっちゃって……周りが見えてなかったんだ。それでね、それで……」


少女の声はだんだんと弱々しくなり、小さくなって、最後には嗚咽に変わった。


デンカイは何も言わなかった。


どこからか鳴き虫の声がしていた。夜更けの冷たい風が草花を撫でていた。光が失われていく中で、少女のすすり泣く声だけを聞きながら、ただ座り込んでいた。


数十秒か数時間か、あるいは数日か、そんな長く短い時間の後で、デンカイは口を開いた。


「帰りたいか?」


「……うん」


「どんな方法を使ってもか?」


「…………うん」


「わかった。ならついてこい」


デンカイは立ち上がると、池の向こう側に向かって歩き始めた。少女は黙って、その背中を追いかけた。


大きな丸池の外周を回った先には、他のものより一層状態のいい、1枚の看板が立っていた。


『墓地』




「……へ?」


呆気にとられる少女を他所に、デンカイはずんずんと道を進んでいく。


狭い一本道を通っていった先には、長方形の吹き抜けの空間が広がっていた。厚い雲の層越しの月光が、"彼ら"を優しくを照らしている。


「ウ、ソ……」


少女はその光景を前に、思わず膝をついた。


綺麗に横並びになった、十数体の人骨。彼らの背中には、少女の背にあるものと同じ、一対の翼が残されていた。


「やはり、ここは落ちてきた天使たちの集落だったんだな」


デンカイは目を細めながら呟いた。


上界の人々は恐らく、自然というものを重要視する価値観を持っているのだろう。そして、技術力に優れている。集落にいた旧型ロボット達も、彼らが寂しさを紛らわす為に修理したものだと考えれば説明がつく。


しかし、そんな技術力を持った彼らであっても、上界に戻る事は出来なかった。


それは、彼らの価値観に理由があったからだ。


デンカイは死体に近づくと、一番状態が良さそうな翼を選び出し、ジェットエンジを一つもぎ取った。


「なっ、何してるのおじさん!!」


デンカイの思いがけない行動に、少女は声を荒げた。それは死体への、ここに生きた人々への冒涜だと、そう考えてのことだった。


やはりそうだ。デンカイは悟った。


「ここの人々は、お前のように、失った部品を死体から奪うようなことはしなかった。翼は体の一部で、それを奪うのは、遺体のあばら骨を折って盗むのと同じだからだ。しかしだからこそ、ここで死んだんだ」


「っ……!」


デンカイは少女に近づき、奪い取ったジェットエンジンを手に持って言った。


「お前はさっき、『どんな方法を使っても上界に帰る』と言ったはずだ。このジェットパックと、お前が通路で拾ってきたロボットの頭にある内部部品を組み合わせれば、お前の翼を直せる」


「そ、そんなこと…!」


「できないのか?じゃあコイツラと同じようにここで野垂れ死ぬか!?」


「こ、この人たちを馬鹿にしないで!」


「できることをせずに死んだ者達だ、愚か者以外の何者でもないだろ!」


怒号が、暗やみに虚しく木霊する。せっかく止まった少女の涙は、いつの間にか、また目尻に戻ってきてしまっていた。


デンカイはその顔を見て、頭に浮かんでいた事が全て、口に届かなくなってしまって、何も出来ず息を吐いた。


そして、力みのない優しい声で言った。


「わかった。じゃあ、少し後ろを向いて、目を瞑っていてくれるか?」


「…………」


少女は少し考えた後、何かを悟った。そして、何も口にせず言われた通りにした。


瞼で視界が狭まっていく一瞬、デンカイが、安心したように微笑んでいるのが見えた。


真っ暗な視界の中で、より聞こえやすくなった少女の耳は、色々な音を拾った。


誰かが駆け足で道を戻っていく音。


すぐ後ろで、誰かが工具で機械をいじる音。


金属のようなものが割れる音。何かを溶接する音。機械を磨く音。ネジを巻く音。ドリルの音。


そして、自分の翼に何かがはめ込まれる音。


少女は見た目より大人だった。デンカイの意図を理解していた。


彼は、少女が自分の気持ちを曲げたくないことを知って、あくまでも"迷惑なおじさんが勝手にやったこと"にしたのだ。


「よし、もういいぞ」


目を開けて、チラと見た左の翼には、少し錆びついていながらも立派な、ジェットエンジンが付いていた。


「ありがとう、おじさん」


「……何のことだか分からないな」


この人、思ったより嘘が下手だ。顔をそらすデンカイを見て、少女は無邪気に笑った。


最初に見た時は、少し失礼だが、胡散臭い人だと思っていた。本当に信頼していいかどうか不安だった。でも、それは全くの杞憂だったらしい。


おじさんは、彼はちゃんと仕事を果たした。私も約束を守らなければ。


少女は、地面に座り込むデンカイに手を差し伸べた。翼を直したら上界に連れて行く、その約束を果たすためだ。


デンカイは少女の顔を見上げて、しかし首を横に振った。


「そのエンジンは、本来はとうに動かないものを、無理やり稼働する所まで持っていった欠陥品にすぎない。男一人分の体重を支えて飛べるほどの馬力は無いんだ」


「そんな……」


「いいんだ。修理する過程で、ある程度構造は分かった。いつか再現して、自分で行くさ」


「で、でも!」


「いいから、お前は気にせず帰れ」


意固地になった大人はテコでも動かないことを、少女は知っていた。


零れそうになった涙を、口を噤んで必死に堪えて、少女は翼のエンジンを思い切り吹かす。


1つの翼に3つ、合計6つのエンジンから力強い炎が吹き出し、少女の体が宙に浮き上がる。


「言い忘れてたけど、私、"お前"って名前じゃないから!『ソラ』って可愛い名前があるんだからね!」


「なっ……」


大きな爆発のような音ともに、少女は力強く空に飛び上がっていく。


「そんなら俺だって、"おじさん"じゃなくて、『デンカイ』ってイカす名前があるからな!覚えとけよ!」


少女は瞬く間に遥か上空へと昇り、雲に小さな穴を開けて姿を消した。


デンカイは夜の静寂の中で、暫くソラが昇っていった先を見つめていた。


雲に開いた穴から差した月光が、まるでスポットライトのようにデンカイを照らしていた。









「へぇ、これまた面白い土産話を持って返ってきたね」


バーの女店主は硝子のグラスを磨きながら、カカカと笑った。


「笑い事じゃねぇよ、こっちはアンタが出鱈目な場所を紹介してくれたせいで死にかけたんだ」


デンカイは酒の入ったグラスを傾けながら、赤ら顔で文句をつける。ハイペースで呑んでいるのか、少し呂律がおぼつかない。


「それは結果論じゃないかい。実際、その女の子を深追いしなけりゃ、ただ湿気た穴場たらボウズで返ってくるだけだった筈だろう」


「それでも大問題だよ」


「丑三つ時に閉店直後の店のドア叩いて、入れてもらえてるだけ有り難いと思いな!」


女店主はまたカカカと笑って、話を続けた。


「にしても、アンタが無償の人助けをするなんて珍しいじゃないかい」


「え?」


「ジェットパックのエンジンを取り付ける位で、コアの構造なんて分かりゃしないだろ。結局、アンタは何も見返りを得ずにその娘を助けたんだ。見直したよアタシ」


女店主のその言葉に、酒が回ったデンカイは高らかに笑った。


「何がおかしいんだい?」


「俺があの迷路からどうやって1日で帰ってこれたのか、今見せてやる」


頭にハテナを浮かべる女店主を横目に、デンカイはカバンの口を開けると、ちょうどリュックサックほどの大きさの錆だらけな機械を取り出した。


そして、デンカイはそれを得意げにカウンターの上に置いた。


大きな長方形の箱に、肩がけ紐、そして一対の機械の翼。それはまさしくジェットパックであった。


「アンタまさか、上界の人達の遺体に手を付けたのかい!?」


「応よ。みんな酷く痛んでたが、かろうじて生きてる部品同士を組み合わせれば動いたんでな。迷路はコイツで空からショートカットしてきたってわけだ」


「はぁ……アンタもやっとまともになったかと思ったんだがねぇ」


女店主は深く溜息をついた。しかしデンカイは、目の前で失望する友人のことなど、気にも止めない。


「勿論、これじゃ終わらないぜ。俺はコイツを改善して、本物同然かそれ以上まで仕上げてやる」


得意げにそんな事を宣うデンカイに、頭痛が痛いといった様子で、女店主は頭を抱えた。


「正気かい、アンタ」


「無論だ。俺は上界に行くぜ」


そう言って勢いよく酒を煽るデンカイの首元では、ひしゃげたジェットエンジンが紐に通されて、静かに揺れていた。



少女と草臥れおっさんのコンビ好き好き侍「お前を斬る」

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