第二章 乾杯の後、それぞれが自分の物語を持っている(その六)
昨日の深夜、北部都市の港区にある人工島の地下で。
「先輩、私はどうすればいいの?」スーツを着た職場の女性が、写真を手にして机にうつ伏せになり、力なく叫んだ。その写真には、上杉松本の父親である上杉秋尾の姿が映っている。
彼女がそう叫んでいると、助手が慌ててドアから駆け込んできて、「佐藤隊長(仮名)、佐藤隊長(仮名)、知事がまた会議を開くって!」と叫んだ。
「わかった、わかった、そんなに慌てるな。」佐藤鳥は立ち上がり、足元のストッキングとタイトスカートを整え、クールにジャケットを羽織った。
「でも、知事は上杉先輩のことを続けて話したいみたいです……」助手が少し不満そうに説明したが、上杉の名前を聞いた瞬間、佐藤鳥は「うわああ」と泣きそうになり、まるで子供のように泣き出しそうになった。助手は急いで彼女を慰めることになった。
「先輩、うわああ……」
しばらくして、助手の助けを借りてようやく冷静になった佐藤鳥は、ティッシュで顔を拭いてから助手と一緒に会議室へ向かった。
会議室に到着すると、すでに多くの人が座っており、よく見ると政府の高官たちも含まれていた。そして、助手が言っていた知事は、会議室の中央に真剣な表情で座っていた。
知事の職位は異世界事務省の省長であり、公式な組織として異世界に関する緊急事務や様々な問題に対応する役割を担っている。
全員が揃った後、知事はゆっくりと立ち上がり、マイクを手に取り、低い声で皆に向かって言った。「皆さん、落山で起きた災害についてはご存知でしょう。このことに対して、私は深い哀悼の意を表します。」
その言葉を聞いた全員が知事の悲壮な雰囲気に影響され、自然と立ち上がり、頭を下げて、その災害のすべての犠牲者に黙祷を捧げた。
この「落山災害」と呼ばれる事件は、人間政府といくつかの異世界の国との協力から生じたものである。異世界には多くの国が存在し、彼らの歴史も人間と同様に輝かしい過去を持っている。その中で、龍王、普通の龍族、人間、ゴブリン、そしてドワーフなどの種族間の争いが、その大陸の歴史の主旋律である。
もちろん争いもあれば、共存もある。異世界には龍と同盟を結ぶ国もあれば、龍を信じない国もあり、国と国の間で戦争が時折発生する。最近、カレロスという国が旅行商人を通じて北部都市の代表に接触し、周辺国と共に混乱をもたらす龍王——邪悪と混沌を支配する龍を討伐するための協力を求めてきた。
相手が提示した非常に魅力的な条件により、政府は何度も検討した結果、最終的に自発的な形での募集を決定し、二つの世界を自由に往来できる人々を討伐隊に招待することにした。そして、半公式の隊伍を派遣することにした。
元々、スパイの情報によれば、隊伍の高級魔法使いやドラゴンスレイヤー、冒険者の能力によって、龍王と仲が悪い龍族やエルフ族も戦場に参加し、必ずや龍王に簡単に勝てるだろうとされていた。なぜなら、龍王は決して無敵ではなく、歴史上人類は何度も龍王を打ち負かしてきたからだ。しかし、結果は全ての人の予想を裏切るものだった。討伐に参加した全ての人が龍王に捕らえられ、彼の城の地下牢に囚われ、今もその生死は不明である。
そのため、カレロスの大臣は政府と共に、捕らえられた者を救出する方法や相手と交渉する手段を検討することになった。
その半公式の隊伍には上杉秋尾も含まれていた。彼が討伐に参加することになったのも佐藤の関係であり、今彼に何かあったことで、佐藤の心には罪悪感と苦痛が満ちていた。
しかし、政府や知事にとって、もっと心配すべきは、同じくこの戦闘に参加している現国王の小息子であった。なぜなら、これは彼らの将来の政治的な進路に関わる問題だからだ。
「さて、事を急いで、今からこの問題を解決する方法を議論し、王子を救出しましょう。」みんなが頭を上げた後、知事は急いで言った。
皆が順番に意見を述べたが、依然として大きな意見の相違があった。全特種部隊を異世界に潜入させて人質を救出すべきだという意見もあれば、龍王の要求に応じるべきだという意見もあった。さらに、全ての情報を封鎖すべきだという意見もあり、結局、どうしても合意に達することができなかった。
佐藤鳥にとって、このような膠着状態は最大の苦痛であった。尊敬する先輩を救えないだけでなく、無駄な時間を浪費し、先輩が残した子供たちの世話をすることができなくなってしまう。
「先輩、本当に龍王討伐に参加するつもりですか?」行動隊出発前、佐藤鳥は上杉秋尾を心配そうに見つめた。彼女はこの先輩を尊敬しているが、実際にはしばしば危険な行動をとることがある。「異世界は危険だと聞いています。」
「危険があっても、こんなに多くの人がいるから、あまり心配する必要はない。」そう言って、秋尾はポケットから光るバッジを取り出し、佐藤に見せた。「これが異世界の冒険者ギルドで得たバッジだ。私が優れた冒険者だという証明なんだ。でも、恥ずかしいことに、前に一緒にいた佐々木は、今は商業チームに転属して、賢者と関係を築いて、今や二つの世界を跨ぐ優秀な商人になってしまった。」
「今はそんなことを言っている場合じゃない。異世界の危険度について議論すべきだ。」
「はは、そうなの?」秋尾は笑いながら言った。「私はまだ多くの異なる魔法の資格を持っている……」
「それじゃない!」佐藤鳥は少し怒って、秋尾を睨みつけた。「あなたの家には三人の子供がいることを忘れないで。あなたはその危険を冒すべきじゃない。」
「彼らはもう大きくなった、子供じゃないんだ。」
「なんだよ、それはダメだ。先輩、何回も結婚したじゃないか。」
「もし私が戻れなかったら、お願いだから子供たちの面倒を見てくれ。」
「ちょっと、それはダメだ……」
「信頼できて可愛い後輩が、先輩の小さなお願いを断ると思うのか?」
「私は信頼できて可愛いって自覚してるけど、それが問題じゃないんだから!」
「でも、手伝ってくれたら私のところに住めるし、家賃もいらないし、広いバルコニーもあるよ……」
「うーん、そう言われると、ちょっといいかも。」
「そうだろ、そうなんだ!」秋尾は大笑いした。「それに、彼らは絶対に君に負担をかけることはないし、いつか彼らとの良好な関係を築けることに感謝するかもしれない。」
「本当にそうなるの?」佐藤はぶつぶつ言った。
秋尾が異世界の龍王を討伐しに行く前の送別のことを思い出すと、それがとても昔のことのように感じられた。しかし、毎回そのことを思い出すと、佐藤の心に不快感が広がっていた。
どれくらいの時間が経ったのだろうか、会議室での発言の回数と頻度は次第に減り、佐藤も象徴的に意見を述べ、誰も発言しなくなった後、省長が立ち上がり総括を述べた。
「各方面の意見を収集した結果、まず偵察隊を派遣して向こうの龍王の状況を調査することに決定しました。また、交渉に必要な物資の準備も進めていきます。ここで、改めて私たちの立場を強調しますが、絶対に裏切り者が私たちの世界を売ることは許しません……」
省長は声を整え、威厳のある声で続けた。
「最も重要なのは、ここにいる全員がこの件についての情報を一切漏らさないことです。国家と皇室の名誉に関わることですから。」
またもや退屈で時間を浪費する発言が続く。帰りたい——佐藤は心の中で思った。
しかし、現実は厳しく佐藤を打ちのめした。
「そういえば、今日の会議で皆さんにもう少し残業してもらう必要があります。皆で一緒にもう一つの案件について話し合わなければなりません。」省長は声を整え、続けた。「最近、社会で若者の失踪事件が頻発しています。現在の情報によれば、異世界の人身売買集団の仕業の可能性が高いので、早急に調査隊を組織したいと思います。」
「でも今の最優先事項は、討伐隊の人たちを救うことじゃないのか?」一人の勇気のある部長が手を挙げて質問した。
その時、省長の隣にいる秘書が立ち上がり、質問に答えた。彼女は眼鏡を直し、ゆっくりと答え始めた。「それは、最近私たちの情報部が、人身売買集団の活動の跡が別の龍王の動きに非常に近いことを発見したからです。」
龍王の名前を聞くと、場にいる全員が思わず息を呑んだ。落山事件の後、龍王の威厳は非常に重いものとなっていた。
「したがって、これは緊急に対処する必要がある事件です。このまま龍王が突然攻撃を仕掛けてきたら、北部都市が滅びることになりかねません。」秘書は言った。「さらに、現在の異世界に関する研究によれば、龍王同士には繋がりがあるそうです。もし行動がうまくいけば、この龍王から突破口を見つけて、邪悪と混乱の龍に対抗できるかもしれません。」
秘書は印刷された資料を配布した。「それに、この龍王の能力は私たちが想像しているほど強くないかもしれません。」
佐藤は前方から渡された厚い資料の束を受け取り、最初のページを開いた。そこには「生と死の龍」と大きく書かれており、その名前の下には細かい解説や注釈、理解できない図表が並んでいた。
ああ!また不眠の夜が待っているのか!うぅ!
「うぅ、家に帰りたい!!」




