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第7話

「オラァ」




 俺は助走をつけて一番近くに立っていた男にタックルを繰り出す。


 日頃鍛えていたせいもあってか相手は派手に吹き飛んだ。


 レイアは目をまんまるにしている。




「っ!?」


「うわっ、なんだ!?」


「なんかやべえぞ!?」




 吹き飛んだ男は言葉を発するまもなく気絶し、男の仲間達は混乱する。


 その時、集団のボスらしき男が仲間に声をかけた。




「おいおい、慌てるな。なにかと思えばただのガキじゃねえか。」




 その途端、男たちは冷静を取り戻した。




「ホントだ。 おいガキ、さっきは不意打ちでやられたが今度はうまくはいかねぇぞ。  


 こいつを取り押さえろ。」




 男たちは一斉に飛びかかってきた。




「オラァ」


「仲間の落とし前つけさせてもらうぞ!」


「お楽しみを邪魔しやがって!」




 やれやれ、集団戦法とは卑怯な。




「メタスタシス」




「なっ!?」


「消えた?」




「業火」




 男たちに向かって1000℃を超える灼熱の炎を噴射する。


 もちろん周りには被害がないようにしてあるので心配はない。




「ぐあぁぁ。」


「ぐぅぅぅ。」




 男たちは苦悶の表情にあえぎ、少しすると息絶えた。


 殺してしまったが、どうせろくなことをしていないし、こいつらが原作で主人公の前でレイアを襲ってた奴らと同じなら、人殺しも平気でしていた奴らだったはずだ。


 彼らの親には申し訳ないが、まぁ、自業自得といったところだろう。




「チッ、俺の手下を潰しやがって、お前、生きて帰れると思うなよ。」




 おっと、ボスのことを忘れていた。


 魔法で作られたであろう斧を振り回しながら迫ってくる。


 さっきの蹂躙を見ていなかったのだろうか?


 さっさと逃げ出しておけばよかったものを。


 まぁ、逃げてもまた仲間を集めて悪事を働くだろうし、手間が省けて良かったな。




「オリャァ」




 だから当たらないって。




「メタスタシス」




「それはもう読めてんだよ!」




 うおっ!


 ボスはほぼノールックで俺が移動した背中側に斧を振ってきた。


 少し回避が遅れていたら胴を一刀両断だったな。




「っあっぶねぇ。」




「おいおいその程度かぁ?」




 ボスは更に追撃をかける。


 少しクールタイムが必要なのも読まれているのか。




「ファイアウォール」




 一旦引いて立て直そう。




「逃げんじゃねぇ! ウォータージェット」




 すぐに火の壁は消されるが、時間稼ぎには十分だった。




「メタスタシス」




「またそれか。 もう見飽きたぞ。」




 また後ろに回ったのでは読まれて反撃を食らう。


 そこで俺はやつの上空に移動した。




「ここだろ!  なっ、いない!?」




「ここだよっ。 雷轟」




「なっ! ぐあぁぁぁっ。」




 雷が落ちる大きな音とボスの叫び声が重なり、戦闘の終結を告げた。




 はぁ疲れた。






「あ、あのっ、ありがとうございます。 ってガスト君?!」




「ああ、たまたま通りかかったら悲鳴が聞こえてな。」




「ご、ごめん。 巻き込んじゃって。」




「いいっていいって。 それよりなんでこんな時間にこんなところを出歩いてたんだ?」




「お父さんに酒買ってこいって追い出されちゃって。 こんな時間にお店が空いてるわけないのに。」




 そうか、彼女の家はこんな感じだったな。


 父親はギャンブルと酒に入り浸り、気に入らないことがあると怒鳴り散らかし、物に当たる。それを見かねた母親はレイアが7歳のときに彼女をおいて家を出た。




 確か魔法学園の学費も彼女が自分で働いて稼いでいたはずだ。




 こんな家庭で育ったせいか、レイアは臆病な正確だ。


 おそらく暗がりでオロオロしていたところを狙われたのだろう。




「それは災難だったなぁ。」




「ガストくんが来てくれなかったらどうなっていたことか……。 本当にありがとう。」




「だからいいって。 それよりこんな時間だし、家まで送るよ。」




「そこまでは流石に、申し訳ないし……。」




「また襲われたらどうするんだ。 また助けに行くほうが面倒だ。」




「ふふ、ありがとう。 じゃあお言葉に甘えようかな。」




「よし、じゃあ行くぞ。」




 レイアを家まで送るのはもちろん心配だからなのもあるが、彼女の父親に一度言って置かなければいけないことがあるからだ。


 レイアはもう十分父親を倒せるぐらいには強くなっていると思うのだが、長年の恐怖から彼女はそれに気づいていないのだろう。


 俺がそれに気づかせなければレイアはずっと父親に縛られ続けることになる。


 それはよろしくない。






「ついたよ。 ありがとう。 それじゃまた明日学校で。」




「ちょっと待って。 お父さんと話をさせてもらっていい?」




「それは……。 いいけど、気をつけてね。」




俺は頷く。




「じゃあ行くよ。」




レイアは家のドアを開ける。




「ただいま…。」




「やっと帰ってきたか。 酒は?」




「お店みんなしまっちゃってて……。」




「なんだとゴラ! ん? あんた誰だ。」




「レイアさんのクラスメイトのガスト・トライセルです。 レイアさんから事情を聞きまして、少し伝えたいことがあってお邪魔させていただきました。」




レイアの父親は一瞬レイアをレイアを睨み、言い放った。




「人の家の事情によそ者が口だすんじゃねぇ。痛い目に空いてくなけりゃとっとと失せろ。」




「いや、この状況は見過ごせませんね。」




「うっぜえなぁ。そんなに殴られてぇならやってやるよ!」




父親は拳を振りかぶるが、俺は魔力を放出させて父親を押しつぶすように圧を出す。




「うっ。」




流石に力量差を理解したようで、父親は拳を下げた。




「いいか。 もう一度このような話をレイアから聞いたらただじゃ置かないからな。 家族のために真面目に働け。 そしてレイア。 お前はもうこんな父親より十分強い。 次からは反撃してもこいつには負けないと思うぞ。」




父親はもうなにも言わなかった。




「ううっ。 ありがとうガスト君。」




「おう。 それじゃまたな。」




こうして俺はレイアの家をあとにした。




ちなみに後でカッコつけすぎたことを盛大に後悔した。

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