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杯の中のもの(第一巻 冷花の墓)  作者: 十三
第一巻 冷花の墓編
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第四章 バーテンダーにとって、最高のカクテルの材料は言葉である (一)

「にゃー、にゃー!」


部屋の隅にいる二匹の子猫に向かって、僕は一生懸命に呼びかけた。注意を引こうと必死だったが、彼らはベッドの隅で丸くなったまま、僕のことなど全く相手にしてくれなかった。


「にゃー、にゃー!」


もう一度声をかける。だが、十七回目の試みで、ついに僕は諦めることにした。


いいさ。猫用のおやつを買ってきたら、その態度も変わるだろう。


そして、もう一つ決めたことは、二匹の名前を「クロ」と「シロ」にすること。それから放課後には動物病院へ連れて行き、検診を受けさせるとともに、猫を飼うための必要な用品を揃えることだ。


いつものように、自分の部屋からダイニングへ向かうと、浅瀬と一色がそれぞれ朝ご飯を食べていた。僕たちの世話を一時的に引き受けている佐藤鳥さんも席についていた。僕の隣の席を一つ空けて座っている彼女は、スーツのようなパジャマを着ていて、疲れた顔で大きなあくびをしていた。どうやら、彼女の仕事は本当に忙しいらしい。


「松本君、おはよう。」


佐藤さんは僕に挨拶をし、すぐにまた大きなあくびを一つ。つられて僕も眠気が増してきた。


「おはようございます。」


僕も礼儀正しく頷いて挨拶を返すと、向かいに座っている浅瀬と一色にも声をかけた。浅瀬は淡々と頷くだけだったが、一色はいつも通り明るい笑顔を見せてくれた。


「今日のこのスープ、本当に美味しいよ。」


一色が得意げに言った。「たっぷり材料を使って煮込んだ特製スープなんだからね。」


「それなら、ぜひ味わってみないとね。」


僕は笑いながら答えた。


僕が座った後、佐藤さんは食事を済ませるとそのまま部屋に戻っていった。続いて浅瀬と一色も靴を履いて出かけていく。僕が食器を片付けて洗っているとき、ふと気がついた。小黒と小白のことを彼女たちに言いそびれていたのだ。


今の状況をスマホで説明するのは難しそうだし、まあ、夜に話せばいいだろう。


子猫たちを落ち着かせた後、僕は急いで学校へ向かったが、そのせいで大幅に遅刻してしまい、先生にこっぴどく叱られた。


説教が終わり、教室へ戻る途中、廊下で浅瀬と出くわした。彼女は僕を一瞥し、僕が遅刻したことに少し驚いているような目をしていた。僕も彼女も何か言おうとしたその時、久治が教室のドアから顔を出し、僕たちはお互いの間に自然と距離を取った。結局、言おうとしていた言葉も飲み込んでしまう。


久治の目は最初、僕ではなく浅瀬に釘付けだった。彼女が僕のそばを素知らぬ顔で通り過ぎると、ようやく久治は我に返り、僕の隣に歩み寄りながら言った。


「いやー、いいものを見たよ。」


「変態みたいなこと言うなよ。」


僕は呆れた顔で彼を睨む。「いや、むしろお前は本当に変態だろ。」


「なんだよ、それ。せっかくお前がどうして遅刻したのか心配して見に来たのにさ。」


「どうせ副校長がまだ来てないから、ヒマつぶしに出てきただけだろ。」


僕の指摘に久治は怒るでもなく、にやにや笑いながら一緒に教室へ戻った。


教室に入ると、クラスメイトたちがそれぞれ小さなグループを作り、賑やかに話していた。授業が始まる気配はまるでない。唯一の例外は、椎名と平治を中心としたクラスの核心グループだ。彼らも話はしていたが、手にはしっかりと教科書を持っていた。


「なんだか盛り上がってるけど、何の話?」


席に着いた僕は、大型グループの一つを指差して久治に尋ねた。


「みんな、もうすぐあるダンスパーティーのことしか頭にないんだよ。あそこはどうやって異性を誘うかの作戦会議中だな。」


「青春だなぁ。」


「そんな年寄りじみた感想を言うなよ。俺たちの青春はまだ終わってない。青春は今、燃え盛っているんだ!」


久治はまるで軍人のような覚悟の表情を浮かべた。


「でもさ、こういう態度を見てると、クラスのみんなの恋愛事情がなんとなく分かるよな。」


「どういうこと?」


僕が首を傾げると、久治は説明を続けた。


「あの余裕そうな連中を見てみろよ。あいつらはもうすでにパートナーを見つけてるんだよ。俺の調査によると、みんな彼女持ちだ。」


「もし彼女がいるのに別の子を誘おうものなら、命が危ないよな。」


「だからこそ、今回のイベントで隠れカップルたちを見つけることができたんだ。まさか、もう長いこと付き合っているなんて思わなかったけどな。」


久治は声を潜め、あるカップルの名前を教えてくれた。僕には特に印象のない名前だったが。


「今、彼らはお互いを励まし合ってる。高校生にとって、誰かをダンスに誘うってことは、ほぼ告白と同じだからな。」


「もし成功したらどうなるんだ?」


「男子グループに戻ったとき、嫉妬でボコボコにされるだろうな。」


「なんでそんなこと知ってるんだよ?」


久治は袖をまくり、小さなアザを見せながら言った。「さっき俺もあのグループにいてさ、それで、勇気を出して鈴木七海を誘ったんだよ。どう思う?」


「成功したんだな。」


「なんでそんな簡単に分かるんだよ!」


久治の嬉しそうな顔を見れば、答えは明白だった。


「成功した途端、奴らは狂ったように俺を殴ろうとしてきた。まあ、これが嫉妬の証拠だよな。俺が七海の好意を得られたことへの嫉妬さ。」


久治の目にはハートが浮かんでいるようだった。「でも、どんなに痛めつけられたとしても、この幸福感は隠せない。外に飛び出して、大声で叫びたいくらいだよ。」


「じゃあ、教室を飛び出した理由は俺を探すためじゃなかったんだな。」


そう言いつつ、僕も彼を一発殴りたくなった。


久治との会話中、僕は鈴木が自分のグループで会話しているのを目にした。だが、彼女の視線は時折こちらに向けられていた。僕には自惚れる要素はない。彼女が見ているのはきっと久治だろう。いいなぁ、幸せそうな二人だ。


彼らがダンスパーティーで告白し、抱き合う場面を想像していたその時、突然クラスがざわつき始めた。顔を上げると、綾部という男子がみんなに押し出され、教室の中央、平治と椎名の目の前に立たされていた。


綾部の顔は真っ赤に染まっていた。彼は後ろにいる男子グループを振り返り、彼らの目に期待と冷やかしが入り混じっているのを確認すると、深く息を吸い込んだ。そして彼は再び前を向き、椎名に向かってお辞儀をしながら、手を差し出した。


さらにもう一度、大きく息を吸い込むと、勇気を振り絞って言った。


「椎名さん、僕と一緒にダンスパーティーに行ってくれませんか?」


言い終えると、綾部は深く頭を下げ、顔を上げることができなかった。彼の後ろにいる男子たちは、息を殺しながら椎名の返事を待っていた。


しかし、意外なことに、綾部に最初に返事をしたのは椎名ではなく、彼女の隣に座っていた平治だった。椎名はただぼんやりと綾部を見つめ、感情を全く表に出さなかった。


「ごめんなさいね、椎名はすでに別の人の誘いを受けているんだ。」


平治は綾部の肩に手を置き、慰めるように言った。


「でも……」


綾部は顔を上げ、何かを尋ねようとしたが、平治はそれを遮るように続けた。


「君の気持ちはよく分かるよ。でも、きっと他にも君と一緒に踊ってくれる人がいるはずだ。」


平治は一見誠実そうに聞こえる口調で話していたが、その言葉にははっきりとした拒絶の意思が込められていた。


椎名雪鷺は隣でただ静かに綾部を見つめるだけで、一言も発することはなかった。その表情からは彼女の心の内を読み取ることはできなかった。


「そうですか……それじゃあ、もし機会があればまた誘わせてください。」


綾部は苦笑いを浮かべながらそう言うと、黙って男子たちの輪に戻っていった。


こうして、一つの騒動は幕を閉じた。


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