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03 部下は上司を選べないけど上司も似たようなもん




「聖女様、本日のご予定ですが」

「あれ、監禁おしまい?」

「……本日より、聖女様ともうお一人の聖女様で城外の病院を回ります」

「あ、そう」


「それに伴いまして、聖女様護衛として私共もお供いたしますので」


「えっ一緒に行くの?」


「はい」


「まだまだ監視中なんじゃん」


 不貞腐れてガックリと肩を落としながらクローゼットの中に入る。

 ウォークインクローゼットとなっていて、この数日で私のリクエスト通り動きやすそうな服をシェリルちゃんが補充してくれたのだ。


 その服の中で1番楽そうなワンピースを着て準備をして出ていけば、無表情筋肉は青筋を立て、ニコニコ魔人はきゃーと両手で顔を押さえた。

 なんだよ。


「ちょ、なんつー格好してんだコラ!外套(がいとう)取って来、......来てください!」


「外套?」


 無表情筋肉くんは眉間に皺を寄せているし、ニコニコ魔人は顔面を両手で隠していて口をぱくぱくさせている。

 なんとかこぼれ出てきた声は、「う、上着ですよ〜! なにか羽織れそうなものあったでしょう?取ってきてください〜!」と、転げるような速度で駆け抜けていく。



「え……これ、このままじゃダメなの?」

「「ダメです」」

「……」



 仕方なく、白い大きめのポンチョのような上着を被って2人の前に立てば、一応合格ラインをもらった。どうやら生足や腕など肌を出しすぎてはいけないらしい。


 日本の感覚では駄目なんだな。

 ちろりと自分の外套の中の自分の服を覗くと、別に問題ないかと思うんだけど……。


「肌の露出は極力お控えください」

「そうそう。駄目なんですよ、聖女様。肌は見せてはいけないんです」


「聖女だからってこと?」

「……そうじゃないです。女性は、皆いけません」

 無表情筋肉は、はぁ、と嫌みたらしくため息をついて片手で額を押さえた。

 見たことあるぞ、そのポーズ。

 上司が聞き分けのない部下を当たり障りない言葉で嗜める時よくやってた。

 っておい。


「……ふぅん」


「聖女様の身を守るためですよ」


 正直スムーズには納得は行かないが、郷に入ったら郷に従わなくてはならないのは世の常である。

 そして若返ったとはいえ私も大人で常識人。それなりに海外へも行ったし、部署異動も経験した。その理屈はわかっているつもりだ。こんな事で腹を立てたりはしない。

 

 いつかこの2人の前で変態よろしく水着一丁で襲撃かましてやるという事で手を打った。

 待ってろよ。



「2人の巨人に囲まれた私……なんか犯罪者みたいよね」

「……やめてくださいよ、仮にも聖女様でしょう」

「ニコニコ魔人……」

「えっ僕名前言いましたよね? 泣いちゃいますよ!?アーチです!」


 わっと食いかかってきたニコニコ魔人、いや、アーチはその大きな体をぐてんと悲しげに崩すと、不貞腐れたように下唇をツンと突き出していた。


 そして、無表情筋肉をじっと見つめる。


「おい、まさか俺の名前も……!?」

「無表情筋肉……」

「ランティスだ……」


 青筋を立てたランティスも、無表情を貫いていたが、はぁ、とため息を吐くと「さっさと行きましょう」と本当にさっさと歩き始めた。

 


「はぁ、本当にこの人聖女様なのか?聖女様ってみんなこんな感じなのか?」

「う〜ん、どうなんですかねぇ〜。僕はチラッとしか会ったことないけど、先に来た聖女様の方が、うーん扱いにくいって言えば良いのかなぁ」


 アーチがうーんと顎に手を置いて首を捻る。


 ——んん?



「ちょっと待ってね。私が扱いやすいみたいに言わないでくれます?」


「いやぁ、だって僕が近くに居るってわかって急に池に飛び込んだんですよ?同郷なんですよね、なんて言ったかわかりますか?」


「さ、さぁ」


 いくら同郷といえど、人を見て突然池に飛び込む気持ちは分からないぞ。


「何も言わなかったんですよ。怖くないですか?」

「何そのホラー……夢でも見たの?」

「いやいやいやいや。ランティスも居ましたって!それで浅い池の中ジーとこっちを見て立ち尽くすんですよ。一応「大丈夫ですか?」って言いましたよ。でも」


「でも?」


「知ってる言葉じゃない!って怒られましたよ……それで先に来た聖女様の護衛達がやって来てすごく怒ってる彼女を抱えてどこかに行ったんです」


「罰として護衛にはしてやらないって言ってなかったか?」


「言ってたね〜」


「うわ、それ聞いたら何も言えないわ……お疲れ…… 」



 あまりにも項垂れるアーチの背をよしよしと撫でてやれば、「なので、変なのは違いないですけど、まだ聖女様の方が良いです!」


 元気よく、まるで懐き始めたワンコのように撫でてーとアピールしてくるアーチはめちゃくちゃ素直だった。


「ちょっと私にもその先に来た聖女の気持ちはわからないわ……できれば会いたくない」


「今から会いますけど」


「げ、そうだった……」


 


数ある小説の中から、この小説を読んでくださりありがとうございます。


面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたらブックマークなどしていただけると嬉しいです。執筆の励みになります。


楽しんでいただけましたら幸いでございます!

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