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メモリーループ番外編 第一章 初期設定は変態

メモリーループ番外編の為、紫蘭が主人公です。



 見上げる空は何処も変わらない。

 せっせと仕事をしながら、あたしはどこまでも広がる青空を見上げた。


 それは涙が出そうなほどに美しい蒼空。

 降り注ぐ日差しが、積もった雪に反射して目に痛い。

 たぶん、凪国王宮に勤めてウン年の中で――いや、ウン十年か?

 最近忘れっぽくなってきた気がする。

 いやいや、まだぴっちぴちの二十歳が言う台詞じゃないなぁ。


 けど、最近記憶がよく混濁する事があるのも事実で……そのうちテレビでよくある記憶喪失番組の主人公の様な事態になりそう――いや、それは言い過ぎか。


 うん、問題ない、問題ない、全然大丈夫――。

 ……。

 ……。

 ……そういえば、記憶療法とかで回想法とかあったっけ。

 お金はかからないし、仕事をしながらやってみるか。

 最初は名前からだ。



 あたしの名は紫蘭。

 紫に蘭と書いて「しらん」と呼ぶ。

 ってか、紫の蘭なんて正しく美神に相応しい名じゃないかしら?


 な~んてね。

 確かに蘭はよく美神の形容詞に使われる言葉だけど、あたしの名前である紫蘭はというと


①栽培品は花壇や庭先などでごく普通に見られる(ただし、純然たる野生種は準絶滅危惧種に指定)

②性質は丈夫

③日当りがよく、適度に湿り気のある場所に植えておくと年々増えて茂っていく。

④育てやすい草花。


 らしいんですよ。

 つまり、他の高級品の蘭と比べるとどちらかというと、誰にでも手が出せる花というか。


 高嶺の花――という言葉の範疇には加わらないのはまず確かだよね。


 けど、そんな事を言う神達に言いたい。


 余計なお世話だ!!


 確かに鼻は低いし、目は一重で小さいし、顎だってしっかりとしている。

 どう見ても線が細いとか華奢とかからはほど遠い。

 ならば体付きはと言えば、肩はがっしりとしているし、胸は平らではないが豊かでもなく寸胴に近い。


 そんな正真正銘の不細工だけど。


 だからどうだって言うんだぁ!とあたしは訴える。

 今の仕事の審査基準に「美神」なんていう項目はなかったしね!!


 まあ……あったらあったで無かった事にさせて頂きますが――


 と、話は脱線したけどこんな私でも今年二十歳。

 そろそろ結婚とか考えて――いや、嫁き遅れ真っ盛りか。

 何せ、平民の結婚適齢期も十代だし。


 って、神って不老じゃん。

 凄く長生きするくせに十代が結婚適齢期って!!

 え?神?人間じゃないの?って?

 あたりまえです!!


 だって、ここは神々の世界である天界十三世界の一つ――炎水界にある国の一つなんですもの。

 それも凪国という、炎水界でも一、二を争う大国なんですからね!!

 と、凪国自慢はおいといて、なんていうんですかね~?人間界に住んでいるのは人間ですーーっていうぐらい、私は神ですっていうのはアホらしい説明なんですよ。

 だって神様の世界ですから、住んでるのは神様が殆どですし!


 まあ、以前はそれ以外の種族も住んでいましたが、今はだいぶ減りました。

 それぞれ新しく出来た自分達の世界に渡っていきましたからね。


 と、他の方の説明はそれくらいにして、大切なのはあたしの事です。

 

 容姿は説明したから、次は性格ですね。

 え~性格は――のんびりというか、のほほんというか、細かい事を気にしないというか……よく言われるのはトラブルメイカーかなあ。

 でも、それは違う。トラブルが勝手に来てるだけであたしは断じて呼び込んでいません。


 さてさて、そんなあたしの職業は凪国王宮の下女――所謂下働きです。

 やる事と言えば、薪割りに掃除洗濯で、体を動かす事が好きなあたしには天職。


 で、趣味はバードウォッチングならぬぼ~いずらぶウォッチング。

 他にはぼ~いずうふふな同神誌を書いたり、集めたり、コミケに行ったり。

 でも一番は、王宮内の男の娘達を見ながら、脳内で素敵な光景を思い描くことです。

 え?迷惑だろって?

 いえいえ、あたしの場合はただ頭の中で思うだけで、実際に相手に危害を加えたりはしませんから!


 そう、男の娘達を虐げた煉国の二代馬鹿王や上層部達とか、各国の王や上層部(男の娘達限定)を略奪し、更には神の所行とは思えない事をした極悪非道な馬鹿達とは違います!


 脳内の中で!

 素敵な素敵な事を!

 想像しているだけです!!


 まあ、任務に使った男の娘達の着衣とか売り払ってますけど!


 だってだって凄く高い値段がつくんですよ!

 ネットで!

 それこそ一枚で豪邸が建つくらいの!!


 売らなきゃ馬鹿です!

 

 それに別に捨てる物ですから盗んだわけじゃないですし、むしろエコですエコ!

 リサイクルエコですってば!


 けれど、凪国の上層部や元寵姫組は、死に物狂いで取り戻そうとするんですよね!

 ゴミ箱に捨てたのは貴方達じゃないですか!

 あたしはそれを有効活用しただけです。


 そしてその売上金はきちんと孤児院とかそちら関係に支払われますので、安心して着衣を売り飛ばさせてください。

 え?ふざんけな?

 頭の固い神達ですねぇ~。


 まあ、あたしには強い味方――明燐様と百合亜様がついてますから良いんですけどね。


 んなわけで、最近では下女仕事と同じぐらいに使用済み着衣収集に励んでいるあたし。


 そんなあたしを、まるで変態の様に悪しきざまに罵る上層部(男の娘)と怯える元寵姫達(男の娘)。


 ふ~んです!

 言っときますけど、着衣売らなくなったら、その分の収益を得る為に余計に同神誌制作しなきゃならないんですからね!


 そう、全くそんな事をしていないのに、その容姿だけで噴火中の火山の様に大量のアイデアをあたしに浴びせてくれる皆様。


 何をしても、もはやそこはぼーいずらぶにしかならない展開。

 え?異性――女性の恋神とか婚約者とか妻とかいますって?

 それはそれ。

 むしろ居ても何の問題もないですし、その幸せを祝福します。

 仲を壊す気なんてありませんし、嫌がらせする気もありません。


 全部脳内でのシュミレーションですからっ!!


 そうして頭の中で新しいアイデアと設定を造り上げるべく、あたしはいつも彼らを熱く見詰める。


 それはもう、絡みつくような熱視線で。


『朱詩様、助けて下さい!』

『脳内で激しく理不尽な事をされているんです!』

『ってか、きっと彼女の頭の中で俺は玲珠と×になってるんだろうなぁ……』

『いや、この前は悧按×秀静もいいかとか』

『その前は茨戯+朱詩×明睡とか言ってた』

『やっぱり宰相様はそういう立場なのか』

『しかも、相手は二神分なのか』


 そうして泣きつく元寵姫達と


『紫蘭、君いい加減にしなよ!』

『どれだけ俺達を頭の中で蹂躙し尽くせば気がすむんだっ!』

『既に実害被ってんのよアタシ達は!神をモデルにした本売りさばいてるでしょうが!』

『しかも、その市場を造るな!巨大化させるなっ!あと勝手に使用済み服を売るな!』


 喚く上層部達


 ガタガタと五月蠅いです。

 そんなんだから明燐様達に怒られるんですってばぁ。


 え?代わりにあたしと同性の本を書くぞって?


 いいですよいいですよ!

 ハーレム本ばっちり来いですって!


 え?やっぱりやめる?

 期待させておいてなんて鬼畜な男の娘達ですかね。

 そんな風に多くの老若男女を翻弄していたなんて――どこの小悪魔ですかあなた達は!


 って正義感を前面に押し出して蓑虫にされた事も思い出しました。


 うん、大丈夫。

 あたしの記憶は今の所はっきりしている。


 なので、何にも問題ない。


 そう、それこそ階段から落ちてとか、重いものでもあたらない限り、は。



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